第641話 ズィリャダンジョン・7
「たくさん狩る!」
気合を入れるのはヒカリ。
今日からダンジョンの四階に行く。
討伐対象はオークとその上位種たちだ。四〇体は狩る必要があるけど、近くにいるならそれ以上狩ろうと思っているに違いない。
ちなみに討伐数が上がるのは四階までで、五階以降はまた変わるみたいだ。
「ソラ、威圧だけど使わなくていいからね」
ヒカリの様子に苦笑しながら念を押してきたのはルリカだ。
威圧は便利だが、それに頼ると剣が鈍るということで普段使いを禁止された。
ルリカたちとレベルの仕組みは違うが、一応俺のウォーキングレベルは限界突破して一〇〇を超えているからな。威圧はまだレベル8だから、伸びしろもまだある。
もしかしたらMAXまで上がったら、ロード級の相手にも大きな効果が出るかもしれない。
「それでソラ、人と魔物はどうだ?」
「かなり混んでるよ」
俺はMAPを見ながらアルゴの質問に答えた。
魔物も多いが人も多い。
ん? この反応は……。
「ソラ、どうかしましたか?」
「えっと……」
聞いてきたクリスに言っていいものか少し迷った。
言い淀む俺に対して、クリスはジッとこちらを見ている。
誤魔化しは効かないか。
意図的に離れるルートを選ぶことは可能だけど、ヒカリやルリカ、ギルフォード辺りが不自然さに気付くかもしれない。
「以前町の中で絡んできた冒険者たちがいるみたいだ」
「あの冒険者たちがですか?」
俺は頷いた。
「なら近くに行くか」
「リック?」
「ああいう輩は力を見せつけてやった方がいい」
「僕もその方がいいと思うよ。自分たちよりも格上だと知ったら、きっと黙ると思う。特にこの国の冒険者はね」
クリフトの言葉遣いは丁寧だけど、言っている内容は厳しいものがある。
「ただ都合良く魔物と遭遇するかは分からないぞ?」
「あれを使えばいいだろう?」
アルゴの言うあれとは、シャマルの角笛のことだろう。
「誰かの近くで使っても問題ないのか?」
「別に気にしなくていいだろう? 何なら俺が魔物がいねえ、ここはシャマルの角笛を使うしかねえなっ! みたいな感じで演技するぞ?」
自信満々に言い切るが、ギルフォードたちは首を横に振っているぞ?
うん、凄くわざとらしい。
大丈夫なのか?
「とりあえず行ってみればいいんじゃない? 探索系のスキル持ちがいたら誰かが近付いてきたって様子を見に来るかもだし、ソラならMAPを使って上手いこと立ち回ることが出来るんじゃない?」
というルリカの発言を受けて、俺たちは件の男たちにいる方に向けて進むことになった。
確かにそれはルリカの言う通りだ。
途中オークの集団と遭遇したが、瞬く間に倒していく。
その中にはオークジェネラルの指揮する集団もいたけど、危なげなく倒す。
俺は倒したオークから魔石を抜くと、アイテムボックスへと回収する。
「このオークだけどどうする? そのままギルドに売るか?」
「数が多いと解体するのが面倒か……」
解体場所さえ確保出来れば自分たちで解体することは可能だけど、数が数だからな。
アルゴたちも自分たちで解体するのは手間だなと思っているようだ。
自然と俺たちの視線はヒカリの方に集まった。
「ジェネラルのお肉は欲しい!」
上位種の方がお肉は美味しいからな。
それにヒカリとしたら次の階に出るレッドオークとブラックオークを優先的に確保したいと思っているのかもしれない。
一応自分たちで食べるようとプラスアルファで何体か残して、他は売ればいいか。
ダンジョンに入って二日目。そろそろ外では日が暮れる頃かな? という時間に、必要討伐数を狩り終わった。
件の男たちの近くにはまだいけていない。
これは男たちが魔物を求めて外へ外へと向かい、俺たちから離れていったからだ。
あとは他でオークたちが狩られた時に、俺たちの近くに新たな魔物が結構な数湧いたのが大きい。
「……とりあえずどうするかは休んでから考えるか」
ある意味この階での目的を達成したから、わざわざ男たちの元に向かうのが面倒だと思ったに違いない。
これがこちらに近付いてくるなら話は別なんだろうけどね。
ただその機会は翌日訪れた。
交代で見張りをしている時にMAPで確認をしていたけど、男たちが入り口の階段方向に移動してきたのだ。
「この時間にも狩りしている奴らがいるんだな」
大剣を振り下ろしながらハロルドが言った。
魔物が新たに湧くということは、何処かで倒した証拠でもあるからな。
実際MAPを見ていると休憩する時間はパーティーごとでバラバラだ。
あくまでMAP上の反応の動きを見ての判断だけど。
俺も近付いてきたオークウォーリアーを一振りで倒した。
「それで例の男たちはどうなった?」
朝起きるなり、アルゴが聞いてきた。
俺が比較的近くまで来ていることを話すと、
「なら予定通りやるか」
アルゴの提案に皆が頷く。
「それじゃタイミングは俺の方で指示する。ヒカリ、頼んだぞ」
俺が吹けば早いけど、どうもヒカリが使いたそうにしていたからシャマルの角笛はヒカリに渡した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます