第516話 中央都市フォルス・2
朝食を食べ終えてさあ街に出掛けるぞというところで、獣王が顔を出してきた。
予定を聞かれたから今日は街を散策すると正直に答えたら、肩を落としていた。
武闘大会参加組は今日も鍛練をするようで、男女比のバランスが酷くなった。
ただ俺たち一向のメンバーの男性は俺とアルトだけでなく、アルゴたちパーティーから二人、ゴブリンの嘆きからはオルガが同行してくれている。
何かあった時のお助け要員みたいな感じだ。
既に街中を何度か回ったことがあるコトリたちが率先して案内してくれるからか、服屋などを中心に回ることになった。
わいわい騒ぎながらどの服が似合うかなど話す女性陣を、俺たち男性陣は静かに待つことになった。
俺は何度も付き合っているから最早苦に感じないが、アルゴたちメンバー二人は気圧されている様子だった。
「オルガは大丈夫なのかよ?」
と問われたオルガは、
「サイフォンがやらかした後に、ユーノに付き合わされたことがあってな……」
と遠い目をしながら答えていた。
それは昔の話で、まだ二人が付き合っていない時代の話だそうだ。
今は静かに怒っているから、その方が怖いとオルガは言っていた。
その話を神妙な態度でアルゴたちパーティーメンバーは聞いていた。
結局お昼の時間になるまで服屋巡りは続き、
「そろそろお昼?」
というヒカリの一言でお昼にすることにした。
今回案内された場所は料理のみを扱っている屋台通りで、近付くと呼び込みの活気のある声が聞こえてきた。
ここの料理の多くは濃い味付けで、肉串でも使っている香辛料が店ごとに違うみたいだ。
人気があるお店には多くの人が群がり、飛ぶように売れていく。
屋台で売れている料理は、ここでは基本片手で食べられる料理が多いようで、屋台が並ぶ通りでは料理を頬張りながら歩く人の姿が多い。
俺たちもそれに倣い、とりあえず目に付いた屋台で肉串を購入して食べながらその通りを歩いた。
肉のサイズが少し小さい気もしたが、一口食べて気にならなくなった。うん、美味しい。
普段なら気になる料理があると購入し、アイテムボックスにストックしていくのだが今回はそれをやめた。
ダンジョンに行く予定だし、この街には長期滞在するからだ。
静かな場所で食べるのもいいけど、やっぱ食べ歩きも楽しいからね。雰囲気も味わえるし、何より料理を食べた人が感想を言ったりするから、何処の屋台が美味しいかの情報を入手することも出来る。
ヒカリも肉串を頬張りながら、しっかりその話を聞いているようだ。
時々目当ての屋台が何処にあるかを目で追っていた。
結局この屋台通りを抜けるまでに、肉串を三つ食べることになった。
肉のサイズが小さかったのもあるが、そもそもサイズが小さかったのは、色々な屋台を楽しめるようになのかも、しれない。商売として上手いな。
その次に向かったのは冒険者御用達のお店だ。
急遽ダンジョンに参加するようになったエルザとアルトの装備を買うためだ。
旅用の装備もしっかりしたものを買ってあるが、魔物と戦うことを想定して買ったものではないからな。
二人に魔物を近付かせるつもりはないが、ある程度の強度のある装備は必要だ。
それにレベルが上がったら、魔物と戦ってもらう予定ではあるしな。
これはルリカたちと相談して決めたことだ。
エルザとアルトの戦闘スタイルは、一番近いのはヒカリだ。
これは単純に二人がまだ重い武器を振り回すことが出来ないから、短剣を使った指導を受けていたからみたいだ。
あと話を聞いた限りだと、棒術も使えるそうだ。
「そうなると動きやすさ優先の装備がいいのかな?」
「その方がいい。基本躱せばいい」
ルリカの言葉に、ヒカリがトンデモナイことを言う。
確かに攻撃を躱せられればそれが一番だが、そんな簡単なものじゃない。
ただヒカリの言うこともあながち間違いではない。
短剣で魔物の攻撃を受け止めるのは難しいから、短剣を使う者は回避重視の傾向は確かにある。
もっとも短剣遣いは基本遠距離だと弓を使う人がいたりと、短剣だけで戦う人は少なかったりする。
あとは大型の魔物と戦う機会が増える高ランク冒険者になるほど、短剣で戦う人は殆どいなくなっていく。
それでも武器によっては戦えることもあって、まったくゼロではない。
結局色々な意見が飛び交い、最終的に決定した装備の値段を見てエルザは顔を青ざめていた。
結構なお値段だからね。
「遠慮することないよ。これで命が守られるなら安いもんなんだから」
遠慮するエルザにルリカが言えば、ミアたちも同意するように頷いている。
武器に関しては自分で一つ一つ手に持って、馴染むものを選んでいた。
それが終わったら消耗品も見て回ったが、全体的に回復ポーションと活力ポーションの値段が高かったが、マナポーションは安かったのが印象に残った。
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