第621話 引っ越し
大きく決まったことがいくつかある。
一つ目はサイフォンたちだが、教師役を受けることになった。
戦い方の指導と冒険者の心得などを教える特別講師みたいな立ち位置だ。
二つ目はエルザたちが魔法学院に通いたいことを伝えると、レイラは二つ返事でOKを出した。
この時シュンとコトリにミハルも学院に通う話になり、ナオトたち大人組はサイフォンたちの補助として手伝いをするみたいだ。
シズネは学院の食堂で働く希望を出しているそうだ。
すっかりメイドが板についたということか?
シズネが魔法のエキスパートと知って、レイラは教師役で働かないかと交渉しているようだが、その結果はまだ出ていない。
「ソラたちはどうしますの?」
「俺たちはダンジョンかな?」
と答えたらちょっと呆れた表情を浮かべられた。
確かにマジョリカのダンジョンを攻略してまだ攻略するのかと思われたのかもしれない。
下手したらフォルスダンジョンの攻略のことも知っているかもしれない。
それでアルゴたちだけど、実は俺たちについてくることになった。
次に行くのが帝国のダンジョンだったため、その中の一つのダンジョンをアルゴたちは途中までだが攻略したことがあるため、その案内だ。
「わざわざついてこなくても大丈夫だぞ?」
案内があるのは助かるけど、帝国は遠く離れているからな。
それに今回は転移で飛ばないで、プレケスから首都マヒアに向かい、そのまま北上してヘリアの町、山岳都市のユアンを通って王国に入るルートを行くつもりだ。
何故かというと、せっかくだから行ったことがない場所を俺が通りたいという我が儘だ。
もちろんミアとヒカリは賛成してくれたよ?
ルリカたちは……仕方ないなぁと言った感じだったけど。
ちなみにミアとヒカリが賛成したのは、未知の食材と会えるかもしれないというのがあるからだ。
「ああ、ソラいいんだ。ついでだからさ」
俺の言葉にギルフォードが理由を話してくれた。
アルゴたちは帝国のダンジョンに寄ったら、そのまま共和国に向かう予定だそうだ。
それを聞いて察した。
モリガンに会いに行くのかな? と。
別に会いたいなら俺が転移で送るのにと言ったら、
「心の整理も必要だからな」
とギルフォードに肩を叩かれた。
ルリカには、
「はあ、分かってないなー」
と呆れ顔で言われてしまった。
話を聞いたレイラは急いで戻って、その二日後にはマジョリカを発っていった。
慌ただしいと思ったけど、元々プレケスの方には急いで向かわないといけなかったみたいだ。
どうやらサイフォンたちの返答を聞くために、ぎりぎりまで待っていたみたいだ。
ちなみにレイラの話では、新たな生徒の受け入れなどは一か月後から始めるということだった。
プレケスまで乗合馬車で一週間前後。歩くなら十日ぐらいかかるみたいだから、俺たちも旅の準備をする。
まずはエルザとアルトのご近所さんへのあいさつ回りで、それが終わったら旅に必要なものの買い出しだ。
一応歩いて行くことにしたため、その間の食料品などの買い出しだ。
どうやらこの時から授業は始まっているようで、ミアたちがどれぐらい買えばいいかをエルザたちに宿題として出していた。
エルザたちが学院で何を学び、どのような将来を見据えているかは分からないけど、仮に冒険者になるなら食料品の管理は必要だからね。
俺みたいに何でもアイテムボックスに入れて歩くとそのような計算をしなくなるけど。
空間魔法を覚えて、レベルが上がって食料品の保管がある程度出来るようになってからは、あまり気にしなくなったんだよな。
レベルMAXになってからは、もう色々買いためているから、一か月以上ダンジョンに籠っても食べ物には困らない量が入っているような気がする。
それに世界は食材の宝庫だ。
これは鑑定のお陰だけど。
鑑定があるから何が食べられて何が食べられないか分かるから、森で彷徨っても生きていける自信もある。
だけどない人たちは本などでその知識を得ないといけない。
そういうのも学園では学んでいくのかもしれないな。
森の中で住んでいたなら、そこの大人たちが教えるんだろうけどね。
そしてこの買い物では、エルザたちが使うバッグも買っている。
プレケスに行く時は、自分たちの食材を自分たちで運ぶようだ。
アイテムポーチは作れるけど、最初のうちはエルザたちには渡さない方がいいということになったからだ。
収納出来る量は少なくても、貴重品だしトラブルの原因にもなるかもしれないというのが主な理由だ。
買い物を終えた俺たちはその三日後プレケスに向けて旅立った。
アルゴたちもプレケスまで同行して一緒に帝国を目指すのかと思ったら、
「それじゃソラ。次に会う時は帝国だ! 到着したらギルドを通じて連絡を入れてくれ。まあ、もしかしたらお前たちの方が早いかもだけどよ!」
と言って一足先に帝国に向けて出発していった。
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