第521話 フォルスダンジョン・2(スキル)
「主、試したいことがある!」
二階に入る前、ヒカリがそう言ってきた。
「シズ姉、だから魔法禁止!」
ヒカリの言葉に、シズネは俺の方を見てきた。
シズネからしたらヒカリが強いのは分かっているみたいだけど、その幼さゆえに心配なのだろう。
「大丈夫さ。僕たちも戦うし」
「そうそう。私たちもエルザとアルトに格好良いところを見せたいしね」
ヒカリが一人だけで戦う訳ではなく、セラとルリカの二人と一緒に戦うようだ。
その際二人が意味ありげに笑っていた。
フォルスダンジョンの一つの特徴として、一階から七〇階までは、一〇階単位で殆ど同じ魔物が出てくる。
一階から一〇階はウルフとその上位種が出てくる。
魔物の数も一階から五階がウルフ五〇体に上位種が一体で、六階から一〇階がウルフ五〇体に上位種が三体出るそうだ。
大きく違うのは、魔物が一度に出現する数と速度が違うということ。
一階から五階は一度に出てくる魔物五体ずつで、六階からは一〇体になる。
さらに魔物が出現して、次の魔物が追加されるまでの間隔が短くなっていく。
徐々に難易度が上がっていくようになっている。
これだと何となくダンジョンというよりも修練するための場所といった感じを受けるな。
二階の攻略は、宣言通り三人が積極的に戦った。
俺たち残ったメンバーは打ち漏らしたウルフを倒すことになっていたが、結局出番がくることはなかった。
戦闘だが、最初のウルフ五体が出現した瞬間、ヒカリがその場で短剣を振るった。
するとヒカリの短剣からウインドカッターのようなものが放たれ、ウルフは一瞬にして刻まれて消えてしまった。
それが計四回繰り返されると、今度は三人が前に出てウルフを倒していく。
ヒカリはいつも通りの身のこなしでウルフを確実に仕留めているが、ルリカとセラの動きも凄かった。
まずはルリカ。元々素早い動きで懐に入り、その双剣で魔物を斬り倒していくスタイルだったが、その速度が段違いに変わっていた。
まるで俺が短距離転移を使った時みたいに、瞬きした次の瞬間には遠く離れたウルフの目の前に移動していた。
剣を一振りすれば、ウルフの体は綺麗に真っ二つに分かれていた。
セラに関しては全体的にレベルがアップしているように見えた。
動きは素早く、一撃は重くといっても、もともとセラはウルフを紙切れのように倒していたから攻撃力が上がっているかは正確には分からなかった。
「す、凄くないかい?」
その戦いぶりにシズネは驚いていたが、俺も驚いていた。
特にヒカリとルリカのあの動きは、それこそ新しいスキルでも覚えていないと無理だと思う。
ということは……思い当たるのはダンジョンを初めて攻略した者に与えられるとことがあるという特典?
他にはレベルが上がったことで新スキルを覚えた可能性だけど……。
俺はチラリとミアとクリスを見て、
「二人は知ってたのか?」
と尋ねたら、クリスは申し訳なさそうに頷き、ミアは楽しそうに言ってきた。
「実は三人から相談を受けていたんです。けど使えるようになるまで秘密にしておいて欲しいって言われました」
「ソラを驚かせたかったみたいよ。ふふ、どうやら成功したみたいだけど」
戦闘が終わり次の階に行く前に、三人がスキルについて詳しく教えてくれた。
「魔法みたいで格好良い」
ヒカリのスキルは【斬撃】。刃物を振るうことで斬撃を飛ばすことが出来るだけでなく、剣に斬撃のスキルを纏わせることで、威力を高めた攻撃も可能みたいだ。
またその斬撃は見えない刃として、剣先を伸ばすことも出来るとのこと。
短剣の間合いで戦っていたのに、実は剣だったということで奇襲に仕えるとヒカリは使い方の一つを説明してくれた。
……うん、ヒカリは怒らせたらいけないね。
ルリカのスキルは【疾風】。これは先程の戦闘でも分かるように、動きが速くなる。ただ効果はそれだけでなく、速さに比例して振るう攻撃の威力も倍増するとのことだ。
問題は武器を振るうタイミングが難しく、感覚を掴むのにかなりの練習をしたとのことだ。
「一番確実なのが槍を構えて突進することなんだけどね」
とルリカは苦笑していた。
「ルリカのスキルは投擲用の武器にも適応するのか?」
と尋ねたら、それは無理とのことだった。
ルリカが手に持つ武器には適応されるけど、体から離れてしまうと駄目みたいだ。
最後はセラのスキルだが、覚えたのは【魔力操作】だった。
俺はウォーキングのスキルで習得したこともあって、二人の覚えたスキルに比べて地味かと思ったが当の本人は凄く喜んでいた。
もともと魔力を使って身体強化の練習はしていたが、なかなか実戦では使えなかった。仮に上手く使えても、短時間しか強化が出来ず、下手をすると魔力……MPを使い切って行動不能になる危険もあった。
それが魔力操作のお陰で安心して使えるようになったとのことだ。
またそれは身体強化だけでなく、武器にも纏わすことが出来るほど余裕が出来たようだ。
そう聞くと、不思議といいスキルをもらったんだと思えてしまう。
けど三人とも、相性の良さそうなスキルを覚えたようでちょっと羨ましいと思ってしまった。
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