第648話 ズィリャダンジョン・12
「とりあえず明日は完全休養日ってことで、体をゆっくり休ませようぜ」
あれから俺たちは五階のボス部屋を追加し、六階の攻略を終えた。
六階は人が多く、討伐数も一〇〇と多かったため、この時はシャマルの角笛を三回使用した。
この時三回ともキングを引き当てたのと、取り巻きが多く出たため、六階は三日で終了した。
キングは一体につき、討伐数一〇に相当するためらしい。
ダンジョンの討伐ルールは本当に謎だ。
お陰で早く終わったわけだけど。
「アルゴたちはデーモンについての知識があるんだよな? 出来れば対策について話を聞きたいけど」
「……そうだな。準備しないといけないものもあるし、少し俺たちが知っていることを話すか」
「あの、出来れば資料室で確認したいのですが……」
俺とアルゴが話していると、クリスが手を上げた。
「ならクリスは俺たちと一緒に行くか? もしかしたら俺たちが知らない情報が追加されてるかもだしな。ソラは……確かここだと冒険者じゃないと資料室は使えなかったはずだから、今回は留守番だな。話し合いは、資料室での確認が終わって、帰ってからまとめてするか」
ということで、俺がいけない代わりにルリカとセラを連れて、クリスはアルゴたちと出掛けて行った。
ルリカはジッと本を調べるのが苦手だから、少し憂鬱そうだった。
宿に残った俺とミア、ヒカリにリックとハロルドは、宿の厨房を借りて料理をすることにした。
四階で料理を多く消費したというのが一つと、あとはリックとハロルドに料理を教えるのが目的だ。
ミアはヒカリと宿の人に料理を教えているから、二人に教えるのは俺だ。
教えるといっても基礎的なことがメインで、スープ中心だな。
肉料理に関しては、ヒカリが焼き方を今度教えるということになっている。
「調味料選びが大事……」
「手の込んだものじゃなければ、調味料で殆ど味が決まるよ。俺たちは店で売ってるやつを色々と合わせて使ってるから、今度どんな感じで作ってるかも教えるよ」
最後は好みになるから、その辺りはアルゴたちのパーティーで口に合うものを作ってくれたらと思う。
今回は野菜の切り方やスープに入れるタイミングなどを簡単に説明しながら作っていく。
これはお昼を食べにクリスたちが戻ってくるまで続いた。
デーモン。霊体に近い肉体のため、物理攻撃があまり効かない相手。魔剣や銀の剣、属性の付与された武器や魔法が有効とされている魔物だ。
倒しにくい相手ではあるが、その魔石は純度が高く、高値で取引されている。流通量が少ないというのも高値で取引されている理由の一つだ。
「デーモンの一番の特徴は、逃亡するところだな」
「逃亡?」
「ああ、その基準が何かは分からないが、戦闘時間が長引いたり、一定以上のダメージを与えると逃げるんじゃないかと言われている。だからデーモンを狩るのは難しく、俺たちがこの階の攻略を断念した理由でもある」
「なら七階で狩りをしてる人は少ないのか?」
「今だと漆黒の独壇場みたいだな」
また漆黒は、ダンジョンの先に進みたい人たちのために、七階を突破するための手伝いをしているそうだ。
もちろんタダではなくて、少なくないお金を取っている。
それが高いか安いかアルゴには分からないということだ。
「ま、手伝いなんて言ってるが、たぶん狩場を独占したいからってのもあるんだろうな」
またクリスの話では、デーモンは距離がある時は魔法による遠距離攻撃をするため、それを防いで近付く必要があるということだ。
しかも複数体同時に出ると、魔法の切れ目がないほど連発してくるため、近付くのも困難ということだ。
一応魔物にも魔力は存在するから、魔力切れを起こすまで耐えて一気に間合いを詰めればいいんじゃないかと思ったら、
「どうも魔力がなくなると逃げるみたいなんです。一応魔力が切れる前に、ある程度まで近づくと逃げない時もあるみたいですけど。あと不確かな情報ですが、壁の中に逃げるのを目撃したというのも資料には書かれていました」
ということらしい。
またこれは近付けなくても、少しのダメージを与えても、すぐには逃げないという記録が残っていたそうだ。
あくまですぐには、だから、最終的に時間が経つと逃げてしまうということか。
継続してダメージを与えられたら別みたいだけど。
……挑発スキルが有効かも試してみるか。
「と、いうことで、今回はソラたちに任せた!」
アルゴも今の自分たちなら一体、二体程度なら魔法をかいくぐって接近することは可能かもしれないと言ったが、デーモンは範囲魔法も使ってくるから無理をするつもりはないみたいだ。
セロのローブがあれば防げるのでは? と思ったが、どうもデーモンが使うのは闇属性の魔法だけじゃないみたいだからな。
範囲魔法は、迷宮型のダンジョンだと通路を埋め尽くしたりも出来るから自分たちが使う分には有利になるが、相手に使われると逆の効果をもたらす。
「デーモンは体が霊体に近いってことだけど、回収出来るのは魔石ぐらいなのか?」
「角と羽根を落とすことがあるそうです」
特に角はデーモンやアンデッドに有効な武器を作ることが出来るそうだ。
それならもっとここで狩りをする人が多くいても良さそうなのにと思ったが、その素材を扱うことが出来る鍛冶師には、高い技術が要求されるため作れる人は限られているということだった。
正確にはそこまでの技術を持っている者がいないそうだ。
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