第591話 報告と休息
ボスを倒した瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた。
よく倒しきれたと思うが、一対一に集中出来たからだな。
俺は立ち上がるとゆっくり歩き出す。
疲れが嘘のように消えるが、きっと止まったらまた疲労に襲われるんだろうな。
「主、一人で倒した!」
「ヒカリたちが他の敵を引き付けてくれたからな」
ヒカリたちを見ると、カイナとミア以外は疲労困憊といった感じだ。
ヒカリも声を掛けてきたけど、その額には大粒の汗が浮かんでいた。
四人の中ではルリカが一番酷そうだ。
意識はあるが座っているのも辛いのか横になっている。
外傷はミアが治したのか見えないけど、ヒールでは体力を回復出来ないからな。
それはポーションでも無理だ。
俺も一度座って休むことにした。
歩けば回復も早いけど、休んでいるところをうろうろされると落ち着かないだろうし。
これがマジョリカのダンジョンのボス部屋だと順番を待っている人がいる場合があるから、ゆっくりしていると罪悪感を覚えるがここなら問題ない。
現在のダンジョン利用者でこの階まで到達しているのは、確か獣王のパーティーだけだったはず。
その獣王たちも、ダンジョンの更新が止まっているみたいだ。
特にこのところは武闘大会の後始末でそれどころじゃないみたいだしな。
「主、宝箱見てくる」
体力が回復したのか、それとも気になるのか、ヒカリは立ち上がると宝箱を見に行った。
トコトコと歩くその後姿を眺めながら、戻ってきたらそれでも出た方がいいかなと思った。
野営用の道具はアイテムボックスに入っているが、休むなら宿のベッドの方がいいだろうし。
「ミア、ルリカの様子は?」
「疲れて寝ちゃったみたい」
「……動かしても大丈夫そうか?」
俺が宿で休ませた方がいいか尋ねたら、
「そうね。うん、そっちの方がいいと思う」
ということで、ヒカリが戻って来たところで移動を開始した。
ちなみにルリカを背負ったのはセラだ。
一番体力があるのは俺だけど、まあ、色々あるんだよ。
ダンジョンを出たところで二手に別れた。
一応七五階を突破した報告と……詳細の説明もしておいた方がいいか?
「クリス、詳しい話は明日にするか?」
「……私は大丈夫なので今でも構いません。ヒカリちゃんはどうです?」
「うん、今日報告。明日は宿でゆっくりする」
二人がいいなら報告を済ませてしまおう。
別にダンジョン内で起こったことの報告は強制ではない。
それでも俺たちが新しい出来事を報告するのは、俺たちも昔の人たちの残した資料にお世話になっているからね。
それのお陰で大分助かっている。
俺たちがダンジョンから出てきたのを見て、ちょっと室内が騒がしくなった。
最初の頃は武闘大会で人がいなかったが、今ではダンジョンを利用している人がかなりの数いる。
それも殆どが固定メンバーのため、新規でダンジョンに挑戦する者は目立つ。
それに加えて俺たちの場合は、シュンやナオトたち武闘大会の上位者の知り合いというのもある。
もっともそれはきっかけに過ぎず、徐々に上層階を攻略するパーティーとして見られるようになってきた。
「……七五階に関して報告があります」
クリスが受付嬢に告げると、それを聞いた受付嬢は何かを察したようで個室に案内された。
そこで俺たちはギルド職員に、七五階で起こったことを報告した。
「そんなことが……ありがとうございます。これは資料の方に掲載させていただきます」
最初驚いて話を聞いていた職員だったが、すぐに俺たちの話に耳を傾け、メモをとっていった。
後日話を聞くかもしれないと言われたので、それに関しては了承した。
話が終わったら、俺たちは寄り道しないで宿に戻った。
「ルリカちゃんの様子は?」
「眠っているわ。体に痛みはないみたいだけど、今は話すのも辛いみたい。食欲もないみたいだったけど、スープだけは飲んだよ」
何か食べないと体力の回復も遅いからな。
その後俺たちも思い思いに休んで夜になったら食事を食べるために部屋を出た。
ちょうどナオトたちも帰って来たようで、ルリカがいないことに気付くと何があったか聞かれた。
とりあえずその話は食事を済ませてからすることにした。
せっかく作ってもらった料理が、話し始めると冷めてしまうだろうからね。
シュンたちは話を聞きたそうだったけど、カエデたちに促されて食事を開始した。
その後ダンジョンでの話をすれば、アルゴやサイフォンたちも普通に驚いていた。
「まあ、大事なくてよかったな。それじゃソラたちは明日のダンジョンは休みか?」
「そのつもりだよ」
無理をしても仕方ないし、七六階からはまた違った魔物が出るから、それを調べる必要もある。
七一階からの魔物の出方は変わらないというが、今回は資料にない状況に直面したから、情報のアップデートが必要になってくるな。
それ以外にもどんなことが起こり得るかも話し合う必要があるか?
と思ったけど、今のところ特に思い浮かばない。
出来ることは消耗品の在庫確認と補充ぐらいかな?
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