第500話 マジョリカダンジョン 50F・3
金属音が響き、続いて鈍い音がした。
土煙で不意を打たれたが、その土煙によって致命傷を避けることが出来たみたいだ。
タイタンもさすがに正確な位置は分からなかったようで、直撃は免れたからだ。
ただそれでも攻撃を受けた部隊は崩壊していて、四人の冒険者が倒れていた。
俺はそれを見てミアとクリスを見た。
二人は何も言わず頷いてくれた。
「追撃させるな! ギャバン!」
「オルガ牽制! ガイツ、ジン、いくぞ」
ジェイクが走りながら指示を出し、サイフォンたちも援護に向かう。
タイタンは追撃を仕掛けようと倒れた者たちを標的にしたが、ガイツはその前に回り込み、攻撃を受け止めようとした。
正面から一撃を受けたガイツは、勢いに押されて後退った。
それでも五体満足で、ガイツレベルならタイタンの一撃を耐えらえることが分かった。
この情報は大きいかもしれない。
「ソラ!」
サイフォンが俺を呼ぶが、既に俺は駆け出していた。
ポーションを使っているみたいだが、ヒール要員として俺が必要だとサイフォンが判断したのだろう。
神聖魔法の腕ではミアの方が上だが、前線で戦いながら回復となると守れる俺が適任だと判断したのだろう。
後衛の守りが不安になるが、そこはクリスとミア……あとはゴーレムが俺と入れ替わるようにこちらに向かってきている。
指示を出していなくても動いてくれるのは、日々学習した賜物だろう。
俺が倒れていた人のもとに到着すると、ポーションの効果で回復はしている。
俺は念のためヒールを使った。
今回持ってきたポーションは最高品質のものだが、HPの残量を確認することは出来ないからな。
「おい、温存しなくて大丈夫か?」
と守護の剣の人に心配されたがヒール四回分なら問題ない。
ステータスを確認したが、自然回復向上のお陰で回復しているしな。
ただ回復はしたがいいが、この集団は前線に復帰するのは難しいと思った。
表情が物語っている。
タイタンを抑え込んで戦っている人たちを見ても、自分たちから動こうとしないのがその証拠だ。
臆病とは思わない。
盾を使うようになって魔物と最前線で戦うようになって、その難しさは良く分かった。
「君たちは下がるんだ。ソラ君の代わりに向こうを守るんだ」
アッシュもそのことに気付いたようで、指示を出していた。
「ソラ君。そういうことで悪いけど、前で戦ってくれるかい?」
その言葉に俺は頷くと、セラたちと合流することになった。
これで守護の剣一つと、ガイツ班、俺班と三つの部隊で囲んで戦うことになった。
俺は守護の剣の盾士と入れ替わって前に出ると、念話でヒカリに魔法付与した投擲武器を使うように頼んだ。
魔法は効かなかったが付与した武器はどうかを確認してもらいたかったのもあるが、ヒカリが出番を欲しがっているように見えたからだ。
ヒカリが不用意に使えなかったのは、やはり慣れていないと近くで爆発したら間違いなく驚く。
ガイツなら長いこと一緒にダンジョンに潜っていて慣れているから対応出来ると思うけど、守護の剣の人たちだと使えないからな。
俺の許可が下りたら、今までの鬱憤を晴らすようにヒカリは投擲武器を投げた。
もちろん闇雲に投げていないし、それによってどうタイタンが動くかを俺たちが分かるようにしてくれている。
また魔力付与による攻撃は弾かれることなく通っているが、元々魔法に対する耐性が高いからダメージは与えられていない。
俺は俺でタイタンの一撃を受けて、その重みを確認する。
素の状態で受けたらさすがに吹き飛ばされる勢いだが、シールドマスターのスキルを上手く活用すれば攻撃を捌くことは出来た。
挑発も混ぜてタイタンの注意を俺の方に向ければ、その隙にセラが重い一撃を食らわしている。
それが何度も繰り返されればセラを脅威とみなして警戒するが、そこは俺が挑発をしたり、攻撃を受けるだけでなく剣を使っての反撃をしてヘイト管理をする。
そこにサイフォンたちも加われば有利に戦いを進められるが、タイタンの再生能力が高くなかなか倒しきることが出来ない。
明らかな火力不足だ。
「ソラ、交代だ。攻撃に回れ」
俺が後ろに下がったタイミングで、ガイツが俺に言ってきた。
疲れの見える攻撃陣の中で、体力が残っている人間は少ない。
守護の剣だとジェイク、アッシュ、ギャバンの三人。逆に俺たちの方はサイフォンにセラ、ジンとヒカリはまだまだ元気だ。ルリカは疲労が少し見えるが、魔力付与でミスリルの剣に魔力を充填すればもう少しいけそうだ。
俺は魔力付与でセラとルリカの武器に魔力を付与すると、マナポーションを飲んで準備を始める。
俺の主武器はミスリルの剣だから、魔力を流すことでタイタンに攻撃は通る。
ただ今まで近くでタイタンの様子を見ていた人間としては、それでもまだ火力不足のような気がする。
ガイツもそれが分かっているが、もしかしたらこの状況をどうにか出来る何かを持っていると期待しているのかもしれない。
逆に言うと、ガイツの体力が限界に近いのかもしれない。
「サイフォン、セラ。時間を稼いでくれ。少し集中して武器を創る」
俺は二人に少しの間戦線を離脱することを伝え、武器を複製するために集中した。
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