第504話 緊急連絡⁉
家に戻ると、急に周囲が静かになったような気がする。
エルザとアルトをベッドに寝かせたところで、通信機に着信が入った。
俺が通信機を取り出して通信をONにすると、コトリの切羽詰まったような声が聞こえてきた。
「コトリか? どうしたんだ?」
「どうしたんだ? じゃないよ~。お兄ちゃん、近頃ギルドに行きました?」
「ギルド? 商業ギルドか?」
「うん。たぶん獣王様から連絡がいっているはずなんだけど……」
コトリの話を詳しく聞けば、何でもアルゴたちのもとに冒険者ギルドを通して連絡がいっているそうだ。
何でも俺たちを獣王国に招待したいとのことだ。
ちなみにナオトたちも招待されているそうで、せっかくだからナオトたちは獣王国に行くことにしたそうだ。
獣人の国だし、カエデさんたちが行きたいって言っていたのを覚えている。まあ、分からなくもない。
けど何の用だろうか?
しかも獣王から直接の連絡というのが一抹の不安を覚える。
これがリュリュからだったら安心出来るんだけど。
「分かった。とりあえず商業ギルドに明日行って来るよ」
「一応二カ月以内に来て欲しいみたいだけど、大丈夫かな? ほら、お兄ちゃんたちダンジョンに今行っているんですよね?」
「ああ、そっちは終わったから問題ないんだけど、二カ月以内か……」
少なくとも歩いたら間に合わないか?
けどカロトスも一度竜王国のアルテアダンジョンに連れて行かないとだし、どうだろう?
とりあえず馬車の手配を考えないといけないし、そもそもクリスたちに相談する必要もあるな。
「時間的にどうなるか厳しいけど、俺も獣王国には行ってみたいと思っていたから前向きに考えるよ」
「そうなの? あ、けど獣王国には魔獣が牽く馬車があるって話だから、獣王国に入ったら速いと思うよ?」
それならいっそゴーレム馬車でも良さそうだけど……問題は見た目だよな。
守護の剣は俺がゴーレムを使うことは知っているし、いっそダンジョンの宝箱で手に入れたことにでもするか?
この辺りはレーゼに相談してみるのもありか。
「けどコトリ。アルゴたちから何の用で呼ばれたかは聞いてないのか?」
「うん、後のお楽しみって言って誰も教えてくれないの。酷いと思いません?」
それでも獣王国には行きたいと思う魅力があるのか。
コトリも最果ての町で獣人の子供を抱いて寝ていたとか、スイレンさんが言っていたし、モフモフのためなら構わないという考えなんだろうな。
とりあえず俺は明日商業ギルドに行くことにして、まだ起きていたクリスとルリカにコトリから聞いた内容を話した。
するとルリカから魔獣馬車は止めておいた方がいいということを、物凄い顔で言われた。
俺には黙って頷くことしか出来なかった。
「けど何の用なんですかね?」
「獣王様からの招待ね……あ、もしかしたら」
「ルリカには何か心当たりがあるのか?」
「あー、確かにそろそろ大会の時期だな、って」
「大会?」
「うん。獣王国には王様を決める大会があるんだよ。あそこは五年に一度、王様を決めるための武闘大会が開かれるの」
五年に一度? いや、それよりも武闘大会で王様を決めるとかそれでいいのか?
「ラス獣王国は力こそ正義なところがありますから。あと参加資格に決まりは確かありません。なので人種やエルフも参加出来ます」
「けど仮に人種が王様になったら国の名前はどうなるんだ?」
「確か変わったと思います。ただ基本運営は宰相や文官が行うので、獣王国は王様が変わっても無茶な政策は行われません」
「……それって王様が変わる意味あるのか?」
「昔からの伝統みたいだしね」
ルリカが言うには、一応王様になると意見は言えるみたいだ。
それが国の利益になるようなら、それがしっかり通るという話だ。
あとは武闘大会で勝つぐらいの人だから、政策を決めるのは苦手で部下に任せる人が殆どだということだ。
「あと、今の獣王様はもう二〇年その座に君臨しているみたいだしね。長期政権が長いのよ。獣人の中には長寿の種族もいるしね」
「そうなんだ」
国の在り方はそれぞれだし、その国の住人がそれで納得しているならいいのだろう。
それに聞けば獣王国は七大国の中でも古くから存在する国だそうだ。
「けどその武闘大会に間に合わせて招待とか、大会に参加させようとしているのかな?」
「……あの獣王様のことだからその可能性はあるかもだけど、大会参加者は確か獣王国にあるダンジョンの許可が下りやすいって聞いたことがあるかな?」
「それじゃ俺たちがダンジョン攻略をしていることを聞いて、わざわざ連絡してくれたってことか」
「あくまで可能性ね。ま、どっちにしろ行けば分かるんじゃない?」
「そうですね。ソラは行きたそうな顔をしていますよ」
俺がまだ行ったことのない、七大国の最後の一つだしな。
帝国はただ通り過ぎただけだから、行ったとカウントしていいか迷うところだけど。
しかしダンジョンの使用許可か……行く前に少し調べておいた方がいいかもしれないな。
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