第658話 ズィリャダンジョン・22
取り巻きが強くなる。
とりあえず二回ほど出るのを待って鑑定してみて分かったことは、分からないということだった。
個体ごとにレベルは違ったし、一回目よりも二回目の方が低い魔物も出た。
平均で見ると若干二回目の方が上がっているけど、微々たる差だ。
その微々たる差を強いと感じたかもしれないけど、長時間の戦闘による疲労の方が強く感じる要因だと思う。
もしかしたら三回目以降に魔物が呼び出された時は強くなっているのかもだけど、そこまでする必要はないと思った。
戦っている時に呼び出されることがあればその時は鑑定すればいい。
そしてこの長時間の戦闘を生んでいる元凶はオーガロードだ。
とにかくタフ。タフ過ぎる。
クリスが精霊魔法を五回ぶつけてもなお倒れなかった。ゴブリンロードなら一発、オークロードだって二発も当てれば倒せるレベルの威力だ。
俺だって魔法を当ててそれだ。
しかもクリスが魔法を撃つまでの間は接近戦でアルゴたちが戦いダメージを当てていた。
それでも倒し切れなかったのは再生能力があったからだ。
魔法を当ててもみるみる再生して、切り傷は負ったそばからなくなっていた。
それを可能にしていたのは間違いなくその膨大な魔力だろう。
再生は魔力を消費することで行われ、それがなくなるまで続いた。
オーガは魔法も使わないし、魔力を使う攻撃もないから、再生のみに魔力を使えたのも大きかったのだと思う。
「資料でタフだってことは分かってたけどよ、想像以上だったな」
「ああ、ソラが魔力のことを教えてくれなかったら、終わりが見えずに心が折れていたかもだ」
アルゴとギルフォードがため息を
「あとはクリスのお陰だな。それとここを突破するなら魔法使いが欲しいだろうな」
「神聖魔法の使い手に比べると多いけど、あくまで神聖魔法の使い手と比べてだからな。それに魔法を使えるっていっても、ここまでの相手と戦えるとなるとさらに少ないだろうしな」
なお続くアルゴとギルフォードの話に耳を傾けながら、俺たちがダンジョンを進むにつれて注目された理由もある程度分かった。
言われてみれば魔法使いがいるパーティーというのは意外と少ない。
俺たちは魔法使いのいるパーティーと会うことが多かったから、珍しいという認識が周囲と比べて低かった。
そもそも他の人たちと一緒に行動するということ自体が少ないというのもあるけど。
「ま、何にしても今日はこれで終わりにしないか?」
九階に関することは既に調べてあるし、今日は休んでもいいか。まだ昼前だけど。
ルリカたちもそれで構わないということで宿に真っ直ぐ戻った。
そのままアルゴたちは部屋でくつろぎ、俺たちは一度部屋に戻って少し休んだら厨房を借りて料理作りをした。
これは今から食べるためではなくてダンジョンに持っていく用だ。
次はどれぐらいダンジョンに入っているか分からないから、多めに作っていく。
「次はいよいよ九階か。ちょっと出る魔物が面倒だよね」
ルリカが野菜をカットしながら言う。
「けど宝箱は楽しみ」
「それはヒカリちゃんの言う通りだけど、人も多いみたいだし。魔物の取り合いにならなければいいけど」
ただ魔物の討伐数は全体を通して五〇〇ということだから、遭遇した魔物を片っ端から狩っていけばいいのは楽だ。数が多いことには目を瞑り。
種族ごとに何体討伐なんてことだったら、偏りがあるといつまで経ってもボス部屋に入れないからな。
ただキングを狩ろうとロードを狩ろうと討伐数はここでは一だから、出来れば狩りやすい魔物を選んで狩りたい。
MAPと気配察知、魔力察知を使えば魔物も選ぶことは可能かもしれないけど、そこは他の人たちもいるから、狩れる魔物がいたらそれを狙っていた方が早い。
デーモンも狩りにくいってだけで狩れないわけではないし、こっちにはミアもいるからな。
あとは宝箱を楽しみにしているヒカリのためにも一つぐらい宝箱を見つけたいけどこればかりは運だ。
俺のMAPでは残念ながら宝箱の場所までは分からない。
やがて大量の料理を作り終えた俺たちは部屋に戻り、休むことにした。
元々あった分と合わせても二カ月は安心だ。
その翌日。俺たちはダンジョンの九階へと向かった。
ただダンジョンに入る前に、複数パーティーが慌てて階段を駆け上がっていくのに遭遇した。
彼らは俺たちをチラリと見ると、そのままいってしまった。
「何だったんだあれ?」
「急いでいるようでしたよね」
「うん、焦ってた」
ミアとヒカリの言う通りだ。
負傷者がいてその人を助けるためにってわけでもないし、何かあったのだろうか?
「八階の時みたいに希少種でも出たとか?」
アルゴは冗談半分に言ったけど、九階なら希少種よりもロードの方が脅威になりそうだ。
あ、けどロードの方は各階のボス部屋で戦っているから、強さではロードが上かもしれないけど、厄介度でいえば変異種のような希少種の方が狩るのは大変なのかもしれない。
情報があるかないとでは雲梯の差だから。
八階の変異種? も毒攻撃とオーガが予想外に戦力を駆使してきたことで撃退された感じだし。
実際は変異種自体も強かったかもだけど、ヒカリの斬撃でアッサリ死んでいから本当に強かったかは不明だ。
あとはあの時の冒険者たちの状況も影響を与えていたな。
水に消耗品が残り少なくなっていたという。
何があるにしろ、ひとまず警戒して探索する必要はありそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます