第586話 準備・2
フォルスダンジョンの上階を攻略していて思ったのは、魔物も魔力を活用して自分を強化しているということ。これがダンジョンだからなのか、野良の魔物も出来るかは分からないが、とにかくその対策は必要になる。
一応攻略としてクリスの風の精霊魔法による拘束は有効だったが、ある意味力技だし、相性によっては効かない魔物もいるかもしれない。
それで一つ実験的だが武器を作った。
正確には吸収スキルを武器に付与した。
これで魔物の魔力を攻撃しながら吸収出来ないかというものだ。
実際に作ってみてヒカリに手伝ってもらったが、多くはないが斬られた瞬間MPが減ったのを確認出来た。
ちなみに実験している途中でミアがやってきて、俺たちは怒られた。危ないことをするな、と。
さらにミアに注意されている時にクリスたちもやってきて、ミアから理由を聞いたクリスにも怒られ、ルリカとセラは呆れていた。
けど仕方ないじゃないか。ぶっつけ本番で試すわけにはいかないし。
それに痛覚軽減があるとはいえ斬られるのは抵抗があるから、その辺りは注意したよ。
ただ作業が中断したせいではっきり検証出来たかといえば出来ていない。
例えばこの吸収量の判定は何で決まるかなどだ。
一定数なのか、与えるダメージ、衝撃の強さで変わるか等々。
仕方ないから直接攻撃をする実験はそこまでにして、一応盾に魔力を流したところを斬ってもらっての確認に変更した。
……うん、盾に流した魔力は減っているけど、これが吸収のお陰なのか、ただ単に受け止めたからなのかの判断が出来なかった。
まあ、仕方ないか。
ミアが怒ったのも俺のことを心配したからだし、俺だってミアたちがそんな危ないことをしたらきっと止めていたと思う。
ただ俺が何故そのようなことを最初したかといえば、ステータスを見ていたらMPが減るのを数値でしっかり確認出来るからだったんだよな。
「それじゃ私たちの武器にも付与してもらっていい?」
「それなんだが、ちょっとこれは扱いが難しいようなんだ」
俺はルリカに理由を説明した。
吸収スキルを付与した武器を使ってみて分かったが、魔力を流すと流した魔力も吸収してしまうことが分かった。
そのため魔力を籠めた攻撃が出来なくなる。正確には魔力の消費が激しくなって難しくなるが正しいか?
「なら予備の武器の方に付与すればいいじゃない」
理由を聞いたルリカはそう言ってきた。
確かに予備の武器に付与は可能だが、戦闘中に武器を持ち替えるのは大変というか、危険なような気がする。
「そのあたりはアイテムポーチもあるし大丈夫よ。あ、けどミスリルの武器じゃないから攻撃力は下がるかな?」
ミスリル鉱石は一応アイテムボックスの中にはあるが、さすがに全員分の武器を作るのは難しい。
ミスリル鉱石は貴重品であるから入手するのが大変なのだ。
買えば高いし、そもそも憧れの武器だから人気があるため、市場に出回れば競争になる。
「……とりあえず相性のこともあるし、ルリカとヒカリの分だけを作るよ」
ルリカの疾風とは相性が良さそうだし、ヒカリにしたのは短剣だからミスリル鉱石を使うのが少なくて済む。
逆にセラとカイナを外したのは、セラはもともと魔力量が少ないし、カイナはゴーレムの体を利用しているから魔力が吸収され続けると体を維持することが出来なくなる。
「これって投擲武器には付与しても効果ないの?」
「それも使ってみないと分からないからな」
投擲武器なら衝撃が発生した時に吸収スキルが発動するように設定出来るが、投擲による攻撃は普通に躱されることが多い。
そのため現在投擲武器を使う時は、直接当てるというよりも、近くで爆発を起こしてダメージを与えるか、その爆発などの衝撃で行動を阻害する使い方が主流になっている。
「手間じゃないなら用意してもらっていい? 何にしても選択肢は多い方がいいからさ」
それはルリカの言う通りか。
そもそも付与するのは大した手間ではない。付与する素材さえあれば。
「なら買い物に行くのもいいですね。エリアナ様との食事会で、色々と食材も減っていると思いますし」
……それはクリスの言う通りだ。
食料関係の材料が大きく減っている。
アイテムボックスの中にはそれでも大量の物資が入っているから、困ることはないけど何となく落ち着かない。
それにためにはゆっくり街の中を歩くのも悪くない。
ちょうどエルザたちも予定が空いているとのことだったから、久しぶりにエルザとアルト、シズネたちを誘って買い物に出掛けた。
その際シュンとナオトは留守番をすることになった。
武闘大会から日もかなり経っているけど、二人が外を歩くと結構な頻度で声を掛けてくるから一緒に歩くと対応に追われたりするからだ。
結局その日は日が暮れる前まで買い物を続け、戻ってきたら早速俺は投擲ナイフに付与をする作業に取り掛かった。
付与する武器は吸収の他、使用して減っていた他の分も作った。
「これが火魔法を付与したナイフで、こっちが風、それでこれが吸収な……」
付与した種類ごとに色分けしてあるから間違えることはないが、渡す時に説明する。
「ありがとうね。それじゃ今日は明日に備えて、早めに休みましょう」
明日は七三階に入ることになるが、果たしてレベルいくつのヘルハンドが出てくるか……。
とりあえず戦い方はクリスの風の精霊魔法を使った方法でいくことに決めて、ルリカの言う通り早めに休むことにした。
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