第536話 本選二日目・2
第二試合はアルゴ対獣人冒険者のヘインツの戦いだ。
ヘインツはBランク冒険者で、使う武器は剣。ただ違うのは双剣使いということだ。
双剣使いのルリカが密かに応援している人だったりする。
昨日も勝利したのを見て喜び、クリスとセラ相手に熱弁を振るっていた。
「今日はどっちを応援するのさ」
とセラが聞いたら返答に困っていた。
結局明言は避けたわけだけど。
俺はそんな二人のやり取りを聞きながら二人の戦いに注目した。
それは何故かというと、双剣使いに対して剣一本でどのように戦うかを見たかったからだ。
決してルリカに模擬戦をやる時に負けているからじゃないよ?
開始と同時にまず仕掛けたのはヘインツだ。両手を自在に扱い鋭い攻撃を仕掛ける。
ルリカの時も思うが、何であんなに淀みなく動かすことが出来るか不思議だ。
俺も色々試したがどうしても上手くいかなかった。並列思考を使えば少しは出来たけど、疲れてしまって長時間維持することが難しかった。
現状地道に鍛えるか、双剣関連のスキルを覚えないと無理だというのが俺が出した結論だ。
そこまでするなら今のスタイル、剣、盾、魔法を使ってを鍛えた方がいい。
スキルを覚えれば動けるようになるけど、結局鍛練する必要があるからだ。
話がそれたが試合の方は、ヘインツの攻撃をアルゴが受けて、時々反撃するというのを繰り返している。
その激しい攻防に歓声が上がる。
やはり獣人が多いだけあって、ヘインツを応援する声が多い。
「やっぱ双剣相手だとなかなか攻撃出来ないよな」
単純に手数の差が出ている気がする。
「ソラ、あれはわざとだぞ?」
「そうなのか?」
「まずはああやって相手の動きを観察してるんだ。あとは利き腕というか、どちらの手の方が強いかとかな」
「? どういうことだ?」
「両手で武器を振るうといっても左右で得意な手ってのはやっぱ存在する。一番分かりやすいのは利き腕の方が威力が高いとかな。もちろん例外ってのは存在するけどよ。アルゴは今それを確認してるところだな」
サイフォンの言葉を受けて俺は注意してアルゴの動きを見た。
表情までは分からないが、動きからは焦った様子はうかがえない。
剣を大きく左右に動かしたり、小さく動かしながらその時々で動きが変わっている。
また反撃する時も体というよりもわざと武器で受けられるように攻撃しているように見えた。
ただ俺がそう感じただけで、実際は戦っている本人は相手の雰囲気から違う意図を持って攻撃しているのかもしれないけど。
「準備が整ったようだな」
今まで接近して攻防が繰り返されていたが、アルゴの一振りでハインツが飛び退いて間合いが出来た。
あれだけ激しく攻撃していたのにヘインツは息一つ乱していない。
「獣人は体力が多いからな。力が強かったり動きが速かったりに目が行きがちだけどよ、耐久力こそ一番の長所だと俺は思うね」
サイフォンの言葉に、ジンやギルフォードも頷いている。
確かにセラも体力は多いが、それはレベルのせいかと思っていたけど、サイフォンの言う通りなら違ったのかもしれない。
そして再びアルゴとヘインツは間合いを詰めると、先と同じように戦い始めた。
違うのはアルゴとヘインツの攻守が逆転したことか?
いや、別にヘインツが攻撃の手を緩めたわけではない。
アルゴの動きが明らかに変わったのだ。
執拗に攻めるのはヘインツの右手側。アルゴからすると左側面に回り込みながらの攻撃が増えた。
「右手の方が攻めやすいって判断なんだろうな。やはり見極めが上手いな。だからこそガイツと戦うってなっても自信があるって言うんだろうな。まあ、それをさせないのがうちの盾士が凄いところなんだけどな」
サイフォンが仲間自慢を始めた。
ガイツの凄いところは知っているから、黙って聞いていよう。
話を聞きながら視線は舞台の方に向いているんだけど。
しかし戦いの中で瞬時に判断して攻撃を組み立てる。
Aランクまで上り詰めたのは、そうやって魔物や人との戦いを潜り抜けてきたからなんだろう。
最終的な勝負は、アルゴに軍配が上がった。
ヘインツの左手の武器を弾き飛ばし、反動で体勢が崩れたところで首筋に剣先を向けてヘインツが降参を宣言した。
さすがに致命傷を受けても助かるとはいえ、剣で斬り刻まれるのは嫌なのだろう。
俺だって間違いなく同じ選択をする。
けど勝負の決め手が利き腕のと思われる方の武器を弾き飛ばすとか、執拗に右手側を狙ったのは意識を逸らすためか。
「それでソラ、参考になったか?」
俺が微妙な表情を浮かべたら、サイフォンはそれ以上何も言ってこなかった。
参考にはなったけど、その領域にまで登るのは難しそうだ。
次に模擬戦をする時は、一応意識して取り組もうとは思ったけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます