第495話 マジョリカダンジョン 48F
四六階で互いの力量を確認した三日後。四八階に挑むようになった。
その三日の間に各メンバーの戦い方だったり使用武器などを確認して、ダンジョンをどう攻略するかの話し合いも行われた。
俺の立位置としては荷物持ち兼盾を使っての後衛陣の護衛といったところか。
あまり戦力として期待されていない感じだ。
空間魔法の収納魔法については、高性能のマジック袋を所持しているということで伝えてある。
それとサイフォンと相談した結果。MAPに関しては秘密にすることにした。
知られると面倒だからということだったため、先頭はメンバーを交代して歩くことになるから、俺たちの仲間が先頭を歩くことになった時に、修正していこうということになった。
有用なスキルを持っていると、色々とトラブルになったりするからということだった。
確かにダンジョンを簡単に進めるスキルがあったら、それを考えている者たちから勧誘されることもあるし、嫉妬の対象として見られるかもしれないからな。
だから俺も実際戦う場面になったら使うスキルは気を付ける。
どうしようもない状況になったら使う覚悟はしている、というかそうならないように立ち回ることが大事だ。
やはり人死には嫌だからね。
四八階に出現した魔物はトロール。でっぷりしていて動きは遅いが、そのパワーは侮れない。
守護の剣の盾士の中には、受け止めて吹き飛ばされている者もいた。
その点ガイツは盾の使い方が上手い。
無理に受けきらないで衝撃を逃していて、それを利用してトロールの体勢も崩している。
だからサイフォンとジンは攻撃がしやすく、他の人たちよりも戦闘時間が短く、倒した数も多い。
ただそれ以上に目立ったのはやはりセラだ。
分厚い脂肪をものともせず斧を振り回せば、死体の山が築かれていく。
それにはジェイクたちも唖然として見ていた。
たぶん四六階では自分たちでも慣れた魔物を倒すから普通に感じていたが、初見で自分たちの手古摺っている魔物をああも簡単に倒されたから驚いたのだろう。
ただセラのその働きも、決して単独のせいかでないのは俺は知っている。
主にルリカがサポートしてくれているから、セラも自由に動けるのだろう。
ルリカもミスリルの剣に魔力を籠めて斬ることが出来るから、やろうと思えばもっと活躍することが出来ると思うしね。
それをやらないのは、戦闘効率を考えてのことなんだろう。
あとはもう少し慣れたら自分でも倒していこうと思っているのかもしれない。
「ソラたちが少人数でここまでこれた理由が分かった気がするな」
ジェイクをそれを見て、そんなことを言っていた。
最後に一番衝撃だったのは、たぶんクリスの使う魔法だろう。
今は精霊魔法を使っていないが、通常の魔法でも元々魔法力が高いから、同じ魔法を使っても威力が段違いだ。
これはトロールに何の魔法が有効かの検証をしている時に、六人いる魔法使いが順番に魔法で攻撃している時に分かったことだ。
神聖魔法の使い手は俺とミアを含め三人。守護の剣に一人だけというのは意外だと思ったけど、先の戦いで一人亡くなったからのようだ。
そもそも神聖魔法の使い手は少ない。
安全かつ安定を求めるなら教会に所属すれば食べるに困らない……はずだった。
ただ今回の魔王討伐では、教皇の失態によってかなりの神聖魔法の使い手が派遣されて、帰らぬ人になったということだから、時代によりけりかもしれない。
その多くが『聖王国の神聖魔法の使い手』となっているから、もしかしたら聖王国から出奔する人がこれから多く出るか、自分の身を守るには自分で力をつけるしかないと考える者も出てくるかもしれない。
もしくは教皇が辞職して新教皇が誕生するかだ。
「それとソラ君。その料理は……どれだけ高いマジック袋を持っていたんだい……」
と四八階に下りてから一五日経った時にアッシュに言われた。
アッシュたちが使っていたマジック袋は、保存は利くけど、保温はここまで長く続かないみたいだしね。
だいたいいつもならこのぐらい日数が経つと、途中から保存食になるとアッシュたちは言っていた。
一応料理もするけど簡単なスープぐらいみたいだ。
調理用の魔道具はあるけど、下の階層まで来る実力者の中に、料理が出来る奴がいないというのがその理由みたいだ。
「これからは料理の訓練も必要なのかもな」
ジェイクが本気がどうか分からないことを呟いていたが、周りで聞いていた人たちの多くは顔を引き攣らせていた。
途中から物欲しそうな視線を送ってきたから、そこはお金を支払ってもらった。
別に必要ないかと思ったけど、消耗品や食料品はそれぞれが用意するという取り決めをしたから仕方ない。
そこには人数差の問題もあったわけだけど。
結局四八階を通過するのに二〇日かかった。まだ消耗品と食材の余裕はあるけどどうするかを聞いたが、一度戻ることになった。
ジェイクたちも消耗品はあまり使っていないから余裕があるみたいだったけど、緊張しながらのダンジョン探索で精神的に疲れているみたいだった。
四七階で全滅の危機に瀕したのだから、これは仕方ないかな?
次回の探索予定を話し合い、俺たちは一度家に戻ることになった。
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