第608話 強化2
翌日。俺は皆で鍛錬所の方に来ている。
昨夜のうちに強化のスキルに関しての説明をヒカリたちにはした。
ただそこでふとある問題が起きた。
「練習するのはいいけど。建物とか壊れたりしないでしょうね?」
ルリカのその一言で攻撃系のスキルの強化練習をここでするのは危ないのでは? ということになった。
「ならダンジョンの中ならどうですか? その階の魔物を全部倒してからそこで練習すればいいと思います」
クリスの提案により急遽ダンジョンに行くことになった。
選んだ階は六六階。もっと下の階でいいと思ったのに、ヒカリの強い要望により決定した。
「ソラはヒカリちゃんに甘いさ」
否定出来ないのは結果が示している。
あんな上目遣いで懇願されたら断るのは難しいと思う。
「いや、ミノタウロスとか倒したらレベルも上がるかもしれないしさ」
メンバーたちのレベルは高レベルだからなかなかレベルが上がらないけど、それでも強い魔物を数狩れば経験値は稼げる。
俺がそう理由を話したけど、あまり響いていないようだった。
「ま、まずは肩慣らしで普通に戦いましょう」
今日は獣王たち三人が不在で、いつもの七人で挑むことになっている。
六六階は普通に七人で攻略していたから大丈夫だと思うが油断は禁物だ。
油断は禁物なんだけど、勝負は呆気なくついた。
まず今回の戦闘でも強化のスキルは試しに使っていた。
それぞれの装備に強化を付与したらミノタウロスをサクサクと狩ることが出来た。
ただし強化した武器の耐久力が大幅に減っていたから、諸刃の刃になることが分かった。
錬金術や鍛冶スキルを持っている俺だから不都合はないけど、普通の人の武器を強化するのはちょっと難しいかもしれない。
特に魔剣などの貴重品とかね。
壊れて弁償しろと言われても困る。
あとは武器を強化した場合だけど、直接斬る場合は威力が上がるが斬撃などの遠距離攻撃を発動するスキルには強化の効果がのっていないことも分かった。
「むう、残念」
ヒカリは残念そうだが出来ないものは仕方ない。
スキルレベルが上がればまた変わるかもしれないけど。
あとは斬撃の飛来する速度が速いため、スキルを強化出来ないというのもあった。
ただ逆にクリスの使う攻撃魔法を強化することは出来た。
ミノタウロスの群れを一掃出来たのはこの力が大きい。
魔法も発動して飛んでいくところに強化をするのは難しそうだが、待機状態にして魔法を留めてくれると今の俺でも可能だった。
ただこれは誰もが出来るわけではないというか、クリスの魔法に対する腕と俺が魔力の流れを把握して待機している魔法を認識出来るからだろう。
普通の魔法使いだと魔法を待機させることがまず出来ず、出来る人も長いこと留めておくことは難しいという事情もある。
クリスが当たり前にやっているから分からなくなる。
俺? 俺も使い方が色々と違うからな。
ただこの方法ならネネとフィーゲルには使えそうだ。
あの二人も魔法の技術は普通の魔法使いと比べても段違いに上手いからな。
もっとも魔法を留めておく間は、それなりに魔力を消費するから長時間は無理だとクリスは言った。
「主、肉じゃなかった」
戦闘を振り返っていると、宝箱を開けたヒカリが戻ってきた。
中に入っていたのはキングミノタウロスの毛皮だから、売るとかなりの金額になる。装備としても高性能なものが作れるはずだ。
けどヒカリとしてはそんな高級素材よりも肉の方が良かったようだ。
実際装備として使える素材としては、上の階で手に入ったものがあるから、俺たちにとってはそれ程価値が高いわけではない。
ただ売らずにパーティーの共有財産として今回は残すことにする。
素材関係はいつ創造で使うか分からないからあっても困らない。
それは今までの稼ぎで十分な余裕があるから売らずに済んでいるというのがある。
「もう一回行くか?」
「うん!」
そんなに嬉しそうに頷かなくてもいいぞ?
それを見たルリカたちが仕方ないな、と笑みを零しているし。
皆は俺がヒカリに甘いというけど、ルリカたちも変わらないと思うぞ?
「ただもう少し休憩してからな。他にも色々確認したいことがあるし」
俺は結界術のシールドに強化を施して、その耐久力を確認したり、再び装備品に強化を使って耐久力の減り具合を確認する。
攻撃を与えるごとにどれだけ耐久値が減るのか、盾で受けた時の耐久値は攻撃の強さで変わるか等々だ。
他にも複製で作った装備品に強化を使ったりと、試すことは色々ある。
それが一通り終わったら再びダンジョンに入る。
次は一階上げて六七階に行った。
構成は変わらないから普通に戦う。
最終的に七〇階まで戦い抜き、キングミノタウロスの肉二つと、ミノタウロスの肉一つを入手して今日のダンジョン攻略を終えた。
戻ってきたら獣王に何故誘ってくれないかと詰め寄られたけど、一緒にいたリュリュに怒られていた。
獣王は俺たちが鍛錬所にいると思い、仕事を頑張って鍛錬所にきたそうだ。
もっとも獣王に稽古をつけてもらえた騎士たちは充実した表情を浮かべていたけど。
そして俺たちは獣王たちの装備品の修復が終わるまでダンジョンにいったり、鍛錬所で鍛えたり、エルザやアルトたちと一緒に街の中を歩いたりとして過ごし……十分英気を養ったところで、いよいよ一〇〇階への扉を潜っていった。
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