第571話 合流

 状況を説明すると、


「先に行く!」


 と言ってヒカリとカイナ、シュンの三人が先行することになった。

 本来なら俺も一緒に行きたいところだが、周辺に魔物がいないとはいえ、ミアたちを置いていくわけにはいかない。

 俺はゴーレムに戻ってくるように念話で指示を出すと、速足で急ぐ。

 本気で駆け出したヒカリたちの背中がどんどん小さくなっていく。

 ミアやクリスたちも決して遅くはないけど、さすがにヒカリには追い付けない。

 特に森の中では木の根や枝葉が邪魔をして、さらに死角からの襲撃を警戒しないといけないから、本来ならあのように走ることは無理だ。

 俺の場合は気配察知や並列思考など、スキルを色々併用してやっと出来るレベルだ。

 それを何事もなくこなして進むヒカリがある意味凄すぎる。

 ヒカリの場合瞬時にどこを走ればいいかを判断している。

 俺を先頭に黙々と森の中を駆け抜けていくと、静まり返った森の中で俺たちの息遣いだけが聞こえてくる。

 時間の経過とともに背後からの聞こえる音が大きく乱れてくる。

 そろそろ体力の限界か? というタイミングでゴーレムと合流出来たから、そこからは速度を上げていく。

 俺が一人走って、ミアとクリスの二人はゴーレムに騎乗する。

 さらにゴーレムが先行し、俺が後に続く形に隊列が変更される。

 ただこの時点で、巨人たちと魔物の距離はかなり詰まっている。

 既に目視で確認出来ていると思う。

 先行したヒカリたちもだいぶ近付いているけど間に合わない。

 やがてMAP上では巨人と魔物の反応が入り乱れている。

 俺は走りながら並列思考を使ってそれを見ていた。

 MAP上では魔力反応が小さくなったかと思ったら復活するを繰り返している。

 これでは体力が消耗され続けるだけだ。

 俺たちが合流出来れば、特にミアがいればアンデッドをすぐに片付けることが出来るのに……。

 もどかしく思いながらも、物理的な距離はどうしても埋めることは出来ない。

 ここが平野など視界良好なら転移を使っての移動も出来るのに、それも出来ない。

 こんなことなら転移用の魔道具をゴーレムに持たせて走らせば良かったと思ったが今更言っても仕方ない。


「ソラ、大丈夫?」


 後悔していたのが顔に出ていたのか、それとも走っていて疲れている様に見えたのか、後ろを振り向いたミアに心配されてしまった。


「大丈夫だよ。それよりも……」


 俺はチラリとMAPを見た。

 戦況が大きく変わっていた。

 MAPからの場だけだったが、攻防が始まった当初は巨人たちの動きが活発だった。忙しく動いている表示が多く見受けられた。

 それが変わったのはアンデッド側の小さくなった反応の復活だ。

 それから徐々に巨人たちが押され始めたが、今は盛り返していた。

 その理由は新たに参戦した反応のお陰だ。

 まず二つはヒカリとカイナ、シュンのものだ。

 三人の武器にはミアによる聖属性が付与されているから、アンデッド相手にはかなり有利に戦いを進められる。

 他にも俺が属性付与した投擲ナイフも所持しているから、それによって数を減らしている。

 またもう一つは、村の方から新たに現れた反応だ。

 その二つの反応には見覚えがある。

 ルリカとセラ、そしてナオトたちのものだ。

 この二人も属性が付与された投擲武器を持っているし、聖女のミハルもいる。

 そのせいか物凄い勢いで押し返している。

 アンデッドが消失すると、数の優位が奪われた魔物たちは徐々にその勢いをなくして、やがて全ての反応が消え去った。

 それは俺たちが到着する一時間前のことだった。


「あ、主」

「終わったようだな」

「うん、余裕」


 ヒカリは胸を反らして言ってきた。

 カリナはというと、巨人たちに囲まれている?

 ただ険悪な雰囲気というわけではなく、巨人たちが戸惑っているようにも見える。

 シュンは……何故か肩を落としている。

 ナオトがその傍らで何やら話している。


「どうしたんだあれ?」

「たぶん、カリナの姿が村にあった石像に似ているからだと思う。あとシュンは……放っておいてやった方がいいかな?」


 そう答えたのはルリカだった。


「良かった。ルリカちゃん、無事だったんだね」


 ヒカリから捕まっているけど、酷いことをされていないとは聞いていたけど、やはり元気な姿を見るとホッとする。

 それはクリスも同じだったようだ。

 駆け寄って来て無事を喜んでいる。


「ミア、また聖水を作って欲しいさ」


 もう一人の仲間セラの方は、戦いで使った消耗品をまた作って欲しいと頼んでいる。

 それにはミアも苦笑している。

 たぶんセラは物資の重要性を理解しているからだと思う。

 その辺りは昔奴隷として戦っていた時に苦労した経験があるからだと思う。

 そして無事を確認していたら、一人の巨人がこっちに近付いて来た。


「小さき者よ。彼の者たちが言っていた仲間か?」

「うん、そう」


 巨人はキトスと名乗った。


「……何ともないか?」


 と続けて聞いてきた。

 たぶん呪いの影響がないかを聞いてきたんだと思う。

 俺は巨人たちを改めて見るが、特に増悪を感じるようなことはない。

 それはクリスもミアも、カイナも同じようだった。もちろんシュンも。

 俺がそれを答えると、


「分かった。村に案内する」


 とキトスはは踵を返すと、仲間たちに声を掛けていた。


 

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