第618話 勧誘
「なるほど。話はだいたい分かった」
レイラから話を受けたナオトたちだったが、感触はまあ悪い。
表情を見れば分かる。
この中で先生役を勤められそうなのはサイフォンとガイツぐらいだしな。二人は面倒見もいいし教えるのも上手い。
アルゴも悪くはないけど、順序だてて説明するのは苦手みたいだ。
ナオトとシュンは、普通に戸惑っている。
「駄目ですか?」
「俺たちは口も悪いからな。けどフォルトゥナ魔法学院か……」
サイフォンは腕を組んでチラリとユーノを見た。
「レイラは魔法学院の管理をするってことだが、何か目標はあるのか?」
サイフォンは一時期レイラとパーティーを組んでいたこともあって、代表してレイラと言葉を交わしている。
「ここに帰ってくる前にプレケスに寄って来ましたが、まずは入学出来る年齢制限の引き下げをしたいと思っていますわ」
「何でまた?」
「実は孤児院も酷い状態だったんですの。それで学院には寮もありますし、そのまま学院の方で将来に繋がる教育が出来ればと思っていますわ」
レイラの視線が一瞬エルザとアルトに向けられた。
たぶん、近くで話を聞いていたサイフォンは気付いただろうな。
ただそれが確実に出来るかは分からないそうだ。
一応希望を母親に伝えてあるけど、予算が出るかはまた未定みたいだ。
「俺は個人的には構わねえけどな。あくまで期間を決めてもらえればだけどよ。それと定期的に休みも欲しいな」
「その辺りの調整は可能だと思いますわ」
サイフォンはちょっと前向きに考えていそうだな。
逆にアルゴとナオトはあまりやりたくなさそうだ。
シュンも誰かに教えるのは嫌そうにしているけど、魔法学院にはちょっと興味を示している。
これはシュンだけでなく、ミハルとコトリも同じだ。
確かに異世界の学校となればどんなところかは気になるけど、通うとなるとまた別だよな。
それに何をしているかはだいたいレイラたちから聞いているから、わざわざ行かなくてもと思った。
俺の場合は既に魔法系のスキルを習得出来ていたのも影響がある。
ただ俺がマジョリカに来た時点で通うことが出来ていたら、もしかしたら通っていた未来はあったかもしれないとは思う。
主にこの世界のことを知るために。
けど年齢制限か……。
俺はエルザとアルトのことを考えていた。
俺たちの旅には連れて行けないし、魔法学院に通えば二人の選択肢が広がるかもしれない。
これは俺の希望であって二人には二人の考えがあるから、その辺りは話し合う必要がある。
たぶん俺が言えば行くと頷くけど、押し付けはただの迷惑にしか過ぎないからな。
「私からは以上になりますわ。急には決められないと思いますの。私もここにはあと一週間ほどいる予定ですの。そうですね……五日後にどうするか聞きに来ますわ」
それからはレイラが首都に行って何をしていたかの話を聞いたり、俺たちが何をしていたかを話した。
巨人の村については獣王が正式に発表するまでは話さないことにした。
フォルスダンジョンの件は終わったから、正式に交流が始まるはずだ。どういう付き合いをするかは分からないけど、助力が必要ならギルドの伝言サービスで連絡して欲しいと伝えてある。
武闘大会のことは魔道国家でも話題になっているようで、特に獣王とシュンの戦いは語り告げられているそうだ。
獣王をあそこまで追い込んだ相手として。
その獣王を模擬戦とはいえミアがKOしたと言うときっと驚くだろうな。
きっとあの場にいた人じゃないと信じないと思うけど。
「それではまた来ますわ」
レイラが帰ったあとは、本格的にどうするかを話し合うことになった。
「ソラたちはプレケスのダンジョンにも行くんだよな?」
「その予定だよ」
「……依頼を受けると俺たちは手伝えるか分からなくなるな」
「そんなの気にしなくていいよ。それに私はサイフォンさんたちが教師をやるのは賛成かな」
ルリカが賛成する理由は、自分もサイフォンやガイツから多くを学んだからだ。
それにジンやギルフォード、ユーノだって冒険者としては優秀だ。それこそダンジョンに引率するような授業があれば、活躍することは間違いない。
「それに次にプレケスのダンジョンに行くとは限らないしね」
ルリカの言葉に俺は頷く。
確かに次に何処のダンジョンに行くかはっきりと決めてはいない。
近いとはいえ、別に転移を使えばすぐに戻ってくることは出来るのは事実だ。
出来れば一度帝国にも行ってみたいんだよなとは思う。
正確には一度帝国領には入ったことがあるけど、あの時は黒い森に向かうために通り過ぎただけだった。
それに魔王討伐で普段と違ったし、セラの元奴隷主がいたりとゆっくりは出来なかった。
話を聞く限り観光したいとは思わないけど、どんなところかは見てみたい。
どうせダンジョンがあの国には三つもあるしね。
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