第601話 ケルベロス対策
「お婆ちゃんの話だと……」
そう切り出したクリスの説明によると、ヘルファイアとヘルウォールの対策方法はあるそうだ。
まずヘルファイアの防ぎ方だけど、一つは光属性の付与された防具か、神聖魔法による聖属性の付与で防ぐことが出来る。
ただし属性付与された防具も攻撃を受けすぎると破損する可能性は高いという話だ。
また神聖魔法の付与も、熟練者が使わないと防げないということだ。
神聖魔法に関してはミアが使えばいいし、光属性の付与も俺が出来る。
問題はどれだけ付与の効果が持続してくれるかだ。
頻繁に付与し直さないといけないとなると、俺とミアの二人は殆ど補助に回るしかなくなるし、複数体と戦うとなるとカイナ一人で守るのは難しい。
もう一つの防ぎ方は、これは魔法で相殺する方法。
「精霊魔法の水しか駄目なのか?」
「はい、今私が契約して使える魔法だと水だけになります」
光の精霊魔法でも防ぐことは可能だけど、クリスが使える精霊魔法は火、水、風の三種だけだから、水だけだと言ったんだと思う。
「通常の水魔法では駄目ということですか?」
「はい」
フィーゲルの言葉にクリスが頷きながら答えた。
「それで嬢ちゃん、ヘルウォールの方はどうなんだ?」
「こちらも基本はヘルファイアと同じみたいです。ただヘルファイアと違って守りの魔法なので、耐久度が高いのでそれを破ろうとすると、武器への負担が大きいと言っていました」
「攻撃が届きそうでも無理せず迂回しろってことだな」
獣王はちょっと苦手そうだな。
真っ向勝負で打ち破るのが好きだし。
実際言いながらため息を吐いている。
「まあ、あとはケルベロスがその魔法をどれぐらいの頻度で使ってくるかだな。特に注意すべきはこの二つだが、他にも炎を吐いたり攻撃手段は多いみたいだしな」
獣王の言う通り、普通の火や闇の属性魔法も使ってくるみたいだ。
「そうですね。闇魔法は状態異常系の魔法も多いので、そちらの対策も忘れないようにしないとです」
闇属性魔法はそれがあるか。
俺は耐性があるからいいけど、呪いから暗闇、魅了などもあるからな。
しかも闇属性はいつ使われたのか分かり難いという特徴もある。
呪い関係なら神聖魔法の補助魔法で防ぐことは出来るけど、先に述べた暗闇や魅了をはじめとした状態異常は、リカバリーをしないと回復することが出来ない。
この辺りはこまめに鑑定して状態の確認をするしかないか。
「ま、とりあえず俺たちで何が出来るか話し合うぜ。今回ばかりは持久戦も考えて戦わないといけないかもだしよ」
耐えて耐えて、相手が弱まるのも待つのも一つの手か。
あとはケルベロス単体の身体能力がどれぐらい高いかだな。
その辺りの記述が一切ないし。
魔法が厄介過ぎて、そちらばかりに注目された結果なのか、身体能力は下の階で戦った魔物たちとそれほどの差がないかだな。
この階まで上がってきた冒険者たちとなると、当然それなりのレベルで動きも良いだろうし。
それにここに資料を残している人たちは、まだダンジョンで死んだ時のペナルティーがない人たちみたいだし。
果たしてこのダンジョンを攻略し、ここに封印されていると思われる神様を解放したら、ダンジョンが昔のように戻るのだろうか?
そうなったらかなりの人が押し寄せて来そうだけど、そうなると今度は入場制限とかありそうだな。
何の憂いもなく鍛練出来る場なら、低階層は新人の教育の場には適していると思うけど。
一番の問題は、その感覚が抜けずに外で活動する時かもだけど。
「うし、それじゃ次のダンジョンは……二日後でいいか?」
「ああ、俺たちは構わないよ」
俺がルリカたちを見たが、反対の意見は出ない。
けど獣王の性格的にすぐにでも行くといいそうだったのに意外だ。
「ま、まあ、ちょっとやらないといけない仕事があるからよ」
俺の表情から考えを読んだのか、獣王はそう言ってきた。
その傍らでは、ネネがニッコリと笑っている。
なるほど、あの間はネネの表情を読んで、咄嗟に予定日をずらしたのか。
獣王は責任ある立場だし、俺たちと違って忙しいから仕方ない。
会うと結構愚痴をこぼすけど、何だかんだ言いながらしっかりやることはやっているからな。
その点は本当に偉いと思う。
翌日。完全に暇になった俺たちは街に出てゆっくり過ごした。
ナオトたちもこの日は完全に休みにしたようで、女性陣は楽しそうに話ながら街中を歩いて行く。
俺たちはあとについて行くだけだが……ナオトとシュンの姿を見てちょっと昔の自分を思い出す。
現在のナオトたちは変装している。有名人は辛いよな。
俺も昔は正体を隠すために仮面を被っていたものだ。
ただこうして街中を歩いていると、仮面をしている人はそこそこいる。
服装も奇抜なファッションな人も普通に多い。
うん、あと目のやり場に困る人とかね。
動きやすさ重視でもあれは際どいと思う。
ただそれは普通の格好の用で、ルリカたちは全く気にしていない。
異世界組は俺も含めてそうでもなかったけど。
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