第565話 ルリカ視点・3
私たちは巨人に囲まれて森の中を移動した。
行き先は巨人たちの村だ。
村に入って分かったことは、歓迎されていないということ。
その多くは戸惑いと不安の表情を浮かべている。
キトスたちが事情を話している。
そして私たちが連れて行かれたのは、長がいる建物だった。
「ルリカ姉、あれ」
その途中、ヒカリちゃんに裾を引かれた。
ヒカリちゃんはあるものを指差していた。
それを見てマジョリカダンジョン二五階にある像を思い出した。
似てる。
姿勢は違うけど、顔つきが似ていた。
私たちの視線に気付いたサイフォンさんたちも、その石像を見て首を傾げている。
きっと私たちとの差は、印象の差だ。特に私たちはそこにカイナが封じられていて彼女の魂が解放されていたのを見ていたから良く覚えていたのだ。
「どうした?」
立ち止まった私たちにキトスが声を掛けてきた。
彼の声は普通だが、周囲を囲む巨人の中には苛立ちを見せるものがいた。
「あの像……」
ヒカリちゃんが話そうとしたら、痺れを切らした巨人の急かす様な声に掻き消された。
それを見たキトスはため息を吐き、申し訳なさそうに謝り歩き出した。
私たちもこれ以上刺激するのは良くないと思い素直に従った。
そうして長の家に到着したところで、私たちは二手に分けられた。
キトスたちを見ても何の感情を抱かない私たちと、嫌悪感を示しているアルゴさんたちだ。サイフォンさんたちは自分からアルゴさんたちの方に行き、連れて行かれた。
何かされるか心配になったけど、
「彼らの身の安全は保障する」
というキトスの言葉を信じた。
サイフォンさんたちを連れていった人たちが、皆過激なことを言っていない人たちを選んでくれていたからだ。
「お主たちが外の者か……」
長と紹介された巨人は顔に皺が多く、お爺ちゃんといった感じだった。
動きも遅くてよぼよぼだったけど、眼光は鋭く私たちのことを観察するようにじっくり見てきた。
その隣には若い女性が控えていて、私たちの方を観察するように見ている。
「話は聞いておる。で、だ。本当にお主たちは我らを見て何も感じないのか? この世界の者は我々のことを敵と認識するはずなのだが? もっとも我らも外界の者と接するのはこれが初めてだから、正直その言い伝えが本当かどうかは分からないのだがな」
長は困惑しながら言ってきた。
なるほど。言い伝えがあったけど、それが本当かどうか分からない。
実際に魔物に襲われ、その様子から言い伝えは本当ではと思っていた時に、私たちのように普通に接する人種が現れて確信が持てなくなったというところかな?
ただアルゴさんたちの例もあるから慎重に接してきているのかもしれない。
「一ついいですか?」
そこにカエデさんが言葉を発した。
「可能性ですが、私たち……私たち四人はこの世界の人間ではありません。それが関係しているということはありませんか?」
「この世界の者ではない?」
「はい。私たちは別の世界からこの世界に来ました」
長は迷い人のことは知らないみたいで、首を傾げていた。
そこでどういうことかと説明すると、
「ふむ、その可能性はあるのかもしれない」
と頷いたが、完全に納得出来ていない。
確かにカエデさんたちのことならそれで納得出来る。
そうなると今度は私たちは何故? となる。
そもそもその呪いというのが、全ての人を対象にしていない可能性もある。耐性があるなど。
「うーむ。だがこの呪いは極めて強力なものだという言い伝えなのだがな。何せ神による呪いだという話だし」
「神?」
「うむ、これは我が一族を襲った妖精の神によるものだということをご先祖様から聞いた。巨神様をはじめ抵抗したようだが敵わず、当時の巫女様たちが一部の者を逃したという話だ。その一部の者が我らのご先祖様ということだ」
それって……カロトス様とカイナのこと?
もしかして私たちが無事なのはあの二人が関係している?
こういう考えることはクリス担当なのに……何でここにいないのよ!
「爺ちゃん。カロトスとカイナ知ってる?」
私が心の中で文句を言っていると、ヒカリちゃんが尋ねた。
それを聞いた長の顔色が変わった。
「その名前を何処で? お二人は無事……いや、もしかして外には同胞がいるのか?」
「いない。たぶん」
けどヒカリちゃんは首を振る。
たぶんと言ったのは、もしかしたらここと同じように私たちがまだ行ったことのない場所に、生き残りがいるかもしれないと思ったからかもしれない。
「巨人に関する話は聞いたことがありません。古い文献とかに遥か昔に巨人が存在したことは残っているみたいですが」
これは昔クリスから聞いたことがある。
「私たちがそのカロトス様とカイナの名前を知っているのは、会ったことがあるからです」
困惑する長たちに、私たちはダンジョンでカロトスたちに会ったことを話した。
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