第522話 フォルスダンジョン・3(聖女?)
三階、四階も順調に進み、俺たちは五階に入場した。
この階では休憩を挟んでMPが全快まで回復したシズネが、再び魔法で出るウルフたちを蹂躙している。
そして最後に出現したのは、ウルフ五体に上位種のシャドーウルフだ。
「……シャドーウルフか……」
シズネはそれを見て面倒くさそうに呟いていた。
シャドーウルフは聖属性、続いて光属性が有効だが他の属性には高い耐性を持っている。
シズネが使う属性は火、水、風、土の四属性だからな。
ただ高い魔力を持っているからごり押しで倒すことも可能みたいだ。
「ねえ、なら私が戦ってもいいかな?」
するとそれまで補助魔法オンリーで戦っていたミアがシズネに尋ねた。
確かにミアの神聖魔法ならシャドーウルフを圧倒できるはずだ。
「確かにミアの神聖魔法は有効だと思うけど……大丈夫なの?」
シズネが心配しているのは、ミアが接近戦で戦えるのかということだろう。
確かに神聖魔法はシャドーウルフにとって効果は抜群だが、シャドーウルフ自体の身体能力はウルフの比ではない。
後衛職だと接近を許せば苦戦を強いられることは目に見えている。
「大丈夫。任せて」
ミアがブンブンと杖を振りながら応えると、迷わず一歩踏み出した。
同時にミアはホーリーアローを連射して、こちらに駆け出そうとしたウルフ三体を仕留めた。
残り二体とシャドーウルフは回避していた。
ミアはそれを見て、ウルフに向かって駆け出した。
それを見たシズネは、
「ちょ、本当に大丈夫なの?」
と聞いてきたが、今のミアの身体能力なら問題ないだろう。
下手な近接戦闘職よりも強いはずだ。
実際ウルフ二体がミアに襲い掛かったが、ミアが的確に杖を振るうとウルフ二体は瞬く間に消滅した。
これで残りはシャドーウルフ一体になった。
シャドーウルフは影を伸ばしてミアに攻撃してきたが、ミアが神聖魔法を使うとその領域に影が触れた瞬間消滅していた。
「ホーリーアロー!」
さらにホーリーアローを牽制に使ってシャドーウルフとの間合いを一気に詰めたミアは、杖先に聖属性を纏わせて一息に振り抜いた。
ミアの一撃はシャドーウルフの影の鎧を破壊し、一撃のもと葬っていた。
「……ねえ、あの子って確か聖女なんだよね?」
言いたいことは分かる。
後衛職が単身で接近戦を仕掛けて上位種を倒すなんてことは夢にも思わないだろう。
ただこの場合は、単純にミアの身体能力が高かったということ以外にも、相性の問題もあったと思う。
これがファイアーウルフなどの別属性の上位種だとこうもいかなかったはずだ。
五階の攻略を終えた俺たちは、六階に進まずに一度ダンジョンから出ることにした。
時間にして二時間も経ってないが、エルザとアルトに疲労の色が見えたからだ。
魔物と戦ってこそいないが、やはり緊張の連続で負担があったんだと思う。
「二人とも大丈夫か?」
「はい……大丈夫です」
エルザはそう言うが、やはりいつもの元気がないような気がする。
「今日はここまでにしておくか」
別に急ぐことはないし、鑑定でエルザとアルトのレベルも確認したが、二人ともレベルは順調に上がっている。
ただ上位種を倒したにもかかわらず一〇に届いていないのは、やはり人数が多かったからだろう。
しかし俺とカイナの分の経験値はどうなっているんだろうな、とは思う。
俺の場合の経験値は徒歩でのみしか入らないし、カイナはゴーレムの体だから経験値は関係ない。
その場合八人計算で経験値が分配されるのか……その辺りは考えるだけ無駄か。
「それじゃ今からどうするの? 武闘大会でも見に行く?」
ルリカの提案に少し考える。
それもありかもしれないが、予選会の話を聞くに今から行くと人が多過ぎて観戦することは出来ないかもしれない。
それに人込みの中を歩くのは今の二人には辛いかもしれない。
「今日はゆっくり休むとしよう。あ、ただルリカたちが観戦したいなら見に行ってもいいと思うぞ」
ヒカリとルリカ辺りは興味がありそうだと思ってそう言ったら、
「別にいいかな。それにスキルを使ってちょっと疲れたし」
「うん、皆で休む」
ということで一度戻ることにした。
帰る際にダンジョンで手に入れた素材の売却も忘れない。
もっとも上位種の魔石と肉は手元に残したけど。
いっそのこと今日の食事で早速料理してもいいかもしれないな。
一応食事は言えば作ってくれるみたいだけど、調理場を使う許可をもらったから自分たちで食事を用意することも出来る。
コトリたちも出来るだけ自分たちで料理をしているって言ってた。
その後それぞれ休憩をしてお昼まで過ごし、昼食を食べたら鍛練所で軽く体を動かすことになった。
今回はエルザとアルトの二人に、レベルが上がったことで向上した身体能力の確認をさせるためのようだ。
実際二人は最初の頃は違和感を覚えていた様だが、徐々に慣れてきたのか今は元気にルリカたちと模擬戦をしている。
俺はその様子を見ながら、明日はどうするかを考えるのだった。
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