第579話 フォルスダンジョン・13

 今日はナオトたちは外に薬草採取に出掛けるということで見送った。

 万が一に備えてエルザとアルトにはシールドが付与された腕輪を渡しておいた。

 ナオトたちから聞いた話だと二泊三日の旅らしい。

 行は途中まで乗合馬車で進み、途中で降ろしてもらうと言っていた。


「戻ったらそれでポーションをつくってもらえるか?」


 と頼まれたから頷いておいた。

 もっともそれは納品した後に残った場合みたいだけど。


「馬車で行くけどどうするんだ?」

「馬車を用意した」


 アルゴに聞いたらそんな返事が返ってきた。

 それを聞いたサイフォンが苦笑して、


「俺たちが送るんだよ」


 と言ってきた。

 馬車移動は便利ではあるけど、場所によっては進めない場所も多いからな。

 今回行く採取場所は森の中に入るという話だし。

 その場合馬車は森の外に待機させる必要があるから、自前で用意するとなると見張りが必要になってくるからね。

 そして今度はアルゴとサイフォンたちを見送り、俺たちはダンジョンへと足を向けた。



 六九階まではミノタウロスと戦っていたが、七〇階にはボスとしてキングミノタウロスが追加で出る。

 上位種が存在すると今までは単体で好き勝手襲ってきた魔物がその指揮下に入るため、より高度な連携をとって戦い始める。

 指揮をする上位種を倒せれば後の戦闘が楽になるけど、それはやはり難しい。手下を盾に使ったりしてくるから。

 今回俺たちの戦う方法は正攻法。ミノタウロスを倒していき、最後にキングミノタウロスを倒す。

 ダンジョンに入った段階ではミノタウロス一〇体にキングミノタウロス一体の組み合わせで、時間が経過するごとにミノタウロスが追加されていく。

 ただし上限は五〇体だから、そこまで倒せばもう出てこない。

 それは今までと変わらない。

 戦い方は実にシンプルで、俺とカイナが敵を引き付けている間にヒカリたちが倒していくというものだ。

 ルリカたちは交代でスキルを使って数を減らしていき、合間にクリスが範囲魔法を放って殲滅したりしてキングミノタウロス一体になる状況を作った。

 途中でミノタウロスを全て倒した時もあったけど、無理に突っ込んだりしないでミノタウロスを五〇体片付けることをまずは心掛けた。

 結果。六九階までの戦闘よりも時間はかかったが、無事ミノタウロス五〇体を倒すことが出来た。

 時間がかかったのキングミノタウロスの指示や、遠距離からの援護があったからだ。

 倒されたミノタウロスが使っていた武器による投擲は速度も威力もタイミングも厄介だったが、二回目からは挑発で俺を狙うように誘導したため、ヒカリたちが狙われることはなかった。

 ただ俺も最初の一撃は盾で受け止めたけど、二度目以降は転移のスキルで避けることを選択した。

 ミノタウロスと戦っている時はミノタウロスを盾に使う時もあった。



「いよいよね」


 ルリカの言葉に皆頷く。

 消費したMPやSPは既にポーションで回復している。

 盾を持つ俺が前面に立つけど、まともに盾で受け止めるかは分からない。

 投擲でさえあの威力だ。

 間違いなく振るわれる武器の威力は凄まじいと思う。

 キングミノタウロスが持つ武器は両刃の斧だ。セラの持つ者の二倍以上の大きさだ。

 まずはルリカたちが投擲武器で攻撃を仕掛けた。

 魔法が付与された武器は、キングミノタウロスの周囲で爆発を起こす。

 斧で撃ち落としたものがあれば、躱されたものもある。

 けどいくつかは着弾して爆発を起こしたものもあった。

 爆煙が消えてその姿を認めたけど……無傷だ。

 ダンジョンでは素材は宝箱で入手するから、素材の損傷を気にしないで攻撃出来るため限界まで威力をあげている。

 それなのに無傷か……。

 攻撃が当たる瞬間キングミノタウロスの表皮を魔力が覆っていた。

 強化したんだと思う。

 これは厄介だ。

 防御にそれを使えると言うことは、攻撃にも使えることが出来るということ。

 もしかしたら投擲していた時も武器に魔力を流していたかもしれない。

 俺は魔力察知を使った。

 強い魔力反応……その大きさはクリスを越している。

 ここまで魔法を一切使っていないから魔法による攻撃はないと思うけど、その分物理攻撃と防御に全て利用しているということか。

 キングミノタウロスが咆哮を上げて、睨みつけてきた。

 俺が挑発を使えば真っ直ぐ突進してくる。速い。

 大きな岩が近付いて来るような圧迫感。

 俺の目の前に来た時は既に斧を振り上げていて無駄な動作が一切ない。敵ながら惚れ惚れする洗練された動きだ。

 俺は盾を構えて盾術を使用する。

 斧が振り下ろされて盾に激突した瞬間、盾の角度を変えてその攻撃を受け流す。

 力を逃がしたはずなのに衝撃が盾を通して腕にも伝わってきた。

 まともに受け止めていたら間違いなく吹き飛ばされていた。

 ギロリと睨む視線を受けて、すぐ次がくるのを感じた。

 その予想は間違っていなく、キングミノタウロスは軽々と斧を振り回して打ち付けてくる。

 一見すると無茶苦茶に振り下ろしてきているように見えるけど、微妙に力加減を変えて、さらに俺が受け流しずらいように角度を変えて攻撃してきている。

 俺は間合いを嫌って離れようとしたけど、一歩が大きくすぐに詰められる。

 この攻撃が続くとさすがに辛いな、と思いつつ視線を動かせば、キングミノタウロスの死角である背後から攻撃をするルリカたちの姿が映った。

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