第638話 休息日
アルゴたちが持ち帰ってきた情報によると、四階と六階に人が多いということだった。
「ただ三階以降は捕縛してる奴はいなかったな。まあ、これは出る魔物が厄介だからというのがあるんだろうが」
三階はゴブリンの上位種が出て、その中にはキングも出るそうだ。滅多に遭遇することはないということだが、そんな場所でおちおち待っていることは出来ないだろう。ちなみに三階のボスはゴブリンロードだ。
四階は基本オークが出て、上位種も時々出る。ただしキングやロードは出ない。ボスはオークジェネラルだ。
五階はレッドオークとブラックオークが出て、強さはオークジェネラル級なのだそうだ。それぞれ火と闇系の特性を持っているということだ。ボスはオークキングだ。
六階はオークの上位種が出て、オークキングも出る。ボスはオークロードということだ。
「七階はデーモンだ。奴らはアンデッドに近くてな。物理攻撃が効きにくい。魔法は有効で、神聖魔法と光魔法が特に効果的だ。ただたまにその二つに強い個体もいるみたいだな。俺たちが七階で諦めたのは相性が悪すぎたからだな」
そのため七階は比較的空いている。
競争相手が少ないから、狩れる者にとっては良狩場になっているそうだ。
ただボスはデーモンロードのため、ボスに挑戦する者はあまりいないそうだ。
何故ここで毛色の違う魔物が出るんだと思うが、ダンジョンだからとしかいいようがないみたいだ。
「四階と六階が多いのは普通に稼ぎがいいからだな。オーク肉はよく売れるからよ」
この辺りは帝国内の食糧事情も関係しているみたいだ。
ここで生産されるオーク肉は、他の町に輸出されている。
ズィリャの町に来る時に馬車の行き来が激しかったのはそういう理由もあるみたいだ。
「五階のレッドオークとブラックオークの肉は駄目なのか?」
俺の言葉にヒカリが興味深そうに頷いている。
「味はいいみたいだぜ。ただ狩るのが面倒みたいで、あまり狩る奴がいない」
そのため高級肉という扱いみたいで、屋台で肉串として売られることはほぼないみたいだ。
「頑張って狩る」
という呟き声が俺の耳に届く。
隣を見ればヒカリが両の拳を握っている。
「アルゴたちはどうだったんだ?」
「俺らもあんま狩った記憶がないな。さっさと六階に挑戦した」
アルゴの言葉にギルフォードたちも頷いている。
その話が終わったら、今日は休みにして、明日ダンジョンに行くことになった。
俺たちが外に出ると言ったら、リックと大剣使いのハロルド、槍使いのクリフトの三人が同行を申し出た。
「そうだな。ソラたちだけだと変にちょっかいかけてくる奴がいるかもしれないからな」
アルゴとギルフォードの二人は、ギルドの方で情報収集をしてくると言った。
こうして真面目に働くアルゴを見るとちょっと変な気分になる。やはり王国での印象が強いからだろうな。
宿の外に出ると、
「主、情報収集をする」
と言ってヒカリが屋台に向けて駆け出した。
リックたちが首を傾げたから説明する。
ヒカリのいう情報収集とは屋台巡りだ。
いくつかの屋台で試食をしたけどやっぱり美味しくない。
この辺りは帝国の食事事情を知っていたから期待値は低かったが、それでも掘り出し物があるかもしれないという可能性を捨てきれず屋台を見て回った。
……結果は暗い表情のヒカリが全てを物語っていた。
それでも屋台の料理は次々と売れていく。
「あの保存食に比べれば、ねえ」
ルリカの言葉にクリスが神妙に頷いている。あ、リックたちもか。
ルリカたちの話だと、王国で食べた保存食は帝国の物に比べればかなり美味しいということだったからな。
もっとも帝国の物と比べれば、というレベルのため、決して率先して買おうとは思わないということだ。
そもそもルリカたちは外でも自炊できる能力が既にあったから、買う必要もないからな。
水だってクリスが魔法で出すことが出来るから困らないし。
そう考えると、エッグじゃないけど魔法を使える人はかなり貴重となるな。
攻撃だけでなく、水魔法を使えるだけでも重宝されそうだ。
これはあくまでアイテム袋などを持っていなければ、だけど。
一応大きなクランだし、アイテム袋ぐらいはありそうだ。
「もう戻るのか?」
一通り屋台を見て回った後に、リックが尋ねてきた。
「……戻ろうか?」
「いいのか? 装備品とかも見たいって言ってなかったか?」
「視線がちょっと気になるから止めておくわ」
確認するとルリカは首を振った。
どうやらそれはルリカだけでなく、クリスたちも同様みたいだ。
「ルリカたちは目立つ」
「それにボス部屋の件も関係しているのだろう」
リックの言葉を受けて、ハロルドが言った。
一階ではアルゴたちが一緒にボス部屋に入ったが、二階は俺たちだけでボス部屋に挑戦した。
あの時もそれほど時間をかけずに終わらせたからか注目の対象になった?
そんなことを考えていたら、俺たちの前に一〇人の男たちが現れた。
明らかにちょっとガラが悪い。
なんか近くにいた人たちもまるで避けるように離れていくし。
「……お前たちが噂の新参者だな?」
男はそう言うと、口元を歪めた。
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