第514話 ダンジョン利用許可証
「いや、俺は武闘大会には参加しないよ?」
「な、何故だ?」
俺の一言に獣王は驚きの表情を浮かべた。
それどころか動揺している気がするが何故だ?
「いや、別にBランク以上の冒険者が入れば入場出来るんだよね?」
俺の言葉に獣王はアルゴたちを見た。
正確には物凄い形相で睨んだ。
アルゴたちはAランク冒険者だから、その中の一人が同行してくれれば無条件で入ることは出来る。
「い、いや。俺たちは一緒にダンジョンには行かないぞ?」
次に獣王の目が捉えたのはサイフォンたちだ。
きっと立ち振る舞いからサイフォンたちの実力を見抜いたに違いない……たぶん。
「俺たちも一緒に行くって話はしてないな」
サイフォンの言葉を疑っているようだが、実際サイフォンたちとダンジョンに行くという話はしていない。
そもそも俺たちの今のパーティー人数は六人……カイナを入れると七人になるが、ゴーレムはどのようにカウントされるのだろうか?
ゴーレム核に戻してダンジョン内で召喚すれば人数にカウントされないかもしれないが、基本カイナの意識が乗り移っている時は戻すことをしないんだよな。
ま、まあそれはさておき、ゴブリンの嘆きは五人パーティーだから、どうしてもフルメンバーで組めないから、一緒に組むことはあり得ない。
「あ、あの。私たち一応Bランクになったので、それで条件を満たしていますよね?」
そんな中、クリスがギルドカードを両手に持ち、おずおずと獣王に話し掛けた。
「……た、確かクリスさ……ん! Bクラスになったのですか?」
獣王が上目遣いのクリスに話し掛けられ、さらにギルドカードを見て動揺している?
なんか明らかに口調がおかしくなった。
「は、はい」
クリスが頷くと、
「諦めるっす。そもそもエンド様の一存でダンジョンの入場許可云々は出来ないっすからね。それでソラさんたちは早速ダンジョンに行くんすか?」
「いや、今さっき到着したところだから、これから宿探しかな? あとナオトたちが出場するって話だから、武闘大会は応援しようとは思ってる」
そう言えばコトリたちは何処に泊まっているんだろう?
シズネも皆と積もる話があると思うし、一緒の宿だといいな。サイフォンも王国にいた時にはアルゴと……ユーノさんが頭を悩ませそうだ。
あとは武闘大会で人が集まっているって話だし、部屋が空いているかが問題だな。
「宿っすか。たぶん今からだと難しいかもしれないっすね。けど安心するっす。コトリたちから頼まれて、おいらが宿を取っておいたっす」
それは心強いが……。
「安心するっす。格安で泊まれるっす」
顔に出ていたか?
それよりもそれを聞いた獣王が物凄く上機嫌になっているのが気になるところだ。
「宿が決まったようだし? もう少し詳しくダンジョンの説明を聞いて帰っても大丈夫か?」
「問題ないっす。ならコトリ、案内を頼むっす。さ、エンド様。さっさと帰って滞っている仕事を終わらせるっすよ」
俺は半ばリュリュに引きずられていく獣王を見送り、ダンジョンの詳しい説明を受けにいった。
しかし獣王の扱い、登場した時はギルド内にいる人たちも驚いたようだったけど、退場していくあの姿には特に驚いていなかったよな……王国の王都だけでなく、ここでも二人の関係は変わらないのかもしれない。
そしてそんな二人について行くように、アルゴとナオトたちも先に帰ると言った。
「武闘大会に向けてアルゴたちに稽古をつけてもらってるんだ」
とのことだった。
カエデだち女性陣はシズネとまだ話足りないのか残るようだ。コトリが心配なのかもしれないけど。
シュンは少し名残惜しそうだったけど、ナオトたちに何か言われて気合を入れ直してついていった。
その後俺たちはダンジョン担当の受付嬢から詳しい説明を受けることになった。
ここフォルスダンジョンは、先に聞いた話以外の特徴としては、継続的に魔物が出てくるということだ。
これは一つの部屋が狭いため、最初から一〇〇体とか出るとまともに動けなくなるからのようだ。
ただ階ごとに出る魔物の数は決まっているため、全てを倒すと次の階への扉が開くようになっているそうだ。
また魔物の出るタイミングは一定時間が経つと強制的に出るため、素早く倒さないと部屋が魔物で溢れることになる。
そして魔物を倒した場合に出る素材についても、教えてもらった。
まずこのダンジョン内で魔物を倒すと、魔物は消滅する。
では素材は入手出来ないかというとそうでもない。既に解体された状態の素材が手に入る。
ただ全ての魔物が素材を落とすわけではないようだが、各部屋に出る上位種などからは必ず素材が入手出来るそうだ。
解体する手間が省けていいが、稼ぎとしては微妙かもしれない。と思ったが、全ての冒険者がアイテム袋やマジック袋を持っているわけではないから、ちょうどいいらしい。
またその素材だが、魔物を全て倒した時に出現する宝箱から回収出来るそうだ。
ちなみに宝箱から回収出来る素材は三種類あり、一つが魔石。これは倒した魔物の分だけ手に入る。次が倒した魔物から獲れる素材。最後がランダムで何かしらのアイテム。
最後のランダムアイテムは必ずしも手に入るわけではないから、そのところは運の要素が絡んでくるそうだ。
上の階にいくほど貴重なものが出やすいが、なかには低階層で手に入れた運のよい人もいるみたいだ。
他には一度攻略した部屋に入る際の時間制限があるなど細かいルールも教えてもらったが、ますますゲームみたいだな、と俺は思いながらその話を聞いていた。
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