第488話 マジョリカダンジョン 45F・1
ダンジョンに下りて改めてMAPを使用する。
「どんな感じだ?」
サイフォンも俺が何をしているのかは分かっているから、すぐに聞いてきた。
「当分歩くだけで良さそうかな」
MAPで確認出来た反応は近くにはない。
少なくとも一日は接触することはないだろう。
これで雪の上を移動するのに専念出来る。
魔物の反応がないとはいえ、警戒を怠ることは出来ない。
ダンジョンが生み出す魔物は、突然湧いたりするからな。
この広いMAPの中ですぐ近くに湧くというのは滅多にないことだとは思うけど、それでもゼロではない。
ただ真横に湧くなんてことはさすがにないようだ。
「ソラのアイテムのお陰で温かいな」
「寒い中だと魔力の消費が速いかもだから、冷たくなるようなら遠慮なく言ってくれよな」
一応家で確かめた時は、八時間温かさを保つことが出来ていた。
俺たちは装備の具合を改めて確認すると、移動を開始した。
俺たちは一応アルテアダンジョンや、ルフレ竜王国に向かうための山で雪の上を歩く経験をしていたが、サイフォンたちはここまで積もった雪の上を歩いた経験はないということで最初苦労していた。
「雪が積もったことはあったが、そんな時は仕事にならねえから外には出なかったしな」
「そうね。一日中お酒を飲んでましたからね」
サイフォンの言葉に、ユーノが笑みを浮かべていた。
ま、まあ、目は笑っていなかったけど。
ジンたちは関わったら危険だと思っているのか、足元に注意しながら黙々と歩いている。
ただ一時間も歩けばコツを掴んだのか、最初の頃に比べてしっかりとした足取りで雪を踏み締めて歩いていた。
あと運が良かったのは、俺たちがダンジョンに来た日はちょうど吹雪が止んでいたことか。
「それじゃそろそろお昼だし、ご飯にするか」
今回は風よけのため壁を作るに留める。
アイテムボックスから切り株を出して、椅子の代わりにしてもらった。
「うー、温かさが身に染みる」
サイフォンの言葉に、皆頷く。
お昼は簡単にサンドイッチとスープで済ませ、少し休憩した後でサイフォンたちに魔力付与を使って再び歩き出した。
移動を再開した頃は天気が良かったが、夜に近付くにつれて徐々に崩れていった。
最初は風が強くなったかなと思う程度だったのが、空が雲に覆われ日が遮られると、雪が降り始めた。
一気に気温が下がって寒さが増したと思ったら、雪の降る量がさらに増して吹雪になった。
「これは辛いな」
さすがにこれ以上進むのは無理だと判断して、今日はここまでにすることにした。
俺は昼と同じように四方に壁を作ると、さらにカマクラを作製した。
四方に壁を作ったのは風除けというよりも防壁目的だ。
「これがソラが言ってたカマクラか?」
サイフォンたちは戸惑いながら中に入り、中の暖かさに驚いていた。
暖かいといっても、風を受けていないからでそこまではまだ差が分からないだろう。
俺は皆が座る場所に簀の子を敷くと、焚火の用意も始める。
「おいおい、火を使うと溶けたりしないのか」
心配されたがそれは大丈夫だ。
「魔力で固めてあるし、これは大丈夫だよ」
せっかく時間もあるし、料理でもするのもありか?
ミアたちに聞いたところ、やるということなので材料を渡す。
料理はミアたちに任せて、俺は他の準備を行う。
カマクラを囲んでいる壁に魔力を流して強化し、ゴーレムを呼び出して警護に当たらせる。
するとサイフォンたち男性陣も外に出てきて体を動かし始めた。
「まあ、吹雪の中でも動けるかの確認だな。あと中に居ても暇だしな」
確かに料理を手伝わなければ、やれることといえば装備の整備ぐらいか?
結局俺もサイフォンたちと一緒に体を動かすことになったが、やはり普段と比べて動きにキレがないというか……。極力動かないで戦う方法を考えないと駄目かもしれない。
理想は攻撃を受け止める側と、攻撃を専念する側に分かれて短期決戦だな。
そんなことを話しながら動きの確認をしていたら、ルリカが料理が完成したと呼びにやってきた。
いつの間にそんなに時間が経っていたいのか気付かなかった。
夢中になると時間が経つのって本当に早いな。
その後料理を食べて先程の吹雪の中での動いた感想を話したら、ヒカリが外に出ようとしたからそれは止めた。
外はもうすっかり闇に包まれているしな。
ただ真っ暗闇の中に飛ぶ雪は、ちょっと見ていて飽きなかった。
ここで灯りでもつければ風情のある景色を見れたかもしれないけど、さすがにそんなことをしたら魔物に発見されるリスクを負うことになりかねないからやらない。
ま、実際は周囲に魔物はいないわけだけど。
「それじゃ見張りは交代でやる感じか?」
「一応周囲は強化してあるけど、フロストジャイアントがどれぐらい強いか分からないから、襲撃されたらどれぐらい持つか分からないから見張りは必要だと思う」
近付かないで遠距離からの魔法攻撃を仕掛けてくるかもしれないしね。
もっともそんな心配を他所に、俺たちは何事もなく次の日の朝を迎えることが出来た。
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