第619話 性能確認

 サイフォンたちがどのような結論を出すか分からないが、その間色々と俺たちもやることがある。

 まずはフォルスダンジョンで手に入れた報酬の確認だ。

 さすがに街の中で確認するのははばかれたため、今日は街の外に出ている。

 同行するのは俺たちパーティーにエルザとアルト、ナオトたちパーティーだ。

 アルゴとサイフォンたちは街に残ってちょっとダンジョンに行ってくると言っていた。

 アルゴがせっかく来たんだからとダンジョンに行きたいと言ったからだ。

 王都にいた頃のだらだらした生活が嘘のようだ。

 元々モリガンを探すためにナンパ生活をしていたみたいだし、これが本来の姿かもしれない。

 実際ナオトたちが一緒に旅している時は、色々とためになることを教わったみたいだしな。


「この辺りでいいかな?」

「そうね」


 俺たちが来たのは街から南側にある森の中で、その先に泉があるということでそこまで来ている。

 ミアとエルザ、アルトにシズネは早速料理の支度をしている。

 ヒカリは肉を渡したらこっちに合流している。

 ルリカたちが授かったアイテムが気になるみたいだ。


「まずは私ね。私が手に入れたのはこの髪飾りで、私のスキル、疾風と相性がいいみたい。魔力を流すと風で体を包んでくれて、疾風で受ける風の抵抗を緩和してくれる。だから負荷を感じなくなるのね。ただ魔力を使うみたいだから限界を探る必要があるわね」


 確かに魔力操作で確認すると、ルリカの体が薄い魔力の膜で覆われている。


「ルリカは自分だけでなく他の人も運ぶことが出来るじゃないか? その時はどうなるんだ?」

「体に触れた相手も出来るみたいね。ただ……はあ、消費が激しいわね」


 ルリカはしばらくセラの体に触れていたけど、蹲ってしまった。

 うー、体が怠いと呟いている。

 魔力が枯渇したな。

 アイテムポーチからマナポーションを取り出して飲んだから多少回復したみたいだ。


「ボクのこの腕輪は、魔力量の底上げをしてくれるみたいさ」


 セラの言う通り、装備者の魔力量を増加(MP+200)させるとある。

 元々低い魔力量しかないセラには間違いなく嬉しいアイテムだ。


「私のブーツは風の加護があるみたいです。素早く動くことが出来るのですが、魔力を消費して疑似的にソラの転移のような、瞬間移動が出来るみたいです」


 クリスが魔力を籠めると、姿が消えた。

 あう、と言う声が聞こえて音のする方を見ると、尻餅をついたクリスがいた。


「えっとその、着地に失敗しました」


 立ち上がったクリスの顔は真っ赤だった。


「クリス姉凄い。私にも出来る?」

「どうでしょう? 魔力をかなり消費したので、難しいかもしれませんが……試してみますか?」

「うん!」


 興味津々のヒカリにブーツを渡しているけど、サイズは大丈夫なのか?

 そう思っている俺の目前でヒカリがブーツを履くと、ちょうどよい感じに縮んだ?


「装備する人に合わせてサイズが調整されるみたいなんです」


 なるほど。魔道具の中にはそういうものは珍しくないから、驚きはしない。本当だよ?

 そして皆が見守る中ヒカリは魔力を籠め……。


「むう、無理」


 と使えないと言った。

 鑑定すると魔力が足りないと使えないと表示された。

 ヒカリも決して魔力量は多い方じゃないからな。

 それにクリスにしてかなり魔力を消費したというほどだ、かなりの魔力が必要に違いない。

 俺は普通に使っているけど、転移は使いようによっては凶悪なスキルだからな。

 それこそ一瞬で背後をとってバッサリなんてことも可能だ。

 それを考えれば発動させるのに魔力を大量に消費するのは納得だ。


「ま、それはクリスが装備して、緊急回避のために使うのが一番ね」

「はい、そうします」

「ただ練習は必要そうだけどね」


 それはルリカの言う通りだ。

 クリスの顔が再び真っ赤になった。

 さっきのことを思い出したんだろうな。


「が、頑張ります」


 クリスもその辺りは理解しているようだ。

 ちなみに移動速度を速める時は、そこまで魔力の消費は大きくないみたいだ。


「ソラのアイテムは?」

「俺は変わりないかな。他の神様を解放しないと駄目みたいだ」


 俺の腕輪は変わらずだ。

 全員解放した時のお楽しみといった感じなのか?


「そっか。それじゃ……」


 俺たちの視線はカイナへと注がれる。


「私はこのブローチを身に付けている間は、生前使えていた魔法が使えるようになるようです」


 鑑定すると追憶のブローチというアイテム名が表示された。

 カイナは言うと魔法を唱えた。

 巫女ということもあってカイナが使ったのは光魔法だった。

 ただ本人曰く闇魔法も使えるそうだ。


「けど乱発は無理です。魔力が減ると活動に支障が出ます」


 確かにカイナの体は魔力で動いているゴーレムだからな。

 それでも魔法が使えると戦い方に幅が出るのは間違いない。

 俺たちが一通り装備の確認が終わると、ミアが食事の用意が出来たと声を掛けてきた。

 それを聞いてナオトたちも泉から出てきた。

 うん、水着になって思い思いに過ごしていたようだ。

 俺たちもあとで少し遊ぶとするかな?

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