第525話 複合スキル
全ての魔物を倒すと、最後にいつも通り宝箱が出た。
「シズネ。今のは何の……雷属性の魔法なのか?」
少なくとも雷属性の魔法なんてものは俺の習得可能リストの中にはないが、魔導王であるシズネならスキルを覚えていても不思議ではないと思った。
と思えるほど、シズネは自然とサンダーなどの属性魔法を使っていた。
「サンダーとかは……覚えるために特に決まった属性はないよ。言うならこれは複合魔法ね」
「複合魔法?」
「そ。これは私のレベルが上がってから複合スキルってのを覚えてから使えるようになったのよ」
シズネはそういうと、サンダー以外の魔法を部屋の壁に向けて使って見せてくれた。
「クリムゾンロック!」
それは燃えた岩石を飛ばす魔法で、部屋の壁にぶつかると激しい爆発を起こしていた。
その大音響にエルザとアルトは目を丸くして驚いていた。
それでも壁には傷一つついていないのは、ダンジョンゆえなんだろうな。
「ま、こんな感じで色々使えて便利なのよ」
俺はシズネの言葉を聞きながら、スキルリストに目を落とした。
複合、複合、複合……あった。
スキルを習得するのに必要なポイントは3消費と大きいが、便利であることに違いない。
早速習得すると次々と頭の中に魔法が浮かんできた。
数が多いな。
今覚えている属性魔法六種以外にもあるようだけど、まだ使えないものもあるみたいだ。
ここは複合スキルのレベルが上がれば使えるようになるみたいだな。
さらには職業に魔導王が追加されたことが何となく分かった。
確認すると確かに魔導王が追加されていた。
職業補正はMPと魔力が+300か……。
魔力の強化よりも単純にMPが増えるのは嬉しいな。
このままダンジョンに登るなら魔法の火力……特に範囲攻撃は必要になってくるから魔導王になっておくか。
それとスキルのレベル上げのため優先して魔法を撃たせてもらえるようにお願いしよう。
もちろん実戦経験の機会を奪わない範囲でだけど。
俺は職業を変更すると、早速試し打ちをすることにした。
俺は手を前に突き出し、壁に向かって魔法を唱えた。
「サンダー!」
稲妻がほとばしり壁に衝突すると火花が散った。
ただシズネのサンダーに比べると稲妻が細かったような気がする。
「な、何よ今の!」
けど俺がサンダーを使ったことにシズネは純粋に驚いていた。
確かに自信満々に言ったあとに同じ魔法を使われたら驚くよな。
話の流れ的に、俺が使えないと思っていただろうし。
いや、実際シズネから複合スキルの話を聞く前は使えなかったんだけど。
「ソラ、もしかして?」
そのカラクリを知っているミアが呆れながら聞いてきた。
俺が頷くとやれやれと言った感じでため息を吐かれたけど。
「俺も複合スキルを覚えたんだよ。それで魔法を使えるようになったんだ」
「……そんな都合良くスキルを覚える? 本当は最初から覚えてたんじゃないの?」
完全に疑心暗鬼に陥っているな。
弄ばれたとか、エルザに慰めてと甘えていたりと、なんか色々と暴走しているな。
この際だからシズネにも誤解のないように少し俺のスキルのことを教えておくか。
俺がウォーキングのスキルのことを話すと、
「なにそれ、狡い。てか、そんなスキル持ちを追い出すとか……馬鹿ね」
とシズネは言ってきた。
「けど歩かないと稼げないのか……疲れないって言っても僕には無理かな。車を覚えると歩くことを忘れるからな」
シズネが言うには、歩けばすくつく近くにも車で移動するようになったと言っていた。
それが車社会に生きる者の
その後どんなスキルを使えるかとか、どんなスキルを習得可能なのかと色々質問を受けて、最後は車のようなものを開発しなさいよと言われたが、さすがにそれは無理だと思う。
「シズネ、色々話したいと思うけどそろそろ帰らない?」
シズネの言葉が止まったところでルリカが言ってきた。
見ればすでに宝箱の中身を回収したルリカたちが、ちょっと暇そうにしている。
クリス辺りはシズネのいう車などの向こうの世界の話に興味を持っているようだったけど。
予定通り俺たちはダンジョンから出ると、お昼を済ませたら再び鍛練所の方でエルザたちに経験を積ませた。
主にルリカが指導に当たっているのは、エルザとアルトが短剣を扱うのと、短剣を使う時に両手で武器を持つことがあるからだ。
「槍の使い方も教えることが良かったんだけどね」
ルリカがそう言うのは、俺たちの中に槍を使える者がいないからだ。
いや、一応カイナが槍を使っているが、教えるのは無理みたいだ。天才肌だから説明が感覚的な表現のためだ。
この辺りはヒカリと似ているかもしれない。
槍術系のスキルを習得すれば俺でも知識は得ることが出来るが、さすがに教えるというレベルになるには時間がかかるからな。
「……なら姉さんに教わったらいいんじゃない? 姉さんなら教えるのも上手いよ」
困っていたらシズネがそんなことを言ってきた。
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