第490話 マジョリカダンジョン 46F
「なんだ、帰ってきたのか」
ダンジョンから戻ってきたら、シズネは開口一番ぶっきらぼうにそう言うと、アルトと一緒に仕事があると言って奥に消えてしまった。
「ふふ、ソラお兄ちゃん。シズネお姉ちゃんはあんなこと言ってますけど、本当は皆さんのこと心配してたんですよ」
エルザはこっそり教えてくれて、二人のあとを追いかけた。
相変わらず素直じゃないな、と思いながら、俺たちは休むことにした。
それから次のダンジョン探索に行ったのは五日後だった。
「もう行くのか?」
とシズネは驚いていたが、十分休めたし、その間ギルドで情報収集もした。
現在ダンジョンは四十六階まで攻略済みで、守護の剣が四十七階を攻略中とのことだ。
例の連合クランだが、四十五階は守護の剣よりも早く攻略したようだが、四十六階で足踏みが続いているそうだ。
複数の大手クランが協力して一大勢力になったはずなのに、攻略が進まないのは連携が上手くとれないかららしい。
そのお陰で四十六階の攻略は一度失敗し、かなり険悪な仲になったとのことだ。
ギルドとしてもこのまま連合が解体されると思っていたらしいが、守護の剣に追い抜かれたことで再び結束したとのことだ。
その後すぐに攻略を再開しないで、何度か共同で戦い方の確認をしたり、剣を交えて親交を深めて再び四十六階に下りて行ったとのことだ。
俺は四十六階に下りてMAPを呼び出したが、連合クランらしき人たちの反応は少なくとも見えない。
俺は魔力を籠めてMAPの見える範囲を広げたが、ここまで来るとそれでも全体を見ることが出来ないようになっている。
「とりあえず前進して、階段が何処にあるかを探したいな」
「このダンジョンは時々変なところに階段があるからな」
奥の方にあると思って進んだら、実は入口近くにあるなんてことがあるからな。
そんなことは稀だが、ゼロじゃないんだよな。うん、近場に階段はないな。
「けどあれだな。階が広くなったからか、魔物との遭遇率が減ったのかな?」
「それは違うだろサイフォン。ソラが魔物のいない道を選んでくれているだけだろう?」
サイフォンとジンがこちらを見てくるから、答え合わせをする。
「実際のところ魔物の数は減っていると思う。あくまで階の広さに対してだけどね。ただMAPで見る限り、要所に魔物の集中しているみたいなんだ」
それに気付いたのは偶然だが、下層に行くほど、最短距離を通るには魔物を倒さないと進めないことが多くなってきたような気がする。
逆を言えば、遠回りすれば魔物と遭遇しないで次の階に進むことが出来るということだ。
ただどうもダンジョンはある場所に湧く固定湧きと、ランダムで色々な場所に湧く二種類があるため、やはり俺みたいなスキル持ちじゃないと難しいと思う。
ヒカリやルリカでも魔物の気配を察知して避けることは可能だけど、結局進むべき正解の道を引くのは難しいからな。
それを踏まえて話し合った結果。面倒な集団を避けて進むことにした。
もっとも魔物の集団でも、今の俺たちなら問題なく進めると思う。
それでも何かあるか分からないのがダンジョンだから、少し慎重に行くことにしたのだ。
「まあ、少なければこんなものか。ガイツ、どうだ敵の攻撃は?」
「問題ないな。ソラやゴーレムもいるし、サイフォンたちが素早く倒してくれるからな」
「そっか。それじゃ数が多くなったらどうだ?」
「人手が足りなくなるかもな。ただ突っ込んでくるだけなら楽だが、この辺りの魔物は俺たちと同じように連携して戦って来るからな」
ガイツの言う通りだ。
それ故連合クランは、前回の探索で失敗したのだろう。
そう考えると、四十五階ではフロストジャイアントと戦っていないか、こちらの条件の良い時に戦ったのかもしれないな。
そもそもあそこは本当に数が少なかったし。
「それじゃ一先ず休憩して食事にするか?」
俺の言葉に反対する者は誰一人いなかった。
アイテムボックスから出来合いのものを出して食べてもいいと思ったが、ミアたちが料理をするということで材料を渡した。
パンはさすがに焼けないから、それは買った物を用意する。
基本的なダンジョン料理は、肉とスープになるが、飽きないように色々と味付けを変えてくれている。
「あとは食事の差もあるな。ここに酒もあれば最高なんだけどよ」
つい口を滑らせたのか、サイフォンはユーノに怒られている。
「つ、杖で殴るのはやめてくれよ!」
と悲鳴を上げているが、誰も助ける者はいない。
「それは自業自得だよ」
ジンの言葉に、ガイツとオルガは料理を噛みしめながら頷いていた。
その後俺たちは無事四十七階への階段まで到着したが、その時には連合クランの反応はMAPから消えていた。
今回は無事攻略出来たようで、階段の方へと消えていくのをMAPで見た。
「それでどうする? このまま四十七階に進むか?」
帰還石には余裕があるから、このまま使って戻ることは可能だ。
「俺たちの方はこのまま進んでも大丈夫だな。ソラたちはどうだ?」
サイフォンの言葉に、俺たちは顔を合わせた。
「そのまま進もう。無理そうならその時に帰還石で一度戻ればいいし」
こうして俺たちは四十七階へと進んだ。
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