第492話 マジョリカダンジョン 47F・2
走り出して最初に息切れしたのはユーノだった。
その時点で俺たちは結局二つのパーティーに分かれることになった。
サイフォンから追跡用の魔道具を受け取り、俺は犬型ゴーレムを呼び出すとクリスとミアに乗ってもらい、走る速度上げた。
守護の剣は善戦しているらしく、ゆっくりだが確実に魔物の数を減らしていっている。
このままなら大丈夫か? と思ったらMAP上に新たな魔物の反応が生まれた。
たまたま湧いたのか、それとも罠の一種かはここからでは不明だ。
俺は走りながら皆に状況を説明していたが、雲行きが怪しくなってきた。
実際守護の剣のメンバーは、それを見て動きを変えたようだ。
固まって壁の方に移動している。
たぶん攻撃をされる範囲を絞って、被害を少なくしようと考えたのかもしれない。
だけどそれは自ら逃げ道を塞ぐという諸刃の刃だと思う。
むしろ帰還石を使っての脱出の方がいいと思うのに、何か出来ない事情があるのだろうか?
それとも以前レイラたちが巻き込まれた時みたい、帰還石が使用不可になっている?
色々な考えが浮かびながら、ただ走る事しか出来ないのをもどかしく思った。
走り出して二時間近くが経過した。
戦いはまだ続いてる。
ただ残念なことに、魔物だけでなく、守護の剣の人らしき反応も何人か消えていた。
そして魔物の方は減った分だけまた増えている。
これはもう偶然ではなく、何かしらの罠があると見た方がいい。
俺はグッと奥歯を噛みしめ、足に力を入れる。
あともう少し守護の剣の戦っている場所に到着出来る。
自分たちのことを考えるなら引き返すべきなのかもしれないが、俺が状況を説明しても誰一人引き返そうなんて言う人はいなかった。
「あの先が守護の剣が戦っている場所だ。入って左隅にいる。クリスは魔法の準備だけしておいてくれ」
俺はクリスに言いながら、自身も魔法の準備をする。
また人型ゴーレムの用意もする。
魔物はフロアの中心から守護の剣がいる方へと反応が集まっている。
魔物目掛けて魔法を放つと、俺の魔法ならいいけど、クリスの精霊魔法だと威力があり過ぎて守護の剣にも被害が出るかもだから魔法を撃つ場所は慎重に選ばなければならない。
そして俺たちが守護の剣の戦っている部屋に入ると、まず見えたのは数多くのギガンテスの背中だ。
それともう一つ。部屋の中央に位置する黒い球体。その球体の周りにはそれを守るように三体の盾を持ったギガンテスがいる。
「あれ見て!」
俺たちの見ている前から、黒い球体からギガンテスが一体現れた。
手に持つのは槍だ。
「あれから魔物が生まれているのか……」
「ソラ、どうするの?」
効くかどうかは分からないけど、一先ず魔法が効くかを試してみるか?
「クリス」
「うん、撃ちます!」
準備していた精霊魔法が、黒い球体目掛けて放たれた。
ギガンテスは守ろうと盾を構えたが、クリスの魔法を防ぐことが出来ずに消滅する。
それはちょうど黒い球体から生まれた槍装備のギガンテス諸共倒した。
「効いていない⁉」
けど黒い球体だけがその場に残り、今度は四体のギガンテスが黒い球体から出てきた。
「倒した分だけ復活するのか……」
しかも魔法で破壊出来ないということは物理攻撃? それとも罠の一種だから、この部屋の中に解除するためのものがある?
俺は魔力察知で調べると、怪しい反応があった。ちょうど魔物がいないスペースだ。
「罠ある!」
ヒカリがそれをいち早く見つけた。
「ヒカリ頼めるか?」
「うん、任せる」
ヒカリが反応のあった壁目掛けて駆け出した。
それを見たギガンテスが動きを見せる。
距離的にはヒカリの方が早いが、ギガンテスの手には弓矢が握られている。
おれは人型ゴーレムを呼び出し、ヒカリの援護に回す。犬型ゴーレムも同様にヒカリを守るために動き出す。
「させないさ」
また弓を引くギガンテス目掛けて、セラが魔法が付与された手斧を投擲する。
ルリカも近付きながら投擲していく。
俺は魔法で二人を援護しながらクリスとミアを守る。
クリスは黒い球体の周囲に風の層を作り、黒い球体から生み出されるギガンテスを、風の檻に封じ込めている。
強力な魔法だが、それを維持するためにクリスが動けないから、クリスから離れることが出来ない。
ミアも補助魔法を使いながら、クリスの護衛に回っている感じだ。
万が一の時はシールドの付与された魔道具を使って守ってくれるのだろう。
「ソラ、あれ!」
戦いの中、ミアがある一点を指差しながら声を上げた。
視線を向けると、あの黒い球体が消えて行っている。
ヒカリの方を見ると、こちらに戻ってくる姿が見えた。
どうやら罠の解除に成功したようだ。
「クリス。罠が解除された」
「なら倒してしまいますね」
クリスはそういうと詠唱を唱えた。
すると先ほどまで魔物を抑え込んでいた檻が、徐々に狭まっていく。
ギガンテスは抵抗を試みるが押し返すことが出来ず、やがて風の檻に押し潰されて消えてしまった。
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