第524話 フォルスダンジョン・5

 一〇階を攻略したら一度休憩を入れて、そのまま一一階に挑戦した。

 一一階からは徐々に難易度が上がっていく。

 一一階は出る魔物こそウルフ系で大きな変わりがないが、この階から一五階まではウルフ一〇体とウルフの上位種一体のセットが一〇回繰り返されるとのことだ。

 さらに一六階からはウルフ二〇体と上位種三体のセットが一〇回繰り返される。

 もちろん階が上がるごとに魔物が出現する間隔は短くなる。

 特に一六階で倒す速度が遅いと、部屋の中は魔物だらけになるから動きにかなりの制約がつくことになると思う。

 部屋の広さは基本変わらず、バスケットコートが二つ分よりも少し広いぐらいか?

 もっとも俺たちにとっては数が増えただけでは難易度的には変わらず、次から次へと出てくるウルフたちをシズネやクリスの範囲魔法で一掃していく。

 そして最後のワンセットになったらエルザとアルトも参戦させて実戦経験を積ませていく。

 この頃になると二人で組みを作って戦うのではなく、一人一体受け持つような感じでウルフと戦っていた。

 さすがに上位種とはまだ戦わせることは出来ないから、その辺りはヒカリたちが倒していった。

 結局この日は一七階まで進み、明日は一日休んでその翌日に再開することにした。

 ここまでハイペースになった要因の一つは、エルザとアルトに良いところを見せようと張り切っているシズネがいたからだろうな。


 一日日を置いてからのダンジョン挑戦では、戦い方をまた変更した。

 最後のワンセットになってからのエルザたちの参戦はそのままだが、今回は俺とエルザ、アルトの三人で上位種一体を担当することになった。

 ウルフとウルフ系の上位種の大きな違いは二つあり、一つは基礎能力の差。身体能力が高いため、特にその速度に追い付けないと攻撃を当てることや防ぐことが出来ない。

 もう一つは特殊能力で、属性による攻撃を仕掛けてくるからその対策が必要になってくる。

 ただ今回は俺が挑発で引きつけているため、攻撃がエルザたちの方にいくことは基本ない。

 その分攻撃に専念することが出来るが、かといって攻撃を仕掛ける時には反撃されることがあるためその注意は必要だ。

 ただ実際戦ってみると、危なげなく戦っている。

 攻撃するタイミングも相手が俺に攻撃した直後を狙ったり、時に攻撃するのを見送ったりと緩急をつけている。

 また攻撃する時はエルザとアルトはタイミングを合わせているみたいだった。


「うん、ばっちり」


 スノーウルフを倒した二人をヒカリが褒めていたが、


「お兄ちゃんが魔物を引きつけてくれていたお陰です」


 とエルザは控えめだ。

 アルトもコクコクと同意するように頷いている。

 二人はそういうが、魔物の動きをしっかり目で追えているし、体もあの素早い動きに追い付けているし及第点は十分上げられそうだ。

 自信がないなら二人だけで戦わせてみればと思うが、それはさすがに出来ない。

 というか、シズネとミアが反対するからな。

 レベル的には二〇に到達しているけど、やはり地道にレベル上げをして成長してきたわけじゃないからなのかもしれないな。

 もっとも俺たちとしては、二人のレベルを上げたのは魔物と戦うというよりも、自衛出来るだけの力を身に付けて欲しいという想いが強いからな。

 それを考えれば一先ずこの辺りでレベルを止めて、あとは模擬戦で対人戦をこなして技術を向上させていった方がいいのかもしれない。


「それじゃ最後に二一階で戦って今日は帰ろうよ。せっかくだし、二人にはボクのとっておきを見せてあげるよ」


 シズネのその言葉に、俺たちは最後二一階で戦って帰ることにした。


 二一階に出る魔物はウェアウルフ五〇体だ。

 二足歩行のウルフ。いわゆる狼男だな。

 俺は戦うのは初めてだな。

 ただ今回は戦う機会がないまま終わった。

 二一階に入ると、まずシズネが一つの魔法を使った。

 それは水魔法の一つでミスト。本来は霧を発生させて視界を奪う効果がある魔法だが、シズネはこれを水分を多めにして空気中に散布するように使っていた。

 そこにウェアウルフが出現すると、体を濡らしていく。


「サンダーレイン!」


 そこにシズネが魔法を唱えると、一瞬にしてウェアウルフは消滅した。

 他にもサンダー系の魔法を……サンダーやサンダーストームなどを次々と使っていく。

 俺もサンダーストームを並列思考を駆使して、水と風の属性魔法を同時に唱えることで使うことが出来たが、シズネはスムーズに魔法を使っているように見える。

 特に単体魔法のサンダーを連発するのは俺には無理だ。

 俺が驚いていると、目が合ったシズネはドヤ顔を浮かべていた。

 ただ残念ながら、魔法の知識がそれ程ないエルザとアルトは魔法には驚いているが、それがどれだけ難しいことかを理解していないようだった。


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