第529話 フォルスダンジョン・7
明日はいよいよ本選が始まるということで、今日もダンジョンに来ていた。
さすがに本選が始まっている間は観戦をするためだ。
ちなみに三一階から三五階までは、ウルフ系の上位種一〇体×三セット、三六階から四〇階まではウルフ系の上位種二〇体×五セットを繰り返した。
さらに四一階から四五階まではタイガーウルフ一〇体とブラックタイガー一体で、四六階から五〇階まではタイガーウルフ三〇体にブラックタイガー五体の魔物が出てきた。
「他のダンジョンもそうだけど、ここも上に行くほど魔物が強くなるよね」
ルリカの言う通りだ。
「確かにそうさ。けど……なんというかさ、訓練を受けているみたいさ」
「訓練?」
セラが腕を組んで突然そんなことを言ってきた。
「ボクの個人的な感想さ。徐々に難易度を上げて、成長を促しているように感じただけさ」
難易度に関してはセラの言う通りかもしれない。
実際三一階から三五階までは上位種こそ出る魔物はランダムだけど、出る総数は変わらない。
ただ違いがあるとすれば、一階登るごとに魔物の出現タイミングが早くなってくる。
三一階よりも三二階。三二階よりも三三階と、魔物を素早く倒さないと魔物に圧し潰されることになる。
「セラの言う通り、その可能性はあります」
話を聞いていたカイナが、そんなセラの意見に同調した。
「何でそう思うの?」
「私は会ったことがありませんが、カロトス様が昔話してくれたことがあります。ここがあくまで犬神であるスティア様が作ったと仮定してですが、スティア様はカロスト様曰く、脳みそまで筋肉な神だそうです。体を鍛えるのが何よりも好きだと言ってました」
「……それって本当なの?」
カイナの言葉にルリカは眉を顰めたけど、このダンジョンの在り方を考えるとそれもあるかもしれないと思った。
一番はやっぱダンジョン内で死んでも実際は死なないという機能があること。
妖精王が何かしら悪意を持って仕様の変更をしたといえば納得もいくしな。
「どんな意図があろうと上を目指すことには変わらないからな。ただ資料で見た上層階の魔物がな……」
七〇階までは戦ったことがある魔物が基本出てくるからある程度力量が想像出来る。ミノタウロスの上位種であるキングミノタウロスとは戦ったことがないが、ミノタウロスと強化種と考えればいいわけだしな。
問題は七一階から出る魔物だ。
資料にどんな戦い方をするかは記載されているけど、資料だけじゃ分からないこともある。何の知識もなく戦うよりはそれでもましだけどね。
一応獣王は戦ったことがあるからアドバイスをしてくれるかもしれないけど……また戦おうとか交換条件で言われそうなのがな。
「何ソラげっそりしてるの?」
「何でもない。それよりきりもいいし、今日はこれで帰ろう」
「そうね。けどちょっと早くない?」
「……明日に備えて準備をすればいいんじゃないか?」
ルリカに何の準備か聞かれたから、観戦する時に食べる料理を自分たちで作るか、屋台に行って料理購入するかしようと言った。
「特に明日は混みそうだろう? なら屋台の料理は今日中に買っておいた方がいいと思うんだ」
「それは主の言う通り」
俺の意見に一早く賛成したのはヒカリだった。
「けどせっかくならお弁当を作りたいな」
「なら二手に分かれましょう。ソラが入れば料理を安全に保管することが出来るんだからね。ということでソラはヒカリちゃんと屋台で料理を買って来てね」
視線を感じれば、ヒカリが期待に満ちた目で俺を見ている。
「分かったよ。ミア、何か必要な調味料と食材はあるか?」
「そうね……」
俺はミアに言われたものがアイテムボックスの中にあることを確認して、後で渡そうと思った。
結局屋台巡り、もとい買い出しに行くのに選ばれたのは、俺にヒカリの二人に、シュンを除く召喚組の五人とエルザとアルトの九人だ。
「エルザ、アルト、行く!」
ヒカリが二人を引き連れて屋台に突撃すれば、それを追うようにシズネも走る。
「良かったのか?」
「シュンたちと違って暇だしな。それに外に出るのは久しぶりだしな」
俺たちがダンジョンに行っている間、ナオトたちはシュンの相手をしたり、エルザやアルトの面倒を見てくれている。とても暇そうに過ごしてはいない。
「ほら何してるの。ソラ君、ヒカリちゃんたちの荷物をお願い」
カエデに呼ばれ、俺はヒカリたちが購入した料理をアイテムボックスに入れていく。
「多くないか? 弁当も作るんだよな?」
「別にすぐ食べる必要もないからね。ヒカリも残ったら残ったで、旅の途中で食べればいいと思ってるはずだよ」
「空間魔法か……」
ナオトたちもマジック袋を持っているみたいだけど、完全に保存が効くやつではないみたいだしな。
シズネも使えないようなこと言っていたし。
例えシズネが使えたとしても、今はナオトたちと一緒に旅をしようなんて思ってない可能性の方が高いけど。
俺はエルザとアルトと楽しく話すシズネを見ながら、そんなことを思った。
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