第624話 フォルトゥナ魔法学院・2

 話がまとまったところで、サイフォンたちはケイナと話があると言って席を外した。

 どうもケイナはユーノの知り合いみたいだ。

 それで俺たちはというと、寮へと案内された。


「なあレイラ。入学手続きとかはどうなるんだ? いつから学院に通えるとか」


 寮に向かう途中、俺はレイラに質問していた。


「編入手続きはすぐにでも出来ますわ。頑張りましたの」


 レイラ曰く、学院に在学している人の数が減っているため、それが可能だったということだ。

 寮に空きがあるのは、そういう理由もある。


「本当は編入生を広く募集して、同時期からスタートさせたかったのですが、それは無理そうです。ただエルザちゃんやアルト君以外にも、一〇数人ほど編入予定の子はいます。ミハルたちを含めると二〇人近くになる計算ですわ」


 年齢は、下は六歳から上は一二歳。半数以上が一〇歳以下だと言う。


「あまり多く編入させられなかったのは、時間的余裕がなかったのも一つですが、教える講師の手が空いていないというのもあるのですわ」


 生徒だけでなく、講師の中にも学院を辞めた人がいるとのことだ。

 レイラの話を聞くと、正直申し訳なく思ってしまう。

 次に攻略するダンジョンをプレケスにしていれば手伝えたのにと。


「ソラ、そんな顔をしなくても大丈夫ですわ。ソラたちにはソラたちの人生があるのですから。なんて言いますが、サイフォンさんたちやナオトさんたちを巻き込んでいる時点で、そんなこと言う資格はないのかもしれませんわ」

「そんなことはないだろう。別に権力をかざして強制的に頼んだわけではないわけだし」


 俺の言葉にナオトは頷いている。

 そもそもサイフォンもナオトもこの国に根を下ろしているわけではないから、嫌なら国を出るという選択肢もあった。

 実際アルゴたちは断っているわけだし。


「入学する時に特に用意するものはないのか」

「寮の自室で着る服ぐらいですわ。学院に通う制服など、必要なものは全て支給しますわ」


 なら追加で用意するものは特にないか。

 それと部屋は個室と相部屋などから選ぶことが可能みたいだ。


「貴族の子たちが使っていた大部屋も空いているので利用可能ですわ。ただベッドをはじめ家具類はないから、買う必要がありますの……」


 俺がエルザを見れば、顔を勢いよく振っている。

 変に悪目立ちするよりも、一般生徒と同じように過ごす方がいいだろう。

 その方が友達とかも出来そうだし。

 一通りの話が終わったら、俺たちはレイラと別れて宿に戻った。



「皆寮に入ることになりそうだし、購入する家は小さな奴でいいかな?」


 小さいと言っても、間取りは個室が三部屋あるタイプだ。もっともその個室はそれほど広くはない。二段ベッドを二つ並べたらほぼ埋まるため、寝るための部屋といった感じだ。

 その分調理場や食事を摂る場所が広めになっている。

あともちろん風呂付だ。

家の価格も本来なら高いみたいだけど、買い手が少ないため今は全体的に二割ほど安くなっているということだった。

 家の契約をした翌日には家具を揃えて魔道具を設置した。

 これでいつでもこちらには戻って来られるけど、当分先になるだろう。

 帝国には三つのダンジョンがあるが、今回はその内の二つを攻略する予定でいるから結構な時間がかかると思っている。

 アルゴたちが案内してくれるダンジョンは、上手くいけば早く攻略出来るようなことを言っていたけど。


「サイフォンたちも寮の方に一応住むんだよな?」

「あ、ああ。ただ時々こちらで休ませてもらうかもな」


 俺は家の鍵をサイフォンとエルザに渡した。

 最初サイフォンたちは俺たちが購入した家に住むか迷ったが、最終的に寮を選んだ。

 決め手は食事を用意してくれるからみたいだ。

 宿なら食事は出るけど、持ち家だと自炊か外食になるからな。外食が嵩むと、宿に泊まった方が安く済む場合もあるからね。



「それが制服か……似合っているよ」


 俺の言葉に、エルザは嬉しそうにはにかんだ。

 そんな言葉が出たのは、俺も長い旅を続ける中で学習したからだ。

 ただそんなエルザの顔が少し曇った。

 いよいよ学院に通う日が近づいてきたからだ。

 それは不安のためというよりも、俺たちとまた別れるからだ。

 やはり分かっていても、寂しさはあるようだ。


「エルザ。今度戻って来た時に友達を紹介して」


 そんなエルザにヒカリが声を掛けた。


「はい。頑張ります」

「うん、アルトも」


 ヒカリがアルトにも声を掛ければ、アルトも頷いている。

 それから編入手続きが完了して学院の寮に入るまでの三日間は、エルザやアルト、シュンたちと過ごした。

 サイフォンやナオトたち先生組は、少し早いけどすでに学院の方で説明を受けているからもういない。

 エルザたちがまだなのは、他の編入生たちの準備が終わっていないからみたいだ、

 ただそれも終わり、エルザたちは荷物を持って学院の門を潜っていった。

 それを見届けたら、俺たちもプレケスを旅立った。

 まず向かうのは首都マヒアだ。

 俺たちは徒歩でプレケスを出ると、しばらく歩いてからゴーレム馬車を呼び出して乗り込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る