第570話 同行
アルテアに転移して、ダンジョンの一〇階に向かった。
城でサークと会ったら、ヒカリはどうしたと叫んできたけど、サハナによって沈黙させられていた。
いつも通りだ。
というか一応王様になる教育を受け始めたということを聞いたけど、あまり成長が見られない。ヒカリが絡んでいるからか?
ユイニは相変わらず落ち着いていた。見習って欲しい。
俺はユイニに来訪理由を話してお城にあるダンジョン一〇階に移動した。
そこでも一悶着あった。
カロトスに巨人のことを話して同行を頼んだらエリアナが羨ましがって大変だった。
ついて行くと言われてもエリアナを連れて行くことは不可能だ。
とりあえず次来る時は皆を連れてきて、そこでご馳走を振る舞うという約束をすることになった。
元々長い時を一人で過ごしていたけど、近頃はカロトスがいるし、俺たちと接したことで誰かと一緒に過ごす楽しさを思い出して一人は寂しく感じているようだ。
「早く戻ってきてよね!}
と何度も念を押してきた。
俺の腕輪に憑依したカロトスは、目的に到着したら呼んでと言って眠りについた。
それが終わるとそのままフクスト村に転移して戻った。
フクスト村に戻ると、ミアたちが既に準備を終えて待っていた。
シュンとリュリュへの説明も終わったようで、シュンは旅支度を既に終えていた。
「ヒカリは体調はどうだ?」
「お腹一杯。大丈夫。すぐ行く!」
一日休んだ方がいいかとも思ったけど、ヒカリの体力は回復しているようだった。
最悪疲れるようだったら俺が背負って行けばいいか?
「リュリュ、それじゃ行くけど留守番を頼んだ」
俺の言葉にリュリュは不承不承頷いた。
やはり村の知り合いが捕まっているともなれば気になって仕方ないのだろう。
呪いの件もあるけど、事情を知っている者が残るのは必要だ。
大丈夫だとは思うけど、万が一俺たちが戻らなかった場合は対処する必要があるからだ。
一応期日を決めて、その間に俺たちが戻らなかったら獣王に報告して欲しいと頼んである。
俺たちはリュリュに見送られて、まだ日が昇る前にフクスト村を出発した。
「本当にこの辺りには魔物がいないな」
MAPで確認したけど魔物の反応はない。
だから俺たちはヒカリの案内のもと巨人たちの住まう村を目指す。
その途中でヒカリから巨人についての話を聞いた。
特にカイナはジッとヒカリの言葉に耳を傾けていた。
村を発って三日後。お昼過ぎにMAPに初めて魔物の反応を見つけた。
魔物はゆっくりとある方向へ向けて進んでいる。
その先には別の反応がある。
俺はだいたいの距離をヒカリに伝えると、魔物が向かっている場所が件の村だということが分かった。
距離的に追い付くのは難しいか?
夜通し歩けば、いや、魔物の移動速度次第か。
とにかく俺たちは歩く速度を少し上げるが、無理はしないで進むことにした。
無理をして追い付いても、疲れていたら俺たちが返り討ちに遭うことだってありえる。
MAPに表示されている魔物の反応は大きい。魔力察知も使ったが、魔力反応の強い個体もいるからだ。
ただ俺たちが急がない代わりにゴーレムを先行させることにした。
犬型のゴーレムを呼び出すと、指示を出して走らせた。
これで何の魔物か分かれば、その時にどうするか決めればいい。
カイナの話によると巨人族は魔法を使える者が少ないということで、物理攻撃に強い魔物だと苦戦するかもということを聞いたからだ。
「主どう?」
「……まだ動き続けているな」
驚いたことに、日が暮れて野営の準備を俺たちがしている間も、魔物の方は動き続けていた。
気のせいか昼間よりも夜の方が移動速度も上がっている。
それでも魔物だって生物に変わりはない。
ずっと動き続けることは出来ないはずだ。
そう思い食事を摂り、交代して見張りに立った。
その間MAPを確認したら、夜明け前にやっと魔物が動きを止めた。
その後俺たちは朝食を摂って移動を開始し、魔物が動き始めたのは俺たちがそろそろ早い昼食を摂ろうと思った頃だった。
やはり夜に比べて移動速度は遅い。
ただゴーレムが追い付くのは予定よりも少し遅れるかもしれない。
俺は昼の移動速度を見て計算していたからだ。
そしてゴーレムが魔物の姿を捉えたのは、ちょうど太陽が昇って、魔物たちの動きが止まった時だった。
俺は早速同調を使って魔物の正体を探った。
そこで見た魔物の正体は……。
「アンデッド?」
そう、その多くがアンデッドだった。
ただ中にはアンデッドに見えない魔物もいる。
俺は見たことをクリスに伝えると、
「……アンデッドを引き連れた魔物……ネクロマンサーがいるかもしれません」
という答えが返ってきた。
「ただそうすると急いだ方がいいかもしれません。ネクロマンサーがいると、アンデッドは何度でも蘇ります。火か光属性、もしくは聖属性の魔法がないと、苦戦するかもしれません」
さらにクリスはそう付け加えた。
俺たちはそれを聞き、さらに移動速度を上げるのだった。
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