第598話 保護
「けど獣王様は何の用だろう? ソラが呼ばれるのは分かるけど、何で私まで?」
「きっとミアさんの力を目にして、あの人たちを診てもらいたいのだと思います」
ネネの言うある人たちというのは、どうやらダンジョン内で死んだ獣王たちのパーティーメンバーのことみたいだ。
そのネネの予想は的中し、獣王と会って案内されたのは彼らが眠る部屋だった。
「色々な手を尽くしたが目覚めなくてな。その中で司祭が言ったのは、これは一種の呪いではないかという話だった。そのことを今日の嬢ちゃんを見ていて思い出して、その突出した能力ならもしかしたら治療出来るのかもしれないと思って来てもらったんだ」
獣王はミアを呼んだ理由を言ってきた。
それを聞いたミアは困惑しながらも目の前の横たわる人を診ている。
俺も横からそっと覗いたが、一見するとただ眠っているようにしか見えない。
ただ注意すると呼吸をしていないように見えた。
何となく、神殺しの短剣を使ってミアを仮死状態にした時に似ている。
鑑定で状態を確認したが、浮かんだ文字は【保護】の二文字だった。
はてな、となって解析でさらに調べたが、それ以上のことは分からなかった。
「これは私では無理です。ううん、解除することは可能だと思う。けどそれをするとこの人たちは大変なことになる、そう感じます。これは呪いというよりも、何かから守るためにあえてこの状態になっているんだと思います」
ミアもはっきりしたことは分からないようだが、それで状態が保護になっているのかと、俺はちょっと納得した。
「そうなるとやっぱダンジョンを攻略するしかないか」
獣王がネネを見ながら言えば、彼女は無言のまま静かに頷いた。
「あ、おかえり。獣王様の用事は何だったの?」
聞かれた俺は、見てきたことを皆に説明した。
「ミアでも無理なんですか?」
「うん、あれは私では無理ね。むしろエリアナ様に直接診てもらった方が何か分かるかもしれない」
そうなると難しいな。
エリアナはアルテアダンジョンの一〇階から移動することは出来ないし、かといってあそこまで行くには一〇階までダンジョンを通る必要がある。
七階までは特に問題ないけど、その先の環境は厳しいからな。
特に魔力を吸われるあそこはあまり通りたいとは思えないし、保護が解除される可能性もゼロではないと思う。
実際ミアはあの状態を解除出来るとも言っていたしな。
「それで獣王と話したんだけど、明日はとりあえず九一階に挑戦しようって話になったんだけど大丈夫そうか?」
「私は問題ないよ。それに資料だとあまり良く分からなかったしね」
「うん、注意しながら戦う」
ルリカの言葉にヒカリが頷いた。
確かにマンティコアに関しては特に注意点もなかったから、一度戦ってみるしかないか?
危険ではあるけど、情報がない以上注意して行くしかない。
装備品だって現状揃えられるものの中では最高のものを用意出来ていると思うし、戦力だって申し分ない。
やや攻撃よりの編成だけど、攻撃は最大の防御だって言うしな。
「あ、ただ最初は俺たちだけで戦うところを見たいって言っていたから、最初は俺たちだけで戦うことになると思う」
獣王は実際に魔物と戦う俺たちを見てみたいと言っていた。
もっとも召喚によって魔物の数が増えたり危険と判断したら、すぐに戦いに介入するとは言っていた。
戦い方が見たいなら下の階で試すのもありと思ったが、それだと正確な力量が分からないようなことも言っていたけど、獣王としても早くダンジョンを攻略して仲間たちを少ないと思っているのかもしれない。
それにあの状態の人は、獣王たちの仲間以外にも十人以上いるということを話していた。
中にはあの状態にならずに復活の間に現れた人もいるが、その人たちは何かしらの後遺症をもった状態で今も生活しているという話だ。
その後遺症は一人一人違って、悪夢にうなされる人や、不意に痛みを襲われたりと生活に支障をきたす人たちもいるようだ。
その後俺たちは明日に備えてどうマンティコアと戦うかを話し合った。
定石通り俺とカイナが攻撃を防いで、攻撃陣がその隙に攻撃をするということになったけど、マンティコアがどれぐらいの防御力を持っているかが気になるところだ。
それほどマンティコアに対する情報が少なかったんだよな。
力と力の勝負だったとか、そんな感じの感想のような記載がとにかく多かった。
ネネ曰く、それを資料室で目にした獣王は目を輝かせていたと言っていたらしい。
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