第595話 フォルスダンジョン・23
七八階から八〇階では何度か召喚で取り巻きを呼んできたため長期戦を強いられた。
特に召喚された取り巻きは個体ごとに使う魔法もランダムで決まるため、四属性の魔法がフロアに飛び交い守りの時間が多くなった。
それでもクリスの精霊魔法を中心に、数を地道に減らすことで倒すことが出来た。
クリスの精霊魔法は威力重視で放てば複数の魔物を同時に葬り去ることが出来るが、その分消耗も激しく連続で放つことが出来ない。
クリスが休んでいる間はルリカたちが牽制し、倒せると思った時は前に出て数を減らしていった。
その代わり用意した投擲武器の殆どがなくなってしまった。
「けどあれは反則よね」
「うん、凄かった」
「私もあんな現象を見たのは初めてでした」
ルリカとヒカリ、クリスが話しているのは八〇階でオルトロスの使ってきた魔法のことだ。
あの時出たオルトロスの目は両方とも赤だった。
開始直後に召喚を一度だけ使い、その後ボスは召喚を使うことなく、取り巻きが召喚を繰り返して数を増やしていった。
一度の召喚で五体以上を連続で呼ばれてフロア内がオルトロスに埋め尽くされるかと思った。
しかも取り巻きたちはどうやら二つの頭でそれぞれ召喚を使ったようで、召喚する速度が早かった。
最終的に耐えて反撃、耐えて反撃、耐えて反撃を繰り返してボスのみになったところで、ボスはある魔法を使ってきた。
ある魔法といっても火の魔法だけど、ボスがそれぞれ使った魔法は途中で一つに合わさり、初級魔法であるファイアーボールの威力が中級、いやそれ以上の高火力となって襲い掛かってきた。
その威力はオーラシールドで防ぎきることが出来ず、咄嗟に風魔法による防壁と、ミアが神聖魔法で魔法の防壁を強化してくれたから耐えることが出来た。
普通神聖魔法の補助は対象が人になるが、ミアは魔法にも適用させていた。
正直言って凄い。
それを知ったクリスは興奮していたからな。
「いつから出来るようになったんだ?」
「んー、なんとなく出来る気がしたから使ったんだよ」
尋ねたらそんな答えが返ってきた。
これは攻撃系のスキルや魔法でも強化出来るのだろうか? とも思ったが、ミアは何でもないようなことのように言ったけど、人に対して使うよりも消耗が激しいみたいで疲労の色が見えた。
二つの魔法を合わせて威力を高める……複合魔法に似ていたな。
そうなると異なる属性を合わせた魔法も使ってくる可能性があったのだろうか?
オルトロスの出る階はこれで終わるから、それを検証するためにわざわざもう一度八〇階に挑もうとは思えない。
階を更新して攻略こそしているけど、そこには常に危険が伴っている。
ダンジョン内で死んでも死にはしないという話ではあるけど、無用なリスクを負う必要はない。
一応今回の二つの魔法が合わさり魔法の威力が上がったということだけは報告するけど。
「とりあえず戻って今日は休みましょう。次から出る魔物も変わるみたいだいし」
「そうだな。今日は時間があるしたくさん調べるとするか」
俺の一言にルリカは顔を逸らし、他にも目を逸らす者がいた。
それを見たクリスは苦笑いを浮かべている。
まあ、じっとしているのが苦手な人は多いからな。
「ルリカたちは買い出しにいってくれるか? 投擲武器もだいぶ消耗したからさ」
「そ、そうね。ソラがそう言うなら仕方ないかな」
声、弾んでいるよ。
口には出さないけど。
ヒカリあたりは集中力が切れると普通に寝て過ごすけど、ルリカは何かが邪魔する様で本に向き合って燃え尽きている時があるからな。
結局資料室には俺とクリス、ミアの三人が行くことになった。
資料を確認したところ、八一階から八五階に出る魔物がデスハウンド。八六階から九〇階がアヌビスと、共にアンデッド系の魔物のようだ。
デスハンドは骨で構成された犬で、倒すには聖属性の武器で攻撃し続けないといけない。
他のアンデッドと違うのは魔石が存在しないため、とにかく倒すには物理攻撃を当て続けないといけないようだ。
ただ接近すると呪いなどの状態異常を受けるためその対策が必要とある。
魔法に対する抵抗力も高いそうで、神聖魔法と光魔法以外の魔法が効きにくい。
他の属性でも全く効果がないというわけではないみたいだが、かなり魔力の強い人じゃないとダメージが入らないとある。
「そうなるとミアのホーリーアロー頼りになるのか?」
「あ、けどここに神聖魔法や光魔法でも効果は低いとありますよ」
ページを捲ったところで注意書きが入っていた。
そうなると物理攻撃メインになるのか? 近付くと状態異常にかかるというし、悩みどころだな。
「ミアには聖水を大量に作ってもらわないとかもな」
最終的に創造で呪い対策などの護符を作るのは俺になるけど、護符を作るのには聖水は必須だからな。
俺も神聖魔法を習得してるけど聖水は作れないからそれに関しては手伝うことが出来ない。
「ここからは時間がかかりそうだな」
「仕方ないです。焦らずじっくり行きましょう」
そこはクリスの言う通りだ。
準備を怠って被害が出れば元も子もない。
その後アルビスに関することを調べた俺たちは、資料室をあとにして宿に戻ることにした。
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