第515話 登録
ダンジョンの説明を一通り聞いて、いざ登録をする段階になってシズネがとんでもないことを言った。
シズネが俺たちと一緒にダンジョンに入るのは、まあ、いいとしよう。
「エルザとアルトをダンジョンに?」
「そうだよ。無理なのか?」
シズネが俺というよりも、受付のお姉さんに聞いている。
「特に入場するにあたり年齢制限はありませんが……」
エルザとアルトの二人を紹介された受付のお姉さんは、二人を心配そうに見ている。
確かにダンジョン内で死んでも死ぬことはないが、そのペナルティーの大きさを良く理解しているからだろう。
ただそれは俺たちも同じだ。
特に二人のことを可愛がっているシズネが、そんな無茶なことを言ったのには何より驚いている。
シズネなら二人を守りながら戦えると思っているのだろうか?
皆の視線が自然とシズネに集まる中、シズネはその理由を話してきた。
「別に僕だって本当なら連れて行きたくないよ。けどさ、今の二人にはある程度の強さは必要だと思うんだよ」
それはある意味俺たちが原因だったようだ。
俺たちがダンジョン攻略をしたことで、関係者であるエルザとアルトが狙われることになった(たぶん)。その結果、今現在マジョリカから離れて一緒に行動している。
だから自衛をするための力はあった方がいいとシズネは言った。
確かに身体能力を上げるのに一番いいのはレベルを上げることだ、と思う。
模擬戦で技術を上げることは出来るが、それにも限界はある。
圧倒的な力の前には、技術が通用しない場合だってあるしな。
それと皆から話を聞く限り、やはりレベルが上がった時の恩恵は大きいようだ。
「今回のようなダンジョン仕様なら僕向き出し、ソラたちなら二人を守りながら戦えるだろう?」
あえてナオトたちと一緒ではなく俺たちと一緒に行くのを選んだのは、俺のスキルなら二人を守ることが出来るだろうということと、ミアがいるからのようだ。
ミハルも聖女だけど、どちらかというと攻撃よりだって話だったしな。
あくまで普通の神聖魔法の使い手と比べて、だけど。
彼女の名誉のために言っておくが、しっかりヒールとリカバリーなど補助も出来る。
「わ、私も出来るなら行きたいです」
「僕も……」
シズネの説明を聞いていたエルザとアルトの二人も、最初は不安そうだったがそう言ってきた。
「ならある程度レベルが上がるまで一緒に行くのはいいが、シズネはその後どうするんだ?」
シズネにとってエルザとアルトのレベル上げが目的なら、それが終わったらどうするかを尋ねた。
「出来るならカエデ姉さんたちと一緒に行きたいけど……」
そこで受付のお姉さんに途中でパーティーから抜けた場合のダンジョンの入場条件を聞いたら、パーティーを組んでダンジョンに入場していた者が抜けた場合、パーティーの再登録をするのに一〇日ほどの時間が必要になると教えてくれた。
「……ダンジョンに入るのにソロで行く人がいるんですか?」
ふとパーティーのルールを聞いて気になったから聞いたら、
「……今の獣王様がソロで挑戦したことがありました」
と教えてくれた。
獣王ならやりかねないと思った。
「ここがそうですよ」
ダンジョンの説明を終えて、コトリに案内された場所は……フォルスの中心に建っている建物だった。
獣王の態度からもしかしたらと思ったが、まさかここに泊まらせて時間がある時に手合わせをとかいうつもりか?
コトリが門番に声を掛けると、
「少しお待ちください」
と言われた。
コトリは顔見知りだが、俺たちは正体不明の人間だからな。
当然の対応だ。
しばらく待つとリュリュが姿を現し、
「これに血を一滴垂らして欲しいっす」
と魔道具を渡された。
これに登録することで、獣王に認められたということで自由に出入り出来るようになるそうだ。
さすがに敷地内にある重要施設には出入りすることは出来ないみたいだけど。
街に入場するようにカードみたいな道具を使っていないのは、紛失した時に誰とも分からない他人が利用するのを防止するためらしい。
一応この効果は現獣王のエンドが王の間だけ有効になるらしい。
とりあえず武闘大会が終わるまでは寝泊まりするところには困らないようだ。
あの獣王が負けるところは想像出来ないけど、戦いには相性もあるし、もしかしたら隠れた強者が現れるかもしれないからな。
俺たちはリュリュに案内されて、敷地内にある一軒の屋敷に到着した。
ここを自由に使っていいそうだ。
屋敷の中に入ると、そこにはカエデたちがいた。
アルゴやナオトたちがいないのは、鍛練所に行っているからのようだ。
俺たちは空いている部屋を教えてもらい、それぞれ何処を使うかを決めた。
俺? 俺は一人で休める部屋を選んだよ。
その後はコトリたちと談笑しながら休憩し、日が沈んできたタイミングで夕食の準備をすることになった。
シズネが料理をすると言った時は、カエデたちがすごく驚いていた。
もちろん鍛練所から戻ってきたナオトとシュンも、信じられない者を見る目でシズネを見ていたな。
「それじゃ明日はフォルスの街観光でいいか?」
そして食事を終えたら、明日の予定を決めて今日は休むことにした。
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