第497話 衝突?
「おかえり、遅かったわね。って、どうしたの三人とも」
俺が家に帰って来ると、ルリカが出迎えてくれたけど、俺たちの顔を見るなり怪訝そうな表情を浮かべた。
「まあ、色々あったんだよ」
と言うサイフォンに、ジンは苦笑している。
「けどヒカリちゃんは元気よね?」
ルリカの言う通り、ヒカリは上機嫌だ。
「うん、体を動かしてリフレッシュしてきた」
ヒカリはそう言うと、エルザたちに今日の夕ご飯が何かを聞いていた。
「嬢ちゃんは底が見えねえな」
サイフォンはそれを見て遠い目をした。
「で、何があったの?」
俺たちが食堂で飲み物をもらうと、対面に座ったルリカが聞いてきた。
「うん、黙らせてきた」
俺たちが口を開く前に、ヒカリがずばりと言う。
言ったはいいけど、それを聞いたルリカたちは困惑している。
あの一言で理解するのは無理だろうし仕方ない。
俺は嬉しそうに飲み物を飲んでいるヒカリに代わり、最初から説明することにした。
今日俺たちは、四人で守護の剣のクランの建物にお邪魔していた。
三日後に予定している五〇階の攻略に関する最終確認を行うためだ。
作戦会議は誰が参加することから始まり、用意する消耗品や、戦い方について色々相談した。
「階の携行からして、巨人系の魔物ではあると思うが、既存の上位種が出るか、それとも新しいボスが出るかが問題だな」
実際四〇階はギガンテスが出て来たから、新しい魔物が出る可能性は捨てきれない。
「けど巨人の魔物の記録はほぼないんですよね」
ジンの言葉に、ジェイクとアッシュ、サイフォンはため息を吐いていた。
そもそも巨人系の魔物って、外では滅多に遭遇しない魔物だからね。
何百年も昔は時々目撃されたことがあったという話だったけど、それも本当かどうかは分かっていない。
一応冒険者ギルドが管理している魔物図鑑に掲載されているのはいるが、マジョリカの下層で遭遇している魔物は初出のものが多い。
そのお陰で素材が現在飛ぶように売れているわけだけど。
そういうこともあって、話し合いは長時間続くことになった。
時々脱線してジェイクとサイフォンが酒の話で盛り上がっていたのは……ああ、それは内緒だったな。
サイフォンは周囲を見回し、ユーノがいないのを確認すると安堵のため息を吐いていた。
話が逸れたな。
とにかくそんなこともあったが、時間はかかったが話し合いは滞りなく進みそろそろお開きとなった時に、守護の剣のボス攻略メンバーから外された者の数名が、嘆願してきたのだ。
自分を攻略メンバーに入れて欲しい、と。
もちろんジェイクとアッシュは断ったし、むしろ怒っていた。
その時古参メンバーのギャバンたちもいたが、その様子を冷ややかな目で見ていた。
まあ、守護の剣の中では決定事項だったし、最後俺たちに譲ってくれと頼んできたほどだから仕方ない。
だってそれは俺たちとジェイクとの取り決めをある意味壊す行為だったからだ。
ただ必死な理由は分からなくもない。
昨日見たボス部屋の扉からして、次の階が最下層である可能性が高くなったということだった。
だからこそ、その席を欲する者が出て来たに違いない。
あとは大きなクランを選んで入ったということは、最前線で戦い名声を得ようという野心を持っている者もいただろうしな。
たぶんサイフォンたちがいなかったら、俺は普通にその席を譲っていたかもしれないな。
「それで結局どうなったの?」
「うん、成敗した」
「まあ、ヒカリが怒って……」
「実力が無いから仕方ないって言った」
「それで相手も顔を真っ赤になって、模擬戦を挑んできたわけなんだけどさ……」
「あー、それで手加減しないでやったんだ」
それを聞いたルリカは察したようだ。
ヒカリは対人戦は俺たちの中でも一、二を争うほど強いからな。
相手も最初は余裕があったみたいだ。
ヒカリは魔物が巨人だと、なかなか活躍しているように見えなかったというのもあるかもしれない。
巨人相手にヒカリのメイン武器である短剣は相性が悪いからな。
ただ実際派手さはないけど、ヒカリは急所を的確について単身で倒したこともあったし、守護の剣の人たちが戦い易そうに麻痺付与したり、補助に回ったりしていた。
ギャバンなどはその動きをしっかり把握していたけど、嘆願してきた者たちはそれに気付くほどの余裕がなかったみたいだ。
「結果。圧倒的な力量差を示して倒したんだけど……」
そこまではいい。
けどヒカリはかなり機嫌が悪かったようで、模擬戦で発散していた。
ヒカリが機嫌が悪かったのは長い話し合いで飽きがきていた時に、やっと終わると思った時に乱入されたからだろうな。あとお腹も空いていたというのもあったと思う。
「ジェイクたちも怒っていたから、最後はボロボロになって泣きついてきても、ヒカリが気が済むまで止めることしなかったんだよ」
「遅かった理由はそれなのね」
ルリカは呆れていたけど、ヒカリに「良くやったわね」と褒めていた。
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