第507話 お手伝い
ダンジョンから帰還した俺たちは、サイフォンたちに次は獣王国に行くことを告げた。
アルゴたちも来ると話したら、行ってみるかということになった。
どうやら俺たちがいない間に商人が家まで押し掛けてきたという話だった。
その時にエルザのたちの話になり、シズネを含めた三人と話をして一緒に獣王国に行くことに決まった。
「一度アルテアに行く用事があるから、すぐには出発できないんだけど……」
「相変わらず色々と忙しいようだな。とりあえず馬車の方は俺たちが手配しておくさ。二台用意すればいいだろう」
「頼むよ。何かあったらギルドマスターが力を貸してくれるって言ってくれたから、相談するといいよ」
俺がそう言うと、サイフォンが呆れ顔で見てきた。
いや、レーゼが力になってくれるって言ったからさ。
その日は家で休み。翌朝いつもの六人でアルテアに転移した。
門番に用件を伝えて待っていると、すぐに中に通された。
ユイニたちは忙しいみたいで、俺たちは親衛隊の一人ドゥティーナにダンジョン入口まで案内されてそのまま一〇階へと飛んだ。
『エリアナ、感じる』
一〇階に入るなり、カロトスが杖から出てきて聖樹に向けて飛んで行ってしまった。
カイナもそれを追っていく。
俺たちは普通に歩いて聖樹の根元まで来ると、そこにはエリアナとカイナと……たぶんカロトスがいる。
たぶんと言ったのは、目の前にいるのは光の球体ではなく一人の男性だったからだ。
「カロトス……だよな?」
呼び捨てにしているのは、カロトスからそれでいいと言われたからだ。
様付けで呼ぶのは苦手だから助かる。
クリスだけは様付けで呼んでいるけど。
「そう、何を言っている?」
「カロトス様。今は御姿が……」
言われてカロトスは今の自分の姿に気付いたようだ。
「いつの間に?」
「私の力よ~、えっへん」
エリアナも精霊の姿で胸を張っている。
「けど~、早速解放してくれるなんてありがとうね~」
「カロトスのいたマジョリカダンジョンは途中まで攻略していたからな。次は獣王国に行く予定だから、そっちのダンジョンに入れるようなら挑戦しようとは思う。ただすぐには無理かもしれないけど……」
獣王国は初めて行く国だし、少し観光もしたいなーと思っていたりする。
「ま~、無理しないようにね~」
「……他の子解放? 手伝う」
エリアナの言葉に、カロトスが突然言い出した。
「その体じゃ無理だよ~、それに神力も殆ど残っていないじゃないの~」
「カイナが手伝う。カイナ、クリスについて行く」
突然話を振られたカイナは驚いたようだったが、
「た、例えカロトス様の命令でもそれは聞けません。私はカロトス様と共にいます!」
と反対していた。
「駄目、手伝う」
けどカロトスもカロトスで、一向に退く気がないようだ。
その言葉にカイナは今にも泣きそうな顔をしている。
「カロトス。そもそも彼女は体がないし、手伝うことは無理だと思うぞ」
俺が助け舟を出すと、カイナは顔を上げて俺の方を見てきた。
「ゴーレム出す」
するとカロトスが、ゴーレムを呼び出す様に俺に言ってきた。
ゴーレムのことを話した覚えはないが、クリスから聞いたらしい。
俺が人型ゴーレムを呼び出すと、カロトスはゴーレムに手を添えた。
目の前でゴーレムの姿形が変わった。
その見た目は間違いなくカイナに似ている。
「憑依。出来る」
カロトスの言葉にカイナは力なく頷くと、目の前のゴーレムに思念体の体を重ねた。
単色だったゴーレムに色が入り、そこには思念体ではなくなったカイナがいた。
「動ける? 問題ない?」
カイナは腕や足を動かし、
「問題ありません」
と力なく答えていた。
それにカロトスは満足げに頷き、こう言った。
「カイナ。クリス手伝う。そして……外の世界、見てくる。報告する」
「要約すると~、カロ君は自分の代わりに外の世界を見てきて~って言っているのよ~。それで世界がどう変わったかを教えて欲しいみたいね~」
エリアナの言葉に、カロトスが頷いた。
「それって、こまめに転移で彼女を送ってこいってことなのか?」
「カロ君とカイナちゃんは繋がっているみたいだからね~、意識だけをこちらに飛ばすことが出来るようにしたみたいね~」
「意識を飛ばすって、その場合ゴーレムはどうなるんだ?」
「普段のゴーレムに戻る感じ、なのかな~? カイナちゃんはやり方分かる~?」
「は、はい。大丈夫です」
「うん、けど頻繁駄目。クリス、しっかり手伝う」
エリアナの説明によると、意識を飛ばすのにはエネルギーが必要だから、頻繁に飛ばすことは出来ないみたいだ。
そう言えば、クリスがカロトスが外の世界に興味があるって言っていたけど、自分が知りたいという思いもあるんだと思うけど、カイナにも今の世界を見て欲しいと思って手伝うように言ったのかもしれない……考え過ぎかな?
「カイナ、行ってくる」
こうして新たな仲間が加わることになった、のかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます