第661話 ズィリャダンジョン・25

 アルゴの斬撃がオーガロードに入ると、ついにオーガロードは膝を突き倒れた。

 目の光りが消え、気配察知から反応も完全に消えた。


「やっぱタフだぜ」


 物理主体で戦った結果一時間ぐらいかかった。

 正確には俺たちが参戦してからだから、実際にアルゴたちが戦っていた時間はもっと長い。

 ボス部屋の討伐よりも時間がかかったのは、クリスの精霊魔法が使えなかったからだ。

 あれは火力が強い分、周りに仲間がいると使いにくいというのもあるからだ。


「とりあえず休むか?」


 汗で濡れた衣服は洗浄魔法で乾かすことが出来るけど、疲労はヒールを使っても回復しない。

 俺の問い掛けに、


「こっちに近付いて来る奴はいるか?」


 とアルゴが聞いてきた。


「……三〇人ぐらいの集団が近付いて来てるな」


 MAPを見ると、こっちを目指しているような反応があった。


「なら休憩は後だ。目立ちたくなければだがどうする?」


 なるほど、この反応の者たちは討伐隊の可能性が高いとアルゴは考えたのか。

 俺がオーガロードを回収したら、こちらに向かってくる反対側へと移動を開始した。

 戦った名残で地面は血で汚れているけど、向かってきている人たちがここに到着する頃には綺麗に消えていることだろう。

 もっとも魔物が一体もいなければ、既に討伐済みだと気付くとは思うけど。

 あとは狩ったロードたちを売れば俺たちが討伐したことが知れ渡るが、別にここのギルドで狩った魔物を必ず売る必要はない。

 というのがアルゴの意見だ。

 特にロード級の素材なら、何処のギルドでも歓迎するという話だ。

 さすがに何処で狩ったかは聞かれるし、答える必要はあるということだけど。

 確かに近場でこんな魔物が出たとなると、何かの異変の前触れかとギルドとしては注意喚起をする必要があるか。

 アルゴの説明に耳を傾けながら、俺たちは歩いた。

 そして一時間ほど歩いて、十分距離が取れたところでやっと休憩に入った。

 やっとと思っているのは、まあ、俺以外の人たちだ。

 俺は歩いている限り疲れないし、疲労も回復するからまだまだいける。

 俺の様子に羨ましそうな視線を感じる。

 そこで食事を摂りながらMAPを見ていたけど、距離的にあの反応たちがロードたちのいた場所に到着するまで、最短であと二時間ぐらいはかかりそうだ。

 あ、通り道に魔物の反応が生まれたから、戦い次第ではもっと時間がかかりそうだ。

 そのことを告げると、


「なら少し長めに休むか」


 とアルゴが言った。

 もちろん反対の意見はない。

 その後近くに魔物の反応が現れたため、俺たちはそれを最後に今日の狩りは終了した。


「結構狩ったけどまだまだ狩る必要があるな」


 アルゴの言葉に無言で頷く。

 確かにまだ二〇〇ほどしか狩れていない。

 普通に考えればペース的には十分過ぎるんだけど、なかなか魔物と遭遇しないという問題がある。

 ⅯAPを見ていて気付いたけど、明らかに狩りメインで活動しているパーティーが少ないのだ。

 そのため魔物が放置されていて、魔物を狩るにはそこを目指さないといけなくなる。

 フロアが広くて複雑なため、他の階と比べても魔物との遭遇率が著しく低い。


「シャマルの角笛を使いたいところだけど……」

「討伐数の残数を考えると意味ないな。せめて一桁になってからだな、使うなら」


 アルゴとの呟きに、ギルフォードが答えている。

 三〇〇近い残数を考えると、確かに今使ってもと思う。

 俺は二人の話を聞きながら、自身にスキルを使う。

 今使っているスキルは強化だ。

 スキルを始め、肉体的な強度や武器の強化も出来る優れものだけど、そのせいかスキルレベルがなかなか上がらない。

 実際一回使っても熟練度の上りは芳しくない。

 あとは習得しているスキルが多過ぎるというのもあるんだよな。

 俺はステータスを呼び出すとスキル項目に目を通す。

 ウォーキングのレベルは116。限界突破して100を超えてからはなかなか上がっていない。

 スキルポイントは9か……余裕はある方か? 以前は大量に残っていたけどなんだかんだと習得したんだよな。


習得スキルは


「鑑定」「人物鑑定」「鑑定阻害」「並列思考」「ソードマスター」「身体強化」「気配察知」「魔力察知」「自然回復向上」「状態異常耐性」「痛覚軽減」「気配遮断」「暗視」「料理」「投擲とうてき・射撃」「威圧」「MP消費軽減」「魔力操作」「生活魔法」「火魔法」「水魔法」「風魔法」「土魔法」「光魔法」「空間魔法」「神聖魔法」「錬金術」「付与術」「創造」「転移」「時空魔法」


 はレベルがⅯAXになっている。


「闇魔法Ⅼv9」「重力魔法Ⅼv8」「生命付与Ⅼv8」「複製Ⅼv9」「造形Ⅼv8」「吸収Ⅼv8」「念話Ⅼv5」「ⅯP変換Ⅼv7」「合成Ⅼv5」「同調Ⅼv4「隠密Ⅼv5」「シールドマスターⅬv7」「魔力付与Ⅼv6」「複合Ⅼv6」「解析Ⅼv5」「鍛冶Ⅼv6」「記憶Ⅼv5」「強化Ⅼv3」


 もう少しでⅯAXになるものもあれば、まだまだ低い物もある。

 ダンジョンにいると戦闘系スキルは上げやすいけど、数が多いからどうしても偏りが出てしまう。

 俺は既存のスキルを眺めて、習得可能なスキルの項目にも目を通す。

 戦闘系のスキルに目がいくけど、ダンジョンの構造次第ではまったく予想外のスキルが脚光を浴びる場合だってある。

 例えば今の状況だと……引き寄せ?

 遠くのものを引き寄せるというものだけど、これは視界内にあるものを、とある。

 これだとある意味転移と同じ感じか? となるけど、どうもこれ、ⅯAPや気配察知、魔力察知と同時に使えばその反応を指定して引き寄せることが出来るみたいだ。

 もちろん遠く離れているとそれなりにMPは消費するみたいだけど、今の俺のMPは1000を超えているからある程度余裕はある。

 ……うん、やめておこう。

 これは使い方次第では非常に危険なスキルになり得る。

 俺は一息吐くと、そっとステータス画面を閉じた。

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