第574話 解呪・1
とりあえず結界の構築に成功したため、俺たちはミアの様子を見に行った。
ミアはあてがわれた建物の中にいて、その傍らにはヒカリとミハル、シュンが座っている。
解呪が終わったのか、今は巨人の姿が見えない。
近付くとミアは難しい顔をしていた。
「どうしたんだ?」
「あ、ソラ。リカバリーを使っているんだけど、どうも手応えがないというか……治っているような気がしないの。ソラは鑑定で相手の状態を見ることが出来るよね?」
言われてここに来てから鑑定を使っていないことに気付いた。
「ちょっと試してみるか……」
「ならもう一人呼んで……」
「あ、僕が行って来るよ」
ミアが村人を呼びに行こうと立ち上がろうとすると、シュンが呼びに外に出て行ってしまった。
うん、なんか張り切っているように見えるけど何かあったのか?
程なくしてシュンは巨人を二人連れて戻って来たから、俺はわざわざ来てくれたことに礼を言って鑑定を使った。
鑑定では分からなかったが、解析でさらに調べたら「妖精の呪い」という表示が出てきた。
「呪い表示が出てきたよ」
「ありがとう。ならリカバリーを使ってみるよ」
ミアがそう言ってリカバリーを唱えると、巨人の体は光に包まれて、程なくして消えた。
再度鑑定を使えば、「妖精の呪い」という表示は消えていた。
続いてミハルがもう一人の方にリカバリーを使ったが、そっちは呪い表示は消えなかった。
それを伝えるとミハルは肩を落として落ち込み、シュンが一生懸命慰めている。
ミアがそれを受けてリカバリーを唱えれば、呪い表示が消えた。
しかし当のミアは眉間に皺を寄せている。
「どうしんたんだ?」
「やっぱ治った感じがしないの。上手く説明出来ないんだけど、なんとなくそう感じるのよ」
再度尋ねたらミアはそう言った。
「その感覚大事。主、本当に治ってる?」
ヒカリに言われてもう一度鑑定したけど結果は変わらない。
「妖精の呪いはしつこい。様子見た方がいい。ミアの勘はきっと正しい」
俺たちのやり取りを聞いていたカイナのその言葉で、様子を見ることにした。
とりあえず長老にはそのことを伝えて様子を見ることにした。
その時時間がかかるかもしれないということで、ライトたち村の人たちや、アルゴたちが一度村に戻れないか交渉した。
あまりに遅いとリュリュあたりが痺れを切らしてくるという可能性もあるし、何をしているか伝えることが出来れば、安心してくれると思ったからだ。
どちらにしろ何をしているかの報告は必要だと思ったから相談したが、最初は長老たちも難色を示していた。
外部に村の存在が伝わるのが不安に思っているのはその態度から伝わってきた。
最終的にカイナが説得してくれたことと、結界を張ったことが認められて話が通った。
「分かった。リュリュにはそう伝える」
俺たちは治療のためもう少しこちらに滞在することを、ライトからリュリュに伝えてもらうように頼んだ。
あとはこちらには近付かないようにというのも念を押した。
ライトたちが村から出る間。村の人たちには家の中に留まっておいてもらうように頼んだため、今は村の中が静かだ。
先行してフクスト村に帰るのは、ライトたち獣人と、アルゴパーティーに、ナオトにカエデだ。
ゴブリンの嘆きの人たちに残ってもらったのは、呪いの解除がしっかり出来たかの確認要員として全員残ってもらうことになった。
窮屈な生活を強いることになってしまうが、サイフォンたちは快く引き受けてくれた。
シュンが残るのはミハルが残ると言ったからで、コトリが残ると言ったのは、ナオトとカエデを二人きりにしてあげたいからと言っていた。
「それでもし時間が経って呪いになったらどうするんだ?」
「リカバリーの効果を強化するものを作ろうと思うの。と言ってもソラに作ってもらうことになると思うけど」
ミアの説明に耳を傾けながら、俺は錬金術や創造のリストを確認する。
一部の消耗品はミアにも作ってもらう必要があるな。聖水とか。結構大量にいるからミハルにも手伝ってもらわないといけなさそうだ。
あ、けど月桂樹の実とか欲しいな……アルテアに行ってもらいに行かないとだけど今度はヒカリを連れていった方がいいかな?
悩んだ末に転移用の魔道具をルリカに預けて、俺たちは一度アルテアに行くことにした。
同行するのは俺にヒカリとシュンたちの三人だ。
一度見て見たいと言われたからだ。
月桂樹の実の在庫があればいいけど、なければ採りに行かないといけないけど大丈夫だろう。
一人で歩いて行ってもいいし、転移で飛ぶのもいいし、ゴーレム馬車で駆け抜けてもいい。
ダンジョンに入れるヒカリはたぶんサークに捕まるから身動きが出来なくなるだろうしね。
かといってミアは動けないし、クリスたちもついてくるとなると自由に動けないサイフォンたちが大変になるからね。
すぐに帰ってくる予定ではあるけど。
「それじゃ留守の間頼むよ」
「うん。ヒカリちゃん、ソラのことお願いね」
「任せる」
ミアたちの間では信頼度はヒカリの方が上らしい。
俺たちはミアたちに後を任せて、アルテアへと転移した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます