第494話 結成?
守護の剣の最前線パーティーから死傷が出たというニュースは、瞬く間にマジョリカの町に広がっていった。
連合クランが結成される前にも、大手クランの被害が報じられていただけに、やはり衝撃は大きかったようだ。
どれぐらい迅速に広がったというと、冒険者ギルドで素材や魔石を売って、家に帰るとすでにエルザたちが知っていた。
家に入るなりエルザとアルトに抱き着かれて困惑していると、
「二人ともかなり心配していたよ。ダンジョンでたくさんの人が死んだって話を聞いてね」
そういえばこの子たちの親も……。
かなり心配させてしまったのかもしれない。
「そりゃ心配するんじゃない? 壊滅……はしてないのか。被害に遭った奴らは大人数のパーティーだんだろう? たくさんいても被害が出るんだから、あんたら少人数で行ってるけど大丈夫かって不安に思うのは普通だろう」
シズネの言う通りだ。
「二人とも泣きつかれて寝ちゃったみたいね」
ミアが戻ってきて二人の様子を教えてくれた。
「ま、僕が手伝ってやれればいいんだけどね。残念ながら今から追い付くのはめ……無理じゃないけど、時間がかかるだろうからね」
今明らかに面倒とか言おうとしたよね?
ジト目で見ていたら吹けもしない口笛を吹く仕草をしていた。
「……明日守護の剣のクラン本部に行ってくるか」
これは見張りをしている間、サイフォンとも話していたことだ。
このまま俺たちだけで進んでも、五〇階には到達出来ると思う。
問題はボス部屋と、あとはエルザとアルトの心の負担を減らすことか?
ダンジョン攻略を止めれば全ての問題は解決するが、エリアナから頼まれているからそういうわけにはいかない。
「ただ相手が同意してくれるかだよな」
俺の言葉に、サイフォンが苦笑していた。
「……ふむ。我々としては問題ないが、いいのか?」
ジェイクが何を言っているのか分からず首を傾げていると、アッシュが半ば呆れながら教えてくれた。
「隊長が言いたいのは、ソラ君たちは今まであの人数で四八階を踏破しただろう? 自分たちだけでも先に進めると思うのに、僕たちと一緒でいいかって聞いているんだ」
俺たちとしては富や名声が欲しいわけでもないし、安全が確保出来れば一番と考えている。
それに今までだと守護の剣に声を掛けても色よい返事はもらえなかっただろうけど、言い方が悪いが、今は弱っている状態だ。付け入る隙があるんじゃないかと、一緒にダンジョン攻略をしないかと誘いに来たんだ。
ちなみにこの場にいるのは守護の剣はジェイクとアッシュの二人で、俺たちの方は俺とサイフォンの二人が向き合って話合っている。
他の面々も一応ついてきているが、模擬戦をするといって鍛練所に行った。
「サイフォンだったか? 君はどうなんだ? 君は生粋の冒険者だ。少人数でダンジョン攻略となれば名声は得られるし、それこそ貴族から個人で雇いたいと誘われることだってあると思うぞ?」
「名声はあっても邪魔になるかもしれないし、別に貴族との繋がりもな。その気になれば冒険者ランクを上げればいいわけだし。それに仲間が不自由なく生活出来る金さえ入れば特に困らないからな」
大きなクランと違い、俺たちは少人数でダンジョンに潜っているから取り分が多いから懐に……俺は余裕がある。
サイフォンは今は酒もそれほど飲んでないから貯金が出来るってユーノさんが喜んでいたな。
「それに死んだら元も子もないからな。俺が反対する理由はないな」
その言葉にジェイクもアッシュも、確かにと頷いていた。
「それじゃ一度ダンジョンに行ってみて、互いに戦い方を確認しておこうか? 連携も必要になるかもだし、相手の実力が分からないと背中を預けることは出来ないだろうからな」
たぶんジェイクは俺たちの実力に関しては疑っていない。
それは目を見ていれば分かる。
同行するクランの面々に、実力を指し示してくれと言っているのだろう。
ジェイクたち実力者は俺たちの申し出に反対はしないが、他の者がどう思うかは分からない。
助けられたという事実はあるが、それはあくまで罠を解除することが出来たから、助かったと思っている者も少なからずいるだろうとアッシュは言った。
実際罠による魔物の無限湧きさえなければ、守護の剣がここまで被害を負うことはなかっただろうしな。
「分かったよ。それで行く階は何処にする?」
「駄目だった場合にすぐ戻れる四六階でどうだろうか?」
ジェイクの言葉に俺たちは頷いた。
俺としては四八階でもいいけど、戻ることになった場合は帰還石を使う必要が出てくるからな。
「あとはそこで、我々の実力も確認してもらいたい。ボス部屋に入る場合何人か切らなくてはいけなくなるからな。バランスを考えて、誰が必要かも考えておいて欲しい」
ジェイクの言い方だと、ボス部屋に挑戦する場合は守護の剣の方で人数調整を考えているようだ。
俺たちは約束の日時を決めて、一度四六階で互いの力量を確認することにした。
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