第546話 武闘大会終わって……
武闘大会が終わった翌日でもフォルスの街は賑わっていた。
ただこれは大会の余韻に浸っているのではなくて、フォルス以外の町、村から来た人たちが帰るためだ。
この武闘大会は、フォルスから遠く離れている村の人たちも参加出来るように、武闘大会に参加する者のいる村には移動費や宿泊費が支給されているそうだ。
もちろん無制限に支給は出来ないため、人数制限はかけているとのことだ。
それもあって武闘大会が終わると、フォルスや他の町で珍しいものを買って帰るのがいつもの光景らしい。
「獣王様って色々考えてるんだね」
このような形にしているのは、埋もれている才能ある者の発掘目的でもあるとリュリュが教えてくれた。
「エンド様の方針は素晴らしいっすけど、全て丸投げっすけどね」
褒めるミアに、リュリュが一言付け加えた。
リュリュの姉である、獣王のお嫁さんや他の家臣の皆が色々調整してくれているそうだ。
それでも実行しているのはただ単に獣王がこの国の頂点に立っているからではなくて、その考えに賛同しているからみたいだ。
「それでどうする? こんなに人が多いと碌に町を回れないと思うよ」
ルリカはそう言うが、チラチラと塔……ダンジョンの方を見ている。
きっと昨日の熱戦もあって身体を動かしたくてうずうずしているんだろう。
それはルリカだけでなくヒカリとセラも同じだけど。
「……少し早いけどお昼を何処かで食べてからダンジョンに行くか。リュリュ、何処かお勧めの料理屋はあるか?」
屋台は一通り回ったと思うけど、お店には殆ど寄っていない。
基本街中で食事をするとなると屋台か、宿に泊まっていたらその宿屋で食べるのが一般的だからな。
「そうっすね。なら色々な料理を選べる場所に行くっすよ」
リュリュはエルザとアルトを見て何処に行くかを決めたようだ。
ちなみにシズネは珍しいことに別行動だった。
断腸の思いといった感じで、二人と離れるのを惜しんでいた。
リュリュが案内してくれた料理屋は、この世界では珍しいバイキング方式のお店だった。
なるほど。色々な料理を味わえるからこの店にしてくれたのか。
これはエルザたちだけでなく普通に俺も嬉しい。
実は新しいスキル、解析を覚えたことで、料理を食べることでその作り方が分かるようになった。
料理スキルでもある程度分かっていたのが、より理解度が上がったというところか?
他にも鑑定や人物鑑定を使った時に、より細かいところまで鑑定することが出来るようになった。
ただ分かっていてもあまり俺はエルザたちにその作り方を教えていない。
どうやら試行錯誤しながら料理を作って行くのが楽しいみたいだ。これはミアも同じで、よく三人で一緒に料理をしている。
「それで午後はどうするっすか?」
「……ダンジョンに行ってみるよ。リュリュはどうする?」
「ならおいらは城の方に戻るっす。エンド様がしっかり休んでいるか確認しないとっすから」
本人はそう言ったあとに「何でおいらが面倒を……」とブツブツ言っているけど、リュリュも振り回されているように見えるが、獣王が言うことを聞く数少ない人材だと教えてもらっていた。
俺たちは途中でリュリュと別れると、宣言通りダンジョンのある塔へと足を運んだ。
すると武闘大会中は閑散としていたダンジョンの入口には、多くの人の姿があった。
そしてその中には見知った顔も多数あった。
「お、ソラじゃねえか。どうしたんだ?」
俺たちに気付いたサイフォンが声を掛けてきた。
続いてアルゴも声を掛けたから物凄く注目された。
たぶん二人が武闘大会の決勝トーナメントで熱戦を繰り広げたからだと思う。
近くには同じパーティーメンバーのガイツもいるし、シュンも近くにいる。
シュンは昨日戦ったばかりだけど大丈夫なのか?
他にも武闘大会で活躍した人たちの姿がある。
彼らもダンジョンに入る資格を得て仲間たちと挑戦するみたいだ。
「俺たちは時間が出来たからダンジョンに行こうかと思って。サイフォンたちもここにいるってことはダンジョンに行くのか?」
「まあな。のんびり登って行くつもりだ」
話を聞くと、アルゴとサイフォンたちのパーティーは組んで挑戦するようだ。
ナオトたちの方はシズネを入れて六人で行くことにしたようだ。
「俺たちもゆっくり登って行く予定だよ。魔物との狩りは久しぶりだから勘を取り戻さないとだしな」
だからシズネには魔法を控えるように頼んであるとナオトが言った。
もちろんシズネが危ないと判断したら参戦してくれとも頼んであるあそうだ。
ナオトたちのパーティーにはコトリもいるし、シズネ抜きでも火力は十分足りてそうだ。少なくとも二六階か三一階までは大丈夫そうだ。
ナオトたちにはプレケスダンジョンを攻略したという実績もあるしな。
俺たちはサイフォンたちと別れると早速ダンジョンに入って行った。
どうやら混んでいるのは、一階に入場する順番を待っているからみたいだ。
その点既に何度もダンジョンに通っている俺たちは待つことなく入ることが出来る。
そもそも上層階に入っている人が少ないというのもあるみたいだ。
こうして俺たちのダンジョン攻略は再開された。
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