第568話 レベル2はどうして出来た?

 手の中から剣が消えると、ダルクは大きく息を吐いた。


「なあ、ソラよ。この剣はソラが最初に見た時からレベルが2じゃったのか?」

「最初は普通のミスリルの剣だったはず。レベルなんてついてなかったから」

「そうなのか?」


 確か最初に鑑定した時はレベルなんてものがついていなかった。

 うん、間違いない。

 レベル2に変化していたのはオークロードを倒した後だったはず。


「ふむ……ではその間に何かあったはずじゃが?」


 俺がオークをはじめオークロードを倒した時のことを思い出せる限り事細かに説明すると、ハイネたちドワーフは驚いていた。

 逆に獣人の子たちの反応は薄い。

 たぶん知識の差だ。

 ハイネたちはオークロードの脅威を知っているのだろう。


「ロードを倒したか……けどそれだけじゃ弱いのう」


 ダルクは首を捻るが、それ以外の出来事は何も思い浮かばない。

 武器のレベルが勝手に上がったというなら別だけど。


「けど師匠。ロードを殺したのが引き金になったとか可能性はないんですか? それとも魔力でしたか? それを流したことで変化したとか?」


 ハイネが聞くが、ダルクは首を横に振った。


「まずロードを倒して変化したかじゃが、もしそうならもっとわしはレベル付きの武器を見てきたはずじゃ。何せわしはロードクラスの魔物を倒したという武器の整備を数多くしたし、わしの打った武器で倒したのも知っておる」


 ダルクが何故そう言い切れるかというと、武器を持ってくる時にそのように報告する冒険者が多いからだ。

 何せ大物を仕留めたともなれば箔がつくから、自慢好きの多い冒険者が吹聴しないわけがない。


「それが嘘だったことはないんですか?」

「それに関しては殆ど事実じゃったな。そもそも確認すればすぐに分かることじゃしのう。ただ一緒に討伐に出掛けたというだけという輩は一定数いたがのう」


 確かにその辺りはギルドや一緒に討伐した人たちに話を聞ければすぐに分かることかもしれない。

 普通に聞けるかどうかは分からないけど、例えば指名依頼をする時にそれとなく相手の実績を聞き出すことは可能かもしれない。

 あとは本人やその知り合いにお酒を飲ますとか? 酔うと口が滑らかになるとか聞いたことがある。

 この辺りはアルゴやサイフォンが情報収集をする時に使う手だって。


「まあ、何にせよロードを倒した程度で上がるなら、もっと数が出回るからその可能性は低いかのう。もちろん倒しても必ず上がるとは限らないかもじゃが、それでもやはり出回っていないことを考えればその可能性は低いじゃろう。むしろ魔力を流して戦ったという方が珍しい気もするがのう……」


 もちろん全ての武器を見たわけじゃないが、とダルクは言った。

 確かにロードを倒すことで武器のレベルが上がるなら、もっと多くの武器のレベルが上がってもおかしくない。

 それこそダンジョンでならロードと戦える機会は多いのだから。

 マジョリカのダンジョンならボス部屋に行けば遭遇する。

 けど魔力を流してか……そっちの方が一般的に珍しいかもしれないが、それなら俺のミスリルの剣やヒカリたちの武器のレベルが上がっていても良さそうだ。

 それとも錬金術で作った武器だからその辺りは適応されないのか?

 俺は今一度当時のことを思い出していた。

 オークロードのロイドは確かに強かった。今冷静に考えたら、そこで命を落としていてもおかしくなかったほどだ。ん? ロイド?


「どうしたのじゃ?」


 俺の態度に何かを感じ取ったのか、ダルクがすかさず聞いてきた。


「いや、そういえばあの時倒したオークロードだけど、名前付きだったのを思い出してさ」

「ネームドモンスターか⁉」


 驚くダルクに、俺は頷いた。

 そうだ。あの時のオークロードには名前が付いていた。

 鑑定したから間違いない。


「なるほど……ネームドモンスターか。もしかしたらそれが条件かもしれんのう」


 分かっていない獣人の子たちに、ダルクがネームドモンスターについて丁寧に教えている。

 特に人の言葉を喋る魔物が出たらすぐに逃げるようにと注意している。


「武器のレベルが上がる理由がそれなら納得じゃな。下手したらロードクラスで尚且つネームドモンスターを倒さないとってこともあるからのう。あとはそれこそ、命を絶つ最後の一撃を入れただけとかのう」


 そうなるとかなり数が絞られそうだ。

 さらにダルクは、業物の武器じゃないと駄目とかの予想を言っているけど、生半可な武器だと攻撃が通らないと思うし、そもそもロードと戦うような者の武器が、鉄の剣なんてことはないだろうしな。


「よし、それじゃそろそろ続きを始めるかのう!」


 すっきりしたのかダルクはやる気に満ちているような気がした。

 俺たちもそれに頷き作業に取り掛かろうとしたけど、そこにミアが息を切らせてやってきた。


「ソラ、ヒカリちゃんが……」


 そして俺たちは、ヒカリがたった一人で村に戻ってきたことを聞かされた。



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