第528話 フォルスダンジョン・6
本選が始まるまであと二日ある、ということでダンジョンの攻略を進めることにした。
シズネとエルザ、アルトの三人はカエデと一緒に訓練をしているから、いつものメンバーにカイナを入れた六人と一体で行くことに。
「それじゃ悪いけど色々試させてもらっていいか?」
俺はルリカたちから許可をもらうと、早速一人前に出た。
二二階から二五階まではウェアウルフの階が続くため攻略の仕方は変わらない。
階が進むごとに追加される速度が早くなるだけだ。
俺は剣を構えながら魔法を唱えた。
使用するのは複合魔法。
スキルを覚えて実感したのは、通常の属性魔法よりも強力だということ。
それを並列思考を駆使すれば二発同時に放つことが出来るということだ。
さすがにMPの消費量が通常の魔法よりも多いが、それでも最大で一・五倍と考えればお得なんだと思う。
最初はサンダーストームを二回放って倒していたウェアウルフも、二五階を突破する頃には一回で倒せるようになっていた。
これはスキルレベルが上がって威力も増したからだ。
「結局ソラ一人で倒しちゃったわね」
半ば呆れ顔でルリカに言われてしまった。
戦う機会を奪ってしまったのは悪いと思うけど、やっぱ新しいスキルを覚えたのと、何が出来るかを探るのは楽しい。
単純な威力ならクリムゾンロックや水球を爆発させるバブルボムなどが強いが、使いが手の良さでいうならサンダー系の魔法が一番だ。
これは補助効果に麻痺があるからだ。
もっとも麻痺の効果といってもそこまで強い訳ではなく、少しの間痺れさせて動きを鈍くするといった程度だ。
ただそれだけあれば俺が次の行動に移るには十分な時間が稼げる。
別の魔法を放つのもいいし、剣で倒してもいい。
問題があるとすれば、攻撃力が高過ぎるという点だ。
今みたいに俺一人で戦うならいいが、そこに仲間たちが戦って乱戦になると仲間を巻き込む危険がある。
クリスも強力な範囲攻撃の精霊魔法を使うけど、仲間が近くにいる時はコントロールをして範囲を絞っている。
俺の今後の課題だ。
「二六階からはウェアウルフに、上位種のキングウルフが出るんだよね?」
ルリカも資料を読んで知っていると思うのに口に出して言ってきたのは、俺たちに思い出させるためだろう。
特に注意するべき点は、最後にキングウルフと一緒に現れる集団だ。
キングウルフの指揮下に入ったウェアウルフの集団との戦いになるようだ。
「連携されると厄介だよな」
「そうね。いっそ引き離して戦うのはありだと思うんだよね」
キングウルフが指揮出来ない状況を作るってことか。
「けどこのダンジョンはそれほど広くないし、難しくないか?」
俺の言葉にルリカは改めてダンジョンフロアを見ている。
このダンジョンは上の階に進んでも一階のフロアは変わらない。
五〇階以降になると少し広くなるようなことが資料には書かれていた。
「シンプルに上位種を叩く組とそれ以外の魔物を叩くチームで分けた方が良さそうね」
「なら一階ごと交代でやってみるのはどうさ。上位種と戦うのは良い経験になっていいさ」
安全を考えるなら担当者を固定にした方が良いと思うが、経験するのは確かに大事なのかもしれない。
そもそも上位種と遭遇する確率は低いけど、絶対に出会わないなんてことはない。
実際にオークロードと遭遇したことがあったわけだしね。
「なら最初はキングウルフをルリカ、ヒカリ、セラの三人で担当してくれよ。ウェアウルフは俺たち四人で抑えるから」
交代で戦うのはいいけど、別に一人で戦う必要はないしね。
それにこの三人で戦えば、キングウルフの戦力分析もしっかりしてくれそうだしね。
話が決まったから二六階に進むことになった。
ウェアウルフが一〇体ごと出現し、これが五回繰り返される。そして最後の一回でキングウルフが一緒に出てくる。
この階からは俺も魔法を抑えて近接戦闘メインで戦う。
クリスは倒すためというよりも俺たちの補助に回りつつ、時々単体魔法でウェアウルフを攻撃している。
ウェアウルフと近接戦闘をして思ったのは戦い易いということだ。
たぶんそれは二足歩行の魔物というのも関係している。
動きは素早いがただそれだけだ。
「ウェアウルフの討伐依頼が出た場合、推奨ランクはいくつになるんだ?」
「Cランク推奨だったと思いますが、Ⅾランク冒険者でも受けることは出来たと思います。ただ滅多に遭遇しない魔物ではあると思います」
冒険者ギルドは長い歴史があるから資料も豊富にあるけど、ダンジョン以外で遭遇しなくなった魔物も多かったりする。
そもそも魔物がどのような原理でこの世界に出現しているかは謎だからな。
倒しても倒しても生まれるのが魔物だからな。
結局この日は三〇階まで登って終了した。
俺もキングウルフとは戦ったが、カイナと一回、セラと一回組んで計二回戦った。
上位種というだけで確かに強かったが、今まで戦ってきた魔物のことを考えると、余裕を持って戦うことが出来たな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます