第578話 フォルスダンジョン・12
ダンジョン攻略の再開は、体を慣らしていくのともう一つ、武器を手に馴染ませるという目的があった。
錬金術で作っているし、記憶スキルで形や重さを同じにしてあるけど、実際に使うと違いがあるかもしれない。
少なくとも切れ味と魔力の流し易さは変わっているはずだ。
特に後者は魔力の消費具合を知ることで、使える回数や維持する時間が変わってくるからね。
あとはヒカリとルリカならスキルとの相性を確かめる必要がある。
もっとも低層だとあまり効果の恩恵はないみたいだったけど。
それでも地道に一〇階、二〇階、三〇階と予定通り登って行く。
俺も剣を振るって倒していくと、切れ味が良すぎて斬った時に手に衝撃がないから変な感じだ。
目を瞑って斬っていたら本当に当たっているのか不安になる。
しかも魔力を流さなくても抵抗なく斬れる。
そして六六階で盾持ちのミノタウロスたちと戦ったけど、武器に魔力を流してソードスラッシュなどの攻撃系のスキルを乗せると防具を破壊して攻撃が通ることが分かった。
さすがに何もしないまま斬ると一度では破壊することは出来ないけど、それでも同じ個所を狙って攻撃するを繰り返すと、破壊することが出来ことが分かった。
「ヒカリ、調子はどうだ?」
「うん、凄くいい」
ヒカリは斬撃スキルの威力が上がっているようで、満足して頷いている。
どうやら武器の性能が上がることで斬撃の威力も上がっているようで、魔力をさらに溜めやすくなったことで、魔力を通しながら斬撃スキルを使うと盾を真っ二つにしていた。
セラ、ルリカ、カイナの三人も概ね満足しているようだったため、その日は六八階までそのまま登り帰ることになった。
「お、ソラたちも今帰りか?」
受付まで戻って来ると、ちょうどサイフォンたちと会った。
サイフォンたちもダンジョン帰りのようだ。
サイフォンたちはこっちに戻って来てからは、パーティーごとダンジョンを登っている。
もっともサイフォンとアルゴのパーティーは上を目指しているというよりもお目当ての階まで到着すると同じ階を何度も周回している感じだ。
「欲しい素材があるんだよな」
とサイフォンたちは言っていた。
確かに魔物の素材持ち込みで武器や防具を作ってもらうというのはある。
実際ギルドには素材の買取や交換希望の札が張り出されている。
特に上位種の魔物の素材は貴重だからね。
ここのダンジョンではなく別のダンジョンや、野良で遭遇すれば確実に手に入る素材も、ここでは運要素が高い。
もっともその魔物に遭遇することが大変だから、ドロップガチャにかけるのは決して悪いことじゃないと思う。
四〇階以下ならそれなりに活動している人も多いから、入手する人も稀にだけどいるからね。
ただその人たちがお金目的ではなくて欲しい素材を狙っていると、どうしても交換による取引が増えるから、物々交換が主流になっているような気がする。
お金で売買している人たちは総じて割高になっているというのもある。
ちなみにサイフォンたちはウインドウルフの素材らしい。
ユーノのローブを作るために是非欲しいということだ。
ナオトたちもダンジョンに登り出したけど、こっちはさらにのんびり攻略している。
これはシズネが合流し、エルザとアルトも一緒に行っているのが関係している。
あとは一攫千金を狙う冒険者が多いなか、ナオトたちはそれ程お金に困っていないと言う懐事情もあるようだ。
他にも今後はダンジョンに通い詰めをしないで、採取依頼を受けようとも話していた。
エルザたちも一緒についていくみたいでちょっと心配だけど、ナオトたちは冒険者ランクこそまだ低いけど、間違いなく上位に入る強さだからな。
問題は盗賊などに気を付けて欲しいというところか?
もっとも外に出る時はアルゴたちが密かについていくようなことを言っていた。
それなら一緒に行けばいいのにと思ったけど、
「いつまでも過保護じゃいけないからな。それに俺たちがいると心の緩みというか、緊張感が足りないんだよ」
とか言っていたけど、隠れてついていく時点で十分過保護だと思う。
ナオトたちは戦闘寄りの職業ばかりだから、本当は斥候が出来るような人がいれば安定すると思うんだけどね。神聖魔法の使い手の魔法の使い手二人がいる時点で、それだけで羨ましがられるだろうけど。
かといって知らない人を仲間に入れるなんてことはないだろうし、その辺りは訓練するしかないのかな?
別にこの世界の人も探索系のスキルを持っていなくても斥候をしている人はいるからね。例えば地面や木の傷などから魔物の足跡を調べるとか。
その辺りは経験を積むしかない。
それを考えるとウォーキングスキルの恩恵で色々なスキルを習得出来る俺は恵まれているよな。
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