第555話 フクスト村・2
次に案内されたのは村の外周部にある一画の空き地だ。
ライトをはじめ、村を案内してくれた警備隊の面々と、外からの客人ということで興味を惹いたのか、村の子供たちがこの場にはいた。
ライトたちが案内後も残っているのは、俺が土魔法で家を建てると聞いていたからだ。
俺は空き地を見て考える。
普段なら十分な広さだが、今回は総勢二十人を超す。さらに男女でしっかり分ける必要がある。
これが普通の森の中なら何かあった時に対処出来るようにと考えるが、ここは村の中だ。
とりあえず二階建てのものを二軒作ろう。
森を囲っている木は高いから、外周部の近くといっても木の枝が邪魔になることもないしな。
俺は両手を地面につけながら魔力を放出する。
どんな家にするかをイメージしながら土魔法で形を整える。
ふう、時間として五分も経っていないが、魔力を一気に持っていかれた。
大きいうえに内部の作りを少し複雑に……いくつかの部屋に分けたから疲れた。
こっちは女性陣が生活するためなのと、調理場と食事が出来るスペースを作ったからだ。
男性陣の方はもっと簡易に作ろう。
冒険者という職業柄サイフォンたちは大部屋にしてごろ寝でも文句を言いそうにないが……俺たち異世界組に、ゴブリンの嘆き、アルゴたちパーティーの三つに分ければいいか。
マナポーションを飲んですぐに作業に取り掛かってもいいが、別に急ぐことじゃないから、アイテムボックスからシーツなどを出して中の家具を整えていく。
といってもシーツなどの寝具と、料理をするための道具を出すぐらいだけど。
「風呂も作ったのか?」
とアルゴは呆れていたけど、あっても困らないしね。
一応クリスたちに事前にどんな風呂にするか聞いて、薪で風呂を焚けるような形にしてある。
MPが回復したから次は男性陣が住む家だ。
こちらは風呂と寝床だけというシンプルな作りだ。
食事が出来るところを作らなかったのは、アルゴたちやサイフォンが飲まないように……正確には宴会しないようにするためだ。
何だかんだとアルゴたちのパーティーも酒を楽しむ人が多いんだよな。
これはサイフォンがそうだったように、酒の席で情報収集したりする習慣があるからだ。
一応自室で飲む分には構わないけど、酒臭くなったら自分たちで換気してもらおう。今回は窓も作ったからね。
「町の方じゃこんな風に家を建てるのか?」
「そんなことないっすよ。あれは異常っす」
家を建て終えると、そんな声が聞こえてきた。
その二人の周囲でコクコクと頷く多数の人がいるが、気にしないようにしよう。
快適に過ごせることの方が大切なのだから。
それに慣れれば……訓練すれば出来るかも?
俺の場合は色々なスキルを覚えているから、その相乗効果もあるから普通の人がやると難しいか。
魔力量も多いからな。
とりあえず一通りの準備が終わると、女性陣はそのまま料理に取り掛かるようだった。
やることのない俺たちはライトから村周辺の話を聞いた。
一番は出る魔物だが、この辺りはCランク冒険者が受けるような魔物が多く出るようだ。
逆にゴブリンやウルフの魔物はこの辺りでは出ないそうだ。
「人型の魔物だとオーガとかをたまに見掛けたが、近頃は見掛けないな。その影響かスパイダー系とスネイク系との遭遇が増えたが、全体的に魔物の数が減っているようなんだよな」
「魔王がいないくなった影響だとか?」
「……いや、魔王の件はネル様から聞いたが、時期的に合わないな」
「ネル様?」
知らない名前が出たから思わず聞いていた。
すると俺たちの話を聞いていたリュリュが、ライトに代わって教えてくれた。
「ネルは姉ちゃんの後を継いで巫女の職に就いた人っすよ」
「そう言えばリュリュはネル様と仲が良かったな」
「もちろんっす。だから久しぶりに会うのを楽しみにしてきたっす。姉ちゃんにも様子を見て来る様に言われたっす」
そのリュリュの様子を、ライトは目を細めて見ていた。
「それじゃリュリュ、明日はダルクさんの用事が済んでからでいいから、村の皆にも顔を見せてやってくれな」
そう言ってライトは子供たちを連れて戻っていった。
何時の間に仲良くなったのか、ヒカリに手を振って別れの挨拶を交わしている子が多い。
「うん、少し遊んだ」
とヒカリが満足そうに頷いている。
食事を終える頃になると、ちょうど外も暗くなってきた。
クリスがお風呂の用意に立つと、俺たちは追い出されるように自分たちの家へと向かった。
俺も戻ってお風呂の用意をするが、この時アルゴのパーティーの魔法使いの人が手伝ってくれた。
そして順番にお風呂に入り、部屋割りをして眠ることになった。
この時パーティーごとに別れるのかと思ったら違った。
異世界組にガイツが加わり、アルゴとサイフォン他、お酒が好きな人が一緒になって、ジンとギルフォードたち残りが組むことになった。
何故そうなったかはあえて聞かないが、サイフォン、せめてユーノに怒られないようにしてもらいたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます