第581話 お食事会
ダンジョンを出たあとは、まずは資料室に俺とクリスの二人が向かい、ルリカたちは一度戻った。
サイフォンたちに会ったら一度竜王国に行くことを伝えてもらうのと、食材の買い出しだ。
エリアナのために料理を色々作るのと、あとは俺たちでなかなか作るのが難しいスイーツを購入するためだ。
「私のせいで攻略が止まってしまい……」
とカイナは気にしていたけど、カイナがいたからクリスが守られたことを思えば感謝しかない。
それは俺だけでなく、皆の共通する思いだった。
ダンジョン内で死んでも生き返ることは可能だけど、ショック死するほどの痛みに襲われるという話だから。
それを防ぐためにも予習は大事。先人の残してくれた情報に感謝だ。
資料室で確認するのはまずは七一階から出る魔物だ。
魔物の名前はヘルハウンド。真っ暗な毛に覆われた犬型の魔物で、タイガーウルフの二倍以上の体躯をしている大型の犬型の魔物らしい。
そして七一階からの特徴の一つが、出る魔物はまずは一体だけ。
七一から七五まではヘルハウンドが出るのだが、その強さが入場するごとに変わる。いわゆるランダムでその都度強さが変わるみたいだ。
なかでも一番厄介なのが、七五階で出るものよりも、七一階で出るヘルハウンドの方が強い場合がある点だ。
レベルがいくつかは分かっていないから、とりあえず鑑定するしかない。分析もあるし大丈夫だと思うが、そこは使ってみないと分からない。
あとはそのレベルを基準に判断していけばいいだろう。
もう一つの特徴が、出現した魔物には取り巻きを召喚する能力があるという点だ。
これは過去に検証された記録が残っていて、召喚には回数制限があり、召喚を繰り返すごとに元の個体が弱体化することが分かっている。
それこそ召喚された取り巻きを倒し続けた結果、元の個体がウルフ並の弱さになったという記録が残されていた。
ただし召喚されるのは同一個体のようで、元の個体がヘルハウンドなら召喚されるのもヘルハウンドになるようだ。
ちなみに召喚される個体の強さは、元の個体の強さが反映されているようだと、資料には記載されている。
二つの設定は、七一階から九九階まで同じようだ。
「長期戦を覚悟すれば意外と倒しやすいのか?」
「どうでしょうか? 召喚する間隔に関することが書いてないのが気になりますし……元の個体の強さによっては連続して召喚されると大変になるかもしれません」
それはクリスの言う通りだ。
それに読み進めていくと、召喚される個体数は一体から一〇体の間からランダムで決定するとある。
この時一〇体召喚されたからといって、一〇体分弱体化するわけでもないようだというコメントがついてあった。
ここも鑑定で確認出来たら確認して、俺たちも出来れば資料に役立つ情報を残せたらいいなと思う。
「初見の魔物は様子見をしたいところだけど、そうもいかないか」
「はい。とりあえず分かっていることを覚えて、皆にも話しておきましょう」
クリスの言葉に頷き、俺はヘルハウンドに関する資料全てに目を通すと、ヒカリたちと合流するため町の方に出て行った。
居場所はMAPを使えば分かるから、こういう時便利だ。
合流後はアルテアに早速飛んでエリアナの元を訪れた。
「どこをほっつき歩いていたのよ!」
とカロトスは怒られていた。
連れ回した俺たちに責任があるような気がするが……カロトスは大人な対応している。
というか手慣れている。
もしかしたらまだ向こうの世界にいた時には、このようなやりとりを何度もしていたのかもしれない。
カロトスが相手をしてくれている間に、とりあえず料理をするか。
「主、肉は任せる」
自信満々に言うヒカリに、
「味付けする時は俺かミア、クリスに一声かけてくれな」
と伝える。
焼き加減に関しては一番上手いと思っているからそこは心配していない。
ヒカリは頷くと、材料を要求してきた。
早速キングミノタウロスの肉に挑戦するのか。
一応エルザやアルト、コトリたちにも食べてもらうため残すようだ。
他にもミノタウロスなど、肉はたくさんあるからな。
クリスはルリカと一緒にスープを作るみたいだ。
ミアとセラは炒め物を作るみたいだから俺はピザを作ることにした。
エリアナに断って石窯を作ると、早速生地を作る。
材料はミアとセラがカットしてくれるから俺は殆ど生地を用意する作業だ。
「主、調味料が欲しい」
「どれを使う?」
「キングは塩コショウ。他は色々試す」
今回はシンプルな味付けにして、実際に食べて最適な調味料を導き出すらしい。
色々考えているな。
そろそろ頃合いだと思いピザを焼き出すと、カロトスに色々話し掛けていたエリアナがやってきた。
目の前で作られている料理の数々に目を輝かせている。
「こ、こんなに食べられるかな?」
と喉を鳴らしているけど無理だと思う。
そもそも俺たちだけでも無理だ。
アイテムボックスへ保存する用も同時に作っているからな。
「どう、どう? もう食べていい?」
催促してくるエリアナを待たせながら、最後の仕上げをする。
食べる分をお皿に全て盛ると、エリアナを見て頷いた。
「食べるわよ!」
エリアナのその一声で、料理が始まった。
もともと食事を摂っていなかったエリアナがピザに齧り付いた。
「……これがご飯かー……うん、美味しい!」
そして順番に料理を食べていき、満足そうに頷いていた。
それを見た俺たちも、旅で見聞きしたことを話しながら食事を楽しんだ。
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