第496話 マジョリカダンジョン 49F

 出た魔物はギガンテス、トロール、サイクロプスと三種の魔物だった。

 その魔物たちは仲違いすることなく協力し合って俺たちに襲い掛かってきた。

 即席パーティーではあるが、基本の連携は最低限出来ているし、戦い方は守護の剣は守護の剣で、俺たちは俺たちでチームを組んで戦っているから、それ程の戸惑いなく戦えている。

 下手にメンバーを混ぜた方が大変だということは、前の四八階で試して上手くいかなかったから止めた。

 それでも少しだけ連携の練習をしたのは、何があるか分からないからだ。

 特に次の階はボス部屋だからね。


「魔物の圧が強いですね。やはり守備主体で高火力者を厳選して戦う方法が安定するんですかね?」

「そこは難しいところだな。結局魔物を倒して数を減らさないといけないからな。倒せる奴を増やした方がいいかもしれないんだよな」

「通常の階層ならそれでいいんだろうな。ただボス部屋は人数制限があるし、長期戦を見据える必要もあるかもしれない」


 アッシュ、サイフォン、ジェイクが仲良く話している。

 この会話は次のボス部屋で誰が参加をするかを決めるための話し合いでもあるのかもしれない。

 一応俺たちのパーティーは全員参加ということになっているが、やはりボス部屋最初の突破者という肩書は、クランのメンバーだけでなく、個人としての評価も高くなると思う。

 それに次は五〇階。そろそろ終わりが見えている頃だ。

 ダンジョン攻略者ともなれば、さらに箔が付くしな。

 だからジェイクとアッシュの二人は、誰を連れて行くかを今から考える必要があるのかもしれない。

 結局何のボスが出るか分からないから、バランス重視で組むことになるかもしれないけど。

 ただ俺たちのパーティーがバランスが良いから、守護の剣の方は尖がっていても大丈夫かもしれない、とはサイフォンが言っていた。


「それでは休憩はここまでで、そろそろ出発するか?」


 ジェイクの言葉に、休憩していた冒険者たちが立ち上がる。

 今回の先頭を歩くのは俺たちで、最初の頃は守護の剣と交代で担当していたが、俺たちの方が多くなっている。

 それはMAPを俺が使えることを知っているサイフォンが、色々と理由をつけて根回しした結果だ。


「ある程度魔物との戦いを経験しつつ、出来るだけ少ない戦闘回数で先に進みたいからな」


 サイフォンのその言葉に、ルート選択は苦労した。

 全く魔物と戦わないと不審に思われるし、やはり魔物の素材はある程度確保したいと思うのは冒険者の性だ。

 特にサイクロプスはこの階で初出だから、素材も高く売れる。

 最終的に使い道がないと分かると安くはなるが、最初は新素材ということで買う人がそれなりにいる。

 特に錬金術ギルドは嬉々として実験を繰り返すし、国によっては独自に研究するところもある。

 ただその研究に特に力を入れていたボースハイル帝国には今やその余裕はないし、王国は実質崩壊しているようなものだから、錬金術ギルドと魔導国家がどれだけ買い取ってくれるかだな。


「あとは守護の剣の奴らの戦いぶりも見たいしな。実はジェイクから誰がいいか見てくれと頼まれているんだ。ジェイクとアッシュも無理だと思ったら素直に言ってくれって言われたよ。もし駄目ならボス戦はメンバーに任せて辞退するってさ」


 リーダーが身を引くとかなかなか出来ることではないと思うが、それでクランメンバーは納得するのだろうか?

 その辺りはクランがどういう方針か分からないし、アッシュから事務仕事が大変で押し付けられたようなことを昔聞いたような気がするし、隊長副隊長が不参加もありえるのか?

 ただサイフォンとしては、その戦いぶりを見て二人は必要だと思っていたようだ。

 こうして色々試しながら攻略を進めていたが、五〇階に到着したのは四八階よりも早かった。

 階段の位置が良かったのが一番大きかったと思う。

 そして五〇階のボス部屋を確認したが、扉が今までと違って精巧な装飾が施されたものになっていた。


「これはもしかしたら……」


 ジェイクの言葉に、その扉を見た人たちは皆息を呑んだ。


「このことはギルドに報告しよう。それからボス部屋に誰が参加するかの話し合いも必要になるな。ソラ君、サイフォン。すまないが一度クランの方に顔を出してもらってもいいか?」


 断る理由がないので、明日一日は休みを入れて、二日後に守護の剣のクランに行くことになった。

 話し合いだけだから、皆が行く必要がないということだったから、行くのは俺とサイフォン……あとはヒカリとジンがついて行くと言ってきた。

 ジンは色々とサイフィンをサポートしていたようだから分かるが、ヒカリも行くと言ってきたのには驚いた。


「つまらないかもしれないぞ?」

「ん、大丈夫」


 何が大丈夫か分からないが、ジェイクに聞いたら構わないということだから一緒に行くことになった。

 その後五〇階に到着してボス部屋の扉の件を冒険者ギルドに報告したら、最後の階の可能性が高いことを教えてもらった。

 何でも他のダンジョンでも、最下層の階は似たような扉になっているとのことだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る