第628話 魔物退治
食事がひと段落すると、管理者の人と鳥肉の取引を行った。
無事鳥肉を買うことが出来たけど、どうも鶏肉料理の食べっぷりが評価されたみたいだ。
生産者として、美味しく食べてもらえるのは嬉しかったようで、特にヒカリの肉に対する情熱を感じ取ったみたいだ。
まあ、俺も肉に関してヒカリ以上の肉好きには会ったことがないからな。
それにヒカリがあんなに美味しそうに食べたのは、ここで生産され、調理された鶏肉料理が美味しかったからだ。
支払いは現金と、いくらかのポーションで支払った。
何でも屋でも売ったけど、ポーションはやはり重宝されるみたいだ。
俺はヒカリに頼まれて、解毒ポーションなどもサービスでつけた。
管理者の人は過剰に支払われた報酬に困惑していたけど、
「これからも美味しい肉をお願い」
とヒカリに言われて受け取っていた。
「嬢ちゃん、任せておきな!」
と力強い言葉が返ってきた。
確かにあの美味しい肉を食べられるのは、ユアンの人たちのお陰だしな。
それにお店で買えばいい値段がするポーション類も、全て自分で採取した素材を錬金術を使って作っているから元手はゼロだし。
その翌日にルリカたちを伴って高台に上って景色を眺め、少しだけ町の中を歩いて鳥の飼育を見学させてもらい、昼食を宿で摂るとユアンの町を出た。
宿の人が夜に食べてと弁当を作ってくれたから、それはありがたく受け取った。
町の人たちに見送られて坂道を下っていく。
MAPを表示して、魔力を流して広範囲を移すけど王国側からこちらに来る反応はない。
ただ山道を逸れた森の中には魔物の反応がある。
魔道国家側は急斜面故に魔物も生活するには環境が厳しかったみたいだけど、こちら側は傾斜が緩いからある程度活動出来るみたいだ。
「ソラ、狩っていくの?」
「少しだけ狩っていくか? ユアンの人たちもそこまで魔物を積極的には狩っていないみたいだし」
昨夜の食事の後に色々と話を聞いたけど、ユアンの人たちは魔物を狩りにわざわざ町の外に出ることはないみたいだ。
ただどうしても町の方まで来る時があるから、その時は退治すると言っていた。
だから俺たちが魔物を狩っても別に困らないということだ。
町の人たちも魔物を狩れば素材は手に入るが、問題は狩りに慣れていないから被害が出る時もあって、その被害の大きさによってはむしろ損益の方が大きいという話だ。
ポーションが不足して困っていたのはそういう理由があったみたいだ。
特にここ数カ月は、滅多に町まで来ない魔物が月一の頻度で現れたという話で、王国側から鳥肉を仕入れに来ている商隊からも何度か遭遇したという話を町の人たちから聞いた。
襲われた商隊は護衛の冒険者が無事狩ってくれたから被害はなかったということだけど。
そういうこともあって、俺たちは魔物を狩っていく。
ビックボアにブラッディーベアなど、下山しながら近くにいる魔物を狩っていく。
さすがに山に入ってまで遠く離れている魔物を狩りにいかない。
少しだけ遠くにいる個体は、ゴーレムに指示を出して引っ張ってきてもらって狩ったけど。
最終的に半日かけて倒した魔物の数は二〇体近くになったが、これはある程度グループで移動していた魔物がいた結果だ。
「それでどうする? このまま下山するか。それとも王都まで転移で飛ぶか」
正直なところ。向こう側の登山で十分歩いたし、山からの景色を堪能出来たから俺的には満足だ。
それと下山して王国南部の街道に出れば、中継都市フェシスから南門都市エピカに行くときに通った道になるから、個人的には一度歩いた道だしいいかなと思ったのもある。
「そうね。アルゴさんたちを待たせても悪いし、飛びましょうか」
ルリカはちょっとソワソワしているヒカリを見ながら言った。
王都に用意してもらった屋敷には解体場もあるから、行けばすぐにでもさっき狩った魔物の解体をすることが可能だからな。
ヒカリは何も言わないけど、先ほど狩った魔物の肉が気になるみたいだしな。
だからだろう、ルリカの意見に反対する者はいなかったから転移を使った。
転移先は王都に用意された屋敷だ。
屋敷に到着して気配察知を使ったが、屋敷には人の気配がない。
異世界召喚された俺たちは屋敷と一緒に、屋敷付きの奴隷の使用人もあてがわれたけど、基本的に俺たちはいないことが多いため、ある程度の自由を与えてある。
そのため今は外に出ているようだ。
いくつかの部屋を見て回ったけど、掃除はしっかりしてくれてあるみたいだしな。
「主、解体するから魔物出して」
「なら皆でやりましょう。さすがに全部は無理だけど、血抜きだけでもしておけば、あとは最悪旅先でも解体することが出来るだろうし」
解体で一番時間がかかるのは血抜きだしね。
ルリカの提案を受けて皆で解体をしていると使用人たちが戻ってきて、最終的に皆で作業することになった。
もっとも解体部屋の大きさから血抜き出来たのは五体だけだから、続きは明日だな。
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