第637話 ズィリャダンジョン・5

 翌日。俺たちいつものメンバー六人は二階の探索に進み、アルゴたちは別の階の調査に向かった。

 これはシャマルの角笛を何処の階で使うのがいいかを確認するためだ。


「面倒だったら二階で使ってもいいぞ」


 とアルゴたちは言っていたが、マップを普通に使えるから大丈夫かな?

 ただ一階よりも人は多いような気がする。

 ああ、一つのパーティーメンバーの数の平均人数が多いからか。

 あとはここで出る魔物はホブゴブリンだから、素材として皮が売れるというのもあるかもしれない。

 ただここでも階段近くには魔物を捕縛して商売している人たちがいる。

 声を掛けてきたけど無視して進む。

 こちらが興味を示さなければ、相手も無駄に声を掛けてくることはないだろうと、アルゴに言われたからだ。


「けどさ。今日はギルドに入った時の雰囲気がちょっと違ったね」

「確かにさ。二度見されたさ」


 ミアとセラの言う通り、今日は前回利用した時以上の視線を受けた。


「主、魔物の気配。どっちいく?」


 目の前には十字路があり、真っ直ぐ進むか右に進路をとれば魔物と遭遇する。


「どっちに行ってもいるが……右の方が近いな」

「周囲に他のパーティーもいないし、二手に分かれない?」


 ルリカの言う通り、この辺りには他のパーティーはいない。


「分かった。ただその次の魔物は真っ直ぐ進んだ方の先にいるから、右で狩りした方が狩り次第戻ってくるってことにしよう」


 ということで、右に進むのは俺、ヒカリ、クリスの三人で、真っ直ぐ進むのは残りのルリカ、セラ、ミアの三人になった。

 普通だったら幼馴染三人組で行くところだけど、念のため神聖魔法を使える俺とミアが分かれるように編成した。

 俺が魔法を使えるから本来なら俺とクリスも分かれた方がいいかもしれないが、そうするとバランスが悪くなるから今回はこのようになった。

 たぶんミアが近接戦闘に慣れてきたら、また変わるだろう。

 また右に進んだ方に俺たちが行くのは、MAPのスキルがあるからだ。

 狩り後ルリカたちにはその場に留まってもらい、俺たちがルリカたちを追えば確実に合流出来る。


「それじゃルリカちゃん、気を付けてね」

「それは私のセリフよ。ヒカリちゃん、二人のことを頼んだわよ」

「任せる」


 ルリカの目には、ヒカリが一番頼りになるように映るみたいだ。

 二手に分かれると、俺たちは魔物の反応に向けて真っ直ぐ歩いていく。

 二〇〇メートルほど歩いて突き当りを左に折れれば、ホブゴブリンたちの背中が見えた。

 距離にして三〇メートル。数は四体。ホブゴブリンたちは俺たちに気付いていない。

 この距離でも十分攻撃出来るし、奇襲は可能だがあえてここは挑発を使って相手をこちらに呼び寄せる。

 挑発のスキルを受けてホブゴブリンたちは雄叫びを上げて駆けてきたが、ホブゴブリンたちが俺たちのもとに到着することはなかった。

 ヒカリの短剣が四度振るわれて、斬撃のスキルによって絶命したからだ。

 俺たちは倒れたホブゴブリンに近付くと、魔石のみ回収してルリカたちを追った。

 MAPを見ていると、ルリカたちに追いつく前に魔物の反応が消えた。

 俺たちが合流したのはそれから五分後ぐらいだったが、三人は何やら話し合っている。


「何かあったのか?」

「特に何にもないよ。ミアの戦いぶりを見て感想を言っていただけよ」


 戦闘後、ミアがセラやルリカに戦いの内容の採点をお願いしていたみたいだ。

 ルリカたちの話によると、七体いたホブゴブリンのうち五体をミアが倒したそうだ。


「危なくなったらすぐ助けるつもりだったんだけどね」

「全くその必要がなかったさ」


 と二人が言うほど危なげなく倒したそうだ。

 それでも本人は不安だったらしく、こうして二人に戦いの様子を聞き、何処か悪かった点がないか聞いていたみたいだ。


「主、次行く」


 話が一段落したところでヒカリが袖を引っ張ってきた。

 俺はMAPに目を通し、次の標的に向けて歩を進める。

 一番近くにいたホブゴブリンは、残念ながら他の冒険者の反応が近くまで来ていたから、進路を変える。

 一時間後、三体のホブゴブリンを倒し、お昼を挟んで三時間後、一体と四体のホブゴブリンを倒した。

 二階は二〇体倒さないといけないから、残り一体。

 ただ残念ながら近くにはいない。距離的に……一時間歩けば二体で行動しているホブゴブリンがいる。


「……倒しに行きましょう。それで今日は野営して休んで、明日戻ればいいし」


 このまま休んで寝ている間に狩られてしまったら面倒だとルリカは結論付けたようだ。

 俺一人で狩りに行ってもいいけど、さすがに一人で行動させるわけにはいかないようだ。

 結局皆で倒しに行って、その場で野営を行い翌日ダンジョンから戻ってきた。

 その足でボスの部屋への登録に行ったが、運がいいのか、五組しか待っていなかったからそのままボス部屋に挑戦してきた。

 ボス部屋にいたのはホブゴブリン一〇体だったが、その内の一個体は他よりも体が大きかったけど、鑑定したけど別に上位種というわけではなかった。

 危なげなくボス部屋のホブゴブリンたちを倒し、宝箱の中身を回収して宿に戻ったら、既に調査を終えたアルゴたちが宿に待機していた。

 ちなみに宝箱から手に入ったものはホブゴブリンの魔石一〇個だった。

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