第592話 オルトロス
翌日の午前中。ルリカを残して六人で街に出た。
消耗品と装備の修復のためだが、一人残したのはエルザとアルト、シズネがルリカの様子を見てくれることになったからだ。
ルリカは一晩休んで昨日よりもだいぶ良くなっているけど、本調子には程遠い。
それでも責任感が強いから休んでいられないなんて言い出しそうだけど、エルザとアルトに看病されたら素直に従うしかないだろう。
エルザに促されて素直にベッドに横になっていた。
それでもミアはルリカのことが心配のようで、俺たちは手早く店を回って必要なものを揃えると、そこで俺とヒカリ、クリスとセラの四人はギルドに、ミアとカイナは宿に戻った。
俺たちがギルドに行ったのはダンジョンに関する資料を調べるためだ。
次は七六階になるが、ここから八〇階まで出るのが魔獣オルトロス。二つの顔を持つ犬型の魔獣で、一番の特徴は魔法を使うところか?
この魔法は個体によって異なる属性を使ってくるそうだ。
例えば片方が風属性の魔法を使ってきたら、もう片方が水属性を使うなどなど。
「魔法を使うのか……」
「そうみたいですね。それに取り巻きを召喚するのも変わらないみたいです」
「資料を読むと最初は攻撃が思うように入らないってあるし、ヘルハウンドみたいに魔力を使って防御してくるのは変わらないかもな」
ただ攻撃魔法で消費してくれれば、その分消耗は早いかもしれない。
問題はオルトロスの魔力がどれぐらいあるかだ。
この辺りは魔力察知で相手の魔力の大きさを調べるしかないか。
その個体のレベルによっても違ってくるだろうからその辺りは注意する必要もあるか。
「とりあえずオルトロスが今まで使ってきた魔法は火水風土の四属性だけみたいですね」
そう言ったクリスの表情は硬い。
それ以外の属性の魔法を使ってくる可能性があるかもしれないと考えているからだと思う。
確かにその可能性はあるか……。
それに資料によると広範囲の魔法も使ってくるとある。
ダンジョン内のフロアはある程度の広さはあるけど、躱すにも限界がある。
魔法を躱すんじゃなくて、防ぐようなものも必要になるか?
俺の場合はシールドマスターによる防御系の技で防ぐことは出来るが、最前線で戦うことにセラたちにはそれがない。
シールドを使っても攻撃を受けると解除されるから連続攻撃をされると意味がないし……ヘルハウンドが使ったように魔力を使った防壁はどうだ?
……いや、これも駄目だ。
あれはあくまで膨大な魔力量があってこそ成立している。
「ソラ、とりあえず一休みしませんか?」
「そうさ。もっと肩の力を抜けばいいさ」
「うん、意見は口に出して言うといい」
一人で色々と考えていたら、三人がそんな風に声を掛けてきた。
どうやら顔に出ていたみたいだ。
そうだよな。一人で考えても仕方ないし、皆に相談して対策を練った方がいいな。
「確かに召喚で数が増えた時に一斉に魔法を撃たれると耐えるしかないかもですね」
「シュパシュパ斬る!」
「投擲用の斧を大きいものに変えると威力が上がるかもしれないさ」
俺が考えていたことを告げれば、三人もそれぞれ意見を言ってきた。
あとは陣形を組んで皆で接近して、一気に攻めるなどの意見も出た。
オーラシールドはそれなりの範囲をカバー出来るからそれもありだけど、問題は複数の攻撃を受けた時に耐えられるかどうかだ。
クリスの魔法による防壁や、ミアの補助魔法があればいけるか?
「魔法の種類にもよりますが、土属性以外の魔法なら対応出来るかもしれません」
土魔法はある意味土の塊を飛ばす感じだから、物理攻撃よりではあるから魔法で防ぐのは難しいか?
ウォール系の魔法を厚く作って防壁とするのも一つの手かもしれないけど、あれは視界を妨げられるからな。
俺の場合は魔力反応で魔法が飛んでくることは察知出来ると思うけど。
オルトロスの魔力量次第では、防御で相手の魔力を消費させるのもありかもしれないな。
「戻ったら俺たちの意見をルリカたちに話してみるか?」
戦略を考えるのは、やはりルリカとクリスのコンビが揃っているのが一番だから。
クリスの知識にルリカの行動力が加わると俺たちでは考えられない方法が提示されたりする。
その後宿に戻る前に店によって、鉱石など色々購入して帰った。
お店で売っている武器を買えば楽だけど、錬金術を使って鉱石から作った方が安上がりだし、鍛冶スキルのお陰で良い物が作れるようになった。
あと作れば作るほど鍛冶のスキルレベルも上がるから、作れる武器の品質も上がる。今の俺のレベルでも同程度の武器よりはいいと思う。
作り手がダルクレベルだとさすがに敵わないけど。
それにルリカの回復次第だけど、次にダンジョンに挑戦するまでは時間がかかるだろうからな。
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