第498話 マジョリカダンジョン 50F・1
冒険者ギルドで守護の剣と合流し、ダンジョン五〇階へと移動した。
五〇階に到達していたことは既に知れ渡っているし、三〇人のメンバーが合流してダンジョンに向かえば、いよいよボス部屋に挑戦かとギルド内は騒がしくなっていた。
ボス部屋の扉の前で、最終確認と、再度ジェイクから謝罪された。
規模が大きくなってくると、色々な人が集まっているから仕方ないというのが俺の個人的な考えだ。
一応あの異を唱えてきた守護の剣のメンバーは、この攻略が無事終了したらまた話し合いをするそうだ。
選択は二つで、守護の剣にそのまま残る(降格処分あり?)かマジョリカの町を出るか。守護の剣を止めて他のクランに移籍するとなると、移籍理由も聞かれることになるし、その理由が契約に反することをしたとなったら、何処のクランも受け入れてはくれないだろう。
冒険者は力が全ての世界だが、それはあくまで冒険者個人として動いている場合だ。組織に所属すればそれが通用しなくなる場合がある。
「それでは行こうか?」
俺たちはジェイクの言葉に頷くと、扉を開けて中に入っていった。
何度経験しても、ボス部屋に入る時は緊張する。
それは一〇階や二〇階みたいに、既にボスの正体が分かっている階でも緊張したほどだから、正体不明のボスに挑むこの階は特に緊張する。
五〇階の室内は、廃墟のような空間になっていた。
壊れた建物が左右に広がり、地面に敷かれた石畳も破損が見られる。
ボス他魔物の姿が見えないのは、時間経過とともに湧くからだろう。
「狭いですね」
アッシュの言う通り、ボス部屋の空間は他のボスの階と違い狭い。
サッカー競技場よりも少し広い程度か?
「今のうちに隊列を作る。守備隊前に!」
ジェイクの言葉に、守護の剣は隊列を作っていく。
守護の剣は一九人参加しているが、盾士七人、物理近接六人で、後衛は魔法使い四人、神聖魔法使い一人、弓使いが一人とバランスが取れている。
ただ盾士の中には武器を使える者もいるから、状況次第で攻撃に回るようだ。
純粋な盾士というのは少なく、守護の剣も下層での戦闘が激化するに従い徐々に揃えていったみたいだ。
ガイツと比べると酷だが、盾士としての腕は悪くないとガイツは言っていた。
守護の剣の準備を見て、俺たちもガイツを先頭に陣形を作る。その際ゴーレムを二体先に呼び出しておく。
犬型は遊撃、人型は前衛として魔法の盾も装備させてある。
代わりに俺が後ろに下がり、クリスたち後衛を守ることになるが、場合によっては俺も前に参戦することになる。
準備が整い今か今かのボスの出現を待っていれば魔力察知が反応を捉えた。
それはMAPのだいたい中央に出現した。
「デカいな」
誰の言葉かは分からないが、確かに大きい。
身の丈は一〇メートルあるかないかぐらい?
身に着けているものは胸当てで、手に持つのは棍棒だ。
ジェイクが魔道具を掲げて、魔物を視ている。
あれはこのダンジョン限定で使える鑑定の魔道具らしい。人には使えず、魔物とダンジョン産アイテムを鑑定することが出来るらしい。
貴重な物らしく、守護の剣ともう一つのクランが所持しているという話だ。
「名前はタイタン。魔法に高い耐性を持っているみたいだ……」
ジェイクのその言葉に、魔法使いたちがジェイクを見た。
ボスが出現したら、魔法使いによる一斉放射を予定していたからだ。
威力重視、素材のことを一切考えない攻撃だ。
初めてのボス戦は貴重な素材を確保するよりも、倒すことを優先するためだ。
死んだらそこでお終い。ゲームと違ってコンティニューなんて存在しないのだから、それはある意味普通の考えだ。
そして魔法に高い耐性があろうとも、それでもどれぐらい強いかは分からない。
だからジェイクは予定通り指示を出し、魔法使いたちの魔法が一斉に放たれた。
火魔法と風魔法による高火力魔法だ。
元々強い火魔法に、風魔法が加わり火力がさらに上がる。
なかでもクリスは精霊の力を借りてさらに威力が上がっているから、かなりの熱量になっているはずだ。
威力が強い分だけ、仲間が近くにいると使い難いといった欠点があるが、今のこの距離なら問題ないだろう。
魔法は激しい爆発を生み、爆炎を撒き散らす。
俺は気配察知で反応をうかがい、前衛の盾士たちも警戒は怠らない。
やがて爆炎が消えて視界が良好になり、見えてきたのは何事もなく立っているタイタンだ。
ジェイクはそれを見て、クランの一人の魔法使いに魔法を撃つように指示を再び出した。
魔法が放たれ……タイタンに当たる瞬間。見えない壁のようなものに遮られて防がれた。
高い耐性というか、俺のシールドに似たようなもので防がれた気がする。
「オルガ!」
それを見たサイフォンが叫ぶと、既に弓矢を構えていたオルガが矢を放った。
矢は勢い良く飛んでいきタイタンまで届いたが、タイタンは回避行動一つ取らずその矢を地肌で受けたが傷一つ付いていない。
「躱せなかったのか、躱す必要がなかったのか……。判断に困る反応だな」
サイフォンの言葉に、誰かの息を呑む音が聞こえた。
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