第583話 フォルスダンジョン・15
「それじゃ気を付けてね!」
エリアナとカロトスに見送られながら、俺たちはフォルスへと戻った。
結局エリアナのところで三日過ごしたため、フォルスに戻ると既にナオトたちも町に戻っていた。
「それで何で頭を抱えているんだ?」
「予想以上に薬草の採取が難しくてな」
ナオトの言葉にルリカたちが頷いている。
俺の場合は鑑定で判断しているから、結局特徴とか見ないで判断しているからな。
いや、鑑定なくても採取は出来るよ? 記憶のスキルがあるし。って、結局スキルだよりになるわけだけど。
「けどあれはあれで楽しかったかな? 外で料理するのは大変だったけど」
あれを毎日やるのは大変だけど、たまにならいいみたいだ。
町の外で過ごすと見張りとかの問題もあるからな。
魔物除けのアイテムもあるし、コトリが精霊魔法で警戒をしてくれるから、普通の人たちよりはゆっくり休むことが出来るとは言っていたけど。
町に戻ってきた翌日。俺たちは早速ダンジョンに向かった。
ナオトたちも今日はダンジョンに行くということで途中まで一緒だ。
その後別れて俺たちは七一階へ。入る前にどう行動するかの確認をする。
一応かなりの量の投擲武器を用意したが、三分の一まで減ったら教えて欲しいと頼んである。
一回の戦闘でそれだけ消費するとなると、この先のことを考える必要があるからな。
「それじゃ行くぞ」
俺を先頭にダンジョンの中に入っていく。
横に並ぶのはカイナだ。
まずは俺たち二人が前に出て、次にヒカリ、ルリカ、セラが並び最後列にミアとクリスだ。
突破されたり後衛が狙われた場合は、俺の転移か、ルリカの疾風スキルでカバーすることになっている。
俺たちが全員が中に入ると、しばらくして目の前の空間にヘルハウンドが出現した。
大柄の黒い犬ということだったが、大きさでいうと軽トラックぐらいか?
あんなのに突進されたらどれだけの衝撃があるんだ。
一応盾には吸収を付与してあるからいくらかは緩和されるはずだけど、ゼロにすることは出来ないからな。
そんなことを考えながら鑑定したが、離れているみたいで失敗した。
転移で目の前まで飛んで鑑定して即撤退も考えたが、それだとⅯPの消費が多過ぎるし、接近した時のどのような行動を取るか分からないから初手は不用意に近付けない。
俺は頭を切り替えて魔法を唱えた。
使うのは複合魔法のサンダーだ。
俺の最初の一発は速度重視で、ルリカたちの投擲用の武器は火力重視のものを使う。ヒカリも短剣を振るい複数の斬撃を飛ばす。
魔法が当たり、投擲武器もヘルハウンドに直撃した。
爆炎が上がり、それを斬り裂くように斬撃が吸い込まれていく。
そしてそれに続くようにクリスの精霊魔法が放たれる。
炎の精霊魔法はヘルハンドのいた空間を包み込み、その範囲を徐々に狭めていく。それは炎で標的を圧し潰すように見えた。
最後ヘルハンドほどの大きさにまで炎がなると、そこで一気に爆発した。
爆風が俺たちの方まで届くが、それをオーラシールドで防ぐ。
魔法に関しては既にクリスから説明を受けていたから、対処済みだ。
俺はそれとは別に、目を凝らし、気配察知や魔力察知を使いながら目の前に集中する。
回避行動を取らなかったのか、それとも取れなかったのかは分からないが、ヘルハウンドの反応はまだ残っている。
いや、魔力の高まりを一瞬感じたと思ったら、数が増えた!
「来るぞ!」
俺の言葉とともに、三体のヘルハウンドが爆煙の中から飛び出してきた。
俺は姿が見えると同時に、三体のヘルハウンドに挑発を使い、さらに鑑定を使った。
三体ともレベルが63だった。
ただそのうちの一体が明らかに傷を負っていた。
最初の魔法で受けもの? するとあれが本体?
部屋の奥はまだ爆炎に包まれているため完全に見通せないが、少なくとも奥に反応はない。
三体の魔物が俺に殺到するが、そのうちの一体をセラが、もう一体をヒカリとルリカが攻撃して対峙した。
残った本体らしきものは俺に体当たりを仕掛けてきたが、俺はそれを盾で防いだ。
吸収のお陰か、見た目ほどの衝撃を受けずに十分耐えることが出来た。
俺は相手の体が止まった隙に反撃したが、刀身が当たる瞬間、その部位に魔力が集中するのが分かった。
そのせいか、ミスリルの剣で捉えたのに倒すには至らなかった。
でも完全に防ぐことは出来なかったようで、ヘルハウンドは間合いを取るように後退した。斬った場所から血が流れ落ちるのが見えた。
もっとも後退したといっても逃げるだけじゃなかった。
後退しながら口周りに魔力の高まりを感じた次の瞬間、ヘルハウンドが吠えた。
それは魔力を乗せた咆哮。
威圧に似ているが、物理的な痛みも覚えた。魔力の塊をぶつけられたような感じ?
しかも属性魔法と無色透明だから目に見えない。
もっとも攻撃の予備動作があったから備えることは出来た。俺の場合は魔力の動きも察知出来たからな。
ただ俺は耐えるだけの余裕はあったが、実際の威力はもっと高いはずだ。
オーラシールドで防いでいるにもかかわらず、痛みを感じているわけだから。
俺は目の前のヘルハウンドに集中しながら、どうやって戦えばいいかを並列思考を使って考えた。
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